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15.魔の目覚め/死の律動

三百五話 骨と骨そして鎧の骨

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305話 また骨ですか、多いですね骨

死体を覆う様に朽ち始めている骨の残骸は広がりその周りや下に既に朽ちている骨
が床そのものかの如く一面を覆っている、そして上からドクンドクンと鼓動の様な
音が聞こえ始めた・・・ダンジョンが侵入者である私に反応しているのだろうか?今
までの罠やギミックは設置されていた物、今回のこれもそのギミックの1つっぽい
が何を意味しているのだろうか、ダンジョン主の部屋だと思わしきこの場所で反応
するギミックとなるとボスの召喚か、ここに閉じ込める罠のどっちかだと思われる
振り向けば来た通路が僅かに擦れるような音のみ立てて静かに壁に埋まっていくの
が見える、どうやら閉じ込める方だったようだ、今ならまだ十分隙間もあるから間
に合うかもしれないが、この部屋を出れたとしても壁に潰される可能性がある以上
ここに残った方が生存率は高いと判断し跳び込むように構えていた脚を止め前のめ
りになっていた体を後ろに倒し跳ぶのを抑える、考えるより早くに体が次に行おう
とした動きの準備をしていた・・・これが本能的な反射行動と言う奴か、多分今までの
経験によって反応したんだろうけども、戻った所でダンジョンから出れはしないし
閉ざされた後どれ位次が待たされるかも判らない、他に誰か来ないと開かなくなる
可能性もある以上、脱出するのならここを乗り越えるのが1番確実性が高いと判断
する、反射行動と言うのも助かる時は助かるが・・・こういう時は困ったものだな?
しかし今は鼓動音は変わらずに等間隔で響いてるのが気になる、既に通路は閉ざさ
れ帰り道は無いし他にも道は既に無さそうだが、いやそもそも警告音なんぞ鳴らす
必要は無いから別に通路のとは関係無かったのか?静かな部屋に鳴り止まないまま
あちこち眺めていると、何時の間にか床を照らしている光が少しづつ広がり始めて
いたようで、光の円に照らされている範囲が広がっていた、広間の半分程が照らさ
れた所で拡大は止まり、次に通路が壁に沈み込む様に格納され始めた、降りるしか
なくなり広間へと飛び降りる、幾つかに分割され手摺までも呑み込まれ全て消えて
いく足場を見送ると、床から這いあがる様に肉の様な物が膨れ上がり始め壁一面を
程無くして覆い尽くした、巨大な肉塊に覆われた・・・いや、部屋そのものが内臓に
呑み込まれたかの様な有様だ、生物的であり醜悪と言える球体の壁に包まれたもの
の、光を降らせる部分は変わらずのようだ・・・とは言え穴では無く何かの照射装置
じみた物の様に見える、あそこからの脱出も確実性が低いか、何とも厄介な機構を
しているものだ、しかし閉じ込めるだけ閉じ込めるだけ等と言う機能しか無い訳が
無い、冒険者らしき武装している死体は何かに貫かれて絶命している、それ以外の
民間人か商人らしき武装していない死体は朽ち始めているものの傷が無い・・・餓死
したのか?流石に時間も経っているようで死因を判別出来ないな、外傷も特に無け
れば毒らしき物の影響を見て取れない、殆どの武器は砕かれ盾は全て貫かれ穴が開
き鎧も貫かれて血で染まっている・・・随分鋭い刺突系によるものだ、しかし槍なり
そう言った刺突系の罠らしきものがある様子は無いし、何より装備品や体に幾つか
見える痕跡からすると何かと交戦して出来た穴ではないかと思う、穴の円形にほぼ
歪みがなくどれも同じ方向から貫かれているからな・・・罠にしてはどの死体も綺麗
過ぎるから罠の可能性は低い、これはやはりここでダンジョン主と戦闘した跡か?
だとしたらもう出て来てもおかしく無いハズなんだが・・・あまりにもボスの出現が
遅すぎる、侵入者が時間経過で弱るのでも待っているのか?確かに空気も余り良く
ないこんな場所に長時間居たら弱るかもしれないし、長期間ダンジョンに入り浸る
目的での準備が無ければ2日も経たずに食料も尽きる、そうして空腹で弱った所で
出てくるって感じか?奇襲が来るかもと周囲を警戒しているとグラリと体が揺れる
いや床か部屋そのものが揺れているんだ、積み上がっていた骨がカラカラと音を鳴
らし転がり落ちている、その骨の小さな山は緩やかに膨れ上がり肉と血を巻き込む
ようにして隙間を埋めつくしたかと思えば内側から弾け飛ぶ・・・そして肥大化して
いる間に周囲の死体が床に呑まれて行った、あの死体を素材に大きくなった訳では
ないようだが、それ以前の死体を使ったのだろうか?出て来たのは僅かに血を滴ら
せる骨の全身鎧の様な存在、見れば[スケルトンゴーレム]と出たが・・・どうだかな
それにしてはなんとも言えない違和感がある、そもそもゴーレムと言うには大きさ
は置いておいても違う気がする、2Mは無い程の高さの人型であり、その骨の鎧は
内部が空洞になっていて装備出来るようになっている、そしてその中にスケルトン
らしき存在が居る、それがゴーレム?にしては中の存在には意思があるような気が
している、それとも鎧の方がスケルトンゴーレムで内部は別の存在って事なのか?
その右手には刺突に特化させたらしい細い刀身の剣を持っている、断定出来ないの
はレイピアにしては太く両面が刃として機能しているし、直剣にしては短めなだけ
でなく細すぎて耐久が不安になる程であり軽量化し過ぎているからで、見た目程度
の重量しかないだろうあれでは剣としての叩き斬る基本性能が死んでいるも同然だ
そして刺突剣にしては剣の機能を残し過ぎている、更に刀身の厚みが薄過ぎて刺突
に特化させたとも言えなくなっているなんとも中途半端で歪な剣だ、ついでに言え
ばこの形状で真円とも言えそうな円形の穴を開ける事が出来るのか?と疑問がある
冒険者達が貫かれたのはこの剣ではなそうだ・・・となると他にも居るか、こいつを
倒した後が本番って所か?それにこっちが動かないと動かないのか出て来た時から
止まっている、後ろに引いて様子を見るか前に出て速攻を掛けるかだが、ただ戦う
にしても武器を変えるしかない、補給出来る様になるまで弾は出来れば使いたくな
いからな・・・後銃が効き辛い可能性がある、一発撃ち込んで後退し武器変更といこう
腕を上げながら狙いを付けず感覚で引き金を引き、パンッと頼りなさそうな乾いた
音を響かせると同時に後ろへと跳んだ、それに合わせたかのように一歩踏み出しな
がら剣を突き出して来た、こっちの行動への反応型か?厄介な事に剣を防ぐため銃
で弾く様に払ったため武器の持ち替えが出来なかった、しかもそのまま近距離線と
なり命中した弾も特に効果が無く鎧に弾かれていた、銃が向かないと言うのに武器
を変える余裕が無い、弾いた剣が右から斬り裂く様に振るわれ、なんとか上体を逸
らし避けたかと思えば振り切る前に急停止し瞬時にそのまま斬りかえしてくる・・・
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