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15.魔の目覚め/死の律動

三百二話 古き戦士達の墳墓探索開始

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302話 棺の棚ー木・石・金属の棺

茶色へ近付けばなだらかな地中への道があった、これが[古き戦士達の墳墓]の入口
か?ダンジョンと言うより地下への入口だが、こんな場所に施設などは造らないだ
ろうから人造の物ではなさそうだ、3M程の坂を下りれば洞窟の入り口・・・と思われ
るものが眼前にある、自然型のダンジョンらしく地形と一体化しているため一目で
はダンジョンと気付きにくい、環境同化型は気付かずに入ってしまう事も多々ある
ようだからな、中に入って周囲へと意識を澄ます・・・多分ダンジョン内だ、空気や
周囲の変化と言える差が殆ど無いせいで、集中して変化を気にしなければ入っても
ただの洞窟と変わらない・・・実際には外より僅かだが空気が乾燥している気がするし
どことなく空気も変わっているような気がしないでもない、だが1番大きいのは死に
関する気配が大きくなったこと・・・いや空気に含まれるようになった事だと思われる
ただ普通だと判らない感覚だろうから他者の判断基準には出来そうに無い、それに
ダンジョン内で発生した魔物は消えるだけだが、外から来た存在は死体が残るから
死の気配が無いダンジョンなんてそうそう無い・・・生成されたばかりとか、あまりに
も入り辛いとか見つけにくいとか、特殊な環境や状況にある場所で無ければそんな
条件を満たす事は無いだろう、ここは調査のために人が何度か来ていたからその時
に死者が出ていれば死の気配もある、そもそもダンジョンじゃない洞窟があったと
しても内に入る存在が居なければ死の気配はそもそもしないことになるからな・・・
結局空気や気配で判断するのは難しいのでは?うん、大体の指標程度にしておこう
一定の場所で急に変化すれば判り易いが、今回の様に外と内の差が少ない場合判別
が難しい・・・洞窟を少し進めば手入れされているような場所に出た、とは言っても
地面や壁が均されている地下墓地のようなものであり綺麗な訳では無い、正面には
横幅が3M程のある一本の通路が伸びており、その両側には等間隔に空間がある・・・
覗いてみればそこから細めの通路になっており、その両壁にはそこそこの空間があ
る仕切りが出来ている、そしてその中に棺なのか長方形の木箱や石が乗せられてい
たり、金属だろうか?片手で掴めるほどの鈍い鉄色の小さい箱が置かれている場所
がまばらにある、同種はどれも同じように・・・どころか同じ物に見える、くすみや
傷に欠けている場所等がどれも同じ位置にある・・・まるで同一の物の完全な複製品
のようだ、これもダンジョンの一部なのだろうか?だから完全に同じ物が複数存在
しているのだろう、他のダンジョンでも木やら地形やらが同じな事もあったし・・・
ダンジョンとはそう言う物なんだろう、それにしても・・・魔物の気配はそれなりに
感じているものの何処にも見えない、霊体だから見えない?可能性はあるが私は既
に霊体が見えている以上霊の魔物が見えないとは考えにくいが・・・ふむ?1種に付き
1種しかないと言う訳では無く別のパターンの物もあるのか、大きく欠けているも
ののくすみが無い石の棺があった、欠けている場所も元からそんな形状だったかの
様に滑らかで傷んでいる様子は無い、全体的に綺麗な物だし丸で最近になって新し
く増えたような感じだ・・・ダンジョン内でそんな変動があるかは判らない、それと
も元からこんな状態なのだろうか?ダンジョンそのものは時間による変化はしない
だからダンジョンの一部である棺も時間で変化しない筈だ、ただ動かされたのか床
に散らばっていた砂が棺の跡で線を作っている、入って来た人が動かしたのだろう
押してみると見た目通りの重さがあるものの奥へとずれた、不動ではないようだ
「ギェエェェ!」
少し動かして止めた所で叫び声と共に棺の蓋がずれて開き、肉塊の様な手・・・いや
手の様な形をした肉塊か?が中から生えてきた、どうやらこれは魔物だったようだ
鑑定で見てみるも石棺としか表示されないし、肉塊腕を見ても何も表示されないと
なると、これはただの石棺の中に棲み着いているかそこで発生した魔物と言う訳だ
そしてこの腕も魔物として判定されてないとなると・・・これはダンジョンのギミック
なのか?最初はこっちに伸ばされていた腕が下がり床に着く、それから動く様子が
無く手を近付けても機能を停止したかの様に微動だにしない、魔物として感知も出
来ないから侵入者を驚かせるための装置なのだろう・・・何故そんな機能があるのか
どうして作られた等は不明だが、ダンジョンに意味不明の機能があったりするのは
知られている事、いや意味不明だと思っているだけで何かしらの意味はあるのかも
しれないが・・・それとも魔物のダミーとして用意されているのだろうか?もしかした
らこれに似たような魔物が存在するとか?なんだったかそんなアンデッド種の情報
があったな、無機物と死体が混ざっているとされるアンデッド種・・・ウァ、ウィ?
ウィ、そうだウィレガ系だった、それにしてもさっきからずっと2人が静かだな?
あの2人ならコレに何かしらの反応なり考察なりを始めると思っていたんだが・・・
居ない?横を見ても後ろを見ても、それどころか近くに気配を感じ無くなっている
中央の通路の時は居たし棚や棺達を確認している時にも居た、となるとこの石棺の
ギミックが起動してから離れたな、どっちかが飛ばされた?飛ばされるなら私か?
だが魂しかない彼らが対象になる可能性もある、私が結界か何かに隔離されたは?
いや・・・しかし空気自体は変わっていない、周囲の様子は・・・どこも似たような景色
ばかりで同じかどうかの判断がつかないな、だがここなら大通りの方に戻れば判る
大通りから来た方向を覗けば入って来た入口があった、多分形状的にも入口の筈だ
・・・他にも同じ場所があったらそうとも言えないが、個々の広さはそう広いもので
無いと思っていたが、もしかしたら想定の3倍近くは広いのかもしれない、流石に
大通りの道を一直線に進んで行けばいいなんて、優しい場所では無かったようだ
逆側を見ると所々に骨片が散らばっていた、入ってきた時には無かったのに・・・
そうなるとやはり転移で飛ばされたのか?それにあの2人と合流出来ないと言う事
はそれなりの距離があるか、ダンジョンの壁を透過してすり抜けられないないかの
どちらかだ、階層の違いと言う可能性もあるか・・・外から風が入ってこないから風
による判断が出来ないのはダンジョンらしいと言うべきか?
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