うつしみひとよ〜ツンデレ式神は跡取り陰陽師にベタ惚れです!〜

ロジーヌ

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第一章 クリスマスと藁人形

結んで、ほどいて①

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「誰かが、からかいだしたんや。正太郎は苦笑いしてたけど、困ってたから俺は注意して、そこから正太郎と仲良くなって。気が合って、遊びに行ったり、家でゲームしたり、とにかく一緒にいたんよな」
 若い内田は、今よりもっと純粋な正義感を持ち合わせていたのかもしれない。

「で、あるときコクられたんやけど」
 風悟は、静かに頷いた。人として感じた魅力を、恋愛感情に結びつけるのはよくある。ただ、相手に同じ感情が生まれないことも、悲しいくらいよくあることだ。
「俺は動揺してもうて、なんかな、ちょっとギクシャクしたりでな」
 苦笑しながら、内田はグラスを口に運ぼうとし、中身が無いことに気づいて手をおろす。

「卒業してから親にカミングアウトして自活したのを人づてに聞いて、なんか力になりたいと思って店を……いや、俺が会社勤めが性に合わないから、ダシに使ったようなもんなんやが」
 訥々と話す内田は、すでに空になっているグラスをもてあそぶ。アルコールの匂いは、開店までに抜けるだろうかと、風悟は内田の手元を見ながら思った。
「内田さん。正太郎さんの生活は、別にあなたが気を揉むことでは……」
「わかってるけどな」
 内田は拳を握る。
「正太郎が、もしもほんまに俺に言い寄るコに悪さしようとしたとしても、俺はあいつを責められん。俺にできることは、正太郎が自分を隠さず過ごせる場所を作ってやることだけやから……」
「ほんまに、て……」
 やはり内田は、今回の件が正太郎の仕業ではないと、わかっているのだ。


 カラン、とドアに取り付けられたベルがレトロな音を鳴らす。私服姿の正太郎だ。内田はごく自然に話を中断し、笑顔を友人に向ける。と、正太郎の背後に桃が渋い顔をしているのが見えて、風悟は思わず目を丸くした。
「ん? 俺の顔なんかついてる?」
「いえなんでもないです」
 式神の桃は佐々木家以外の人間には見えない。正太郎の問いに、風悟はさらっと取り繕い、すすっと近寄ってきた桃と話す。
「来てあげたわよ」
「ん。ありがとな」
「まーちゃんに、行くように言われたからね」
「そんでも嬉しい」
 風悟の言葉に、ポーカーフェイスを保てずに、にや、と桃が笑う。だがすぐに眉をひそめた。
「なんや微妙な顔して」
「だって……また変な気配がするから気持ち悪いのよ」
「変な?」
 そこで、内田が風悟に声をかけた。道路の掃除を頼まれ、慌てて階段をのぼると、道ゆく女がちらりと見ていった。この界隈に勤める人なのか、水商売風の、いくらか派手な服装である。
「内田さん、同業者にもモテそうやなあ……」
 風悟も女性に人気はあるが、内田の包容力は人としての大きさだ。見知った仲で父の教え子というのを差し引いても、数日接しただけで裏表のない人柄の良さは感じ取れた。
「親父とはまた、違うタイプやな」
 父、正嗣も温和だが、分家の苦労なのか、ちらりと含みを覗かせることがある。だからこそ本家に婿入りして上手く立ち回れるのだが。

「風悟くん、そろそろ開けるから」
 スーツ姿の内田が看板の電気をつけると、常連客が早速来店した。
 制服のエプロンを身に付けた風悟は、すっかり仕事に慣れて店内を忙しなく動き回る。桃は所在無げにカウンター端の椅子にひっそり座っているが、勿論他の人間には見えない。
「あ」
 ドアが開き、昨日見たばかりの顔がのぞいた。
「良かった、退院したんですね」
 内田の声に、こくりと頷いた牧村は、骨折していたという足をやや引きずりながら入店してきた。
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