ソルティ&ビター

メッティ / metty.all

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だってお年頃だから

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 パソコン室は校内にそれほど多くない防音室の一つで、また、パソコンを日差しや塵から守る目的から窓は閉めっぱなし、カーテンも閉めきりで、空調も一年中掛かっているから、遊び場としてはこの上ないスポットだ。

 だから部員がいつも通り程度に集まってくると、部屋の中は結構騒がしい。
 ……けどまあ、皆で動画を見ながら笑う集団も居れば、延々と猫の動画を一人で眺めているだけの子もいて、だからうるさいという程でもない。

 もともと部員の数もたかが知れているというのも、あるけれど。
 そしてこんな緩い結びつきの部活だからこそ、同じ部員であっても学年が違うと、名前は覚えていないことも多かったりする。

 ……苗字はなあ。流石に覚えてるんだけど。
 フルネームで全員の名前を言えと言われるとたぶん僕には無理だろうし、部長にもできないと思う。

 これはそのまま、部活内での接点の量にも関連していて、僕が部長とフレンドリーに接しているというのが例外として挙げられてしまう程度には、学年の壁を越えて騒ぐことはそんなにない。
 今日もその傾向は顕著に表れていて、一年は一年、二年は二年、三年は三年と学年毎になんとなくまとまり、けれどその学年内でも必ずしも皆で遊んでいるわけではないというソーシャルが形成されていた。

 僕も例外ではない。
 基本的には同学年の、二年生の友達としゃべりながら遊んでいる事が多い。

 ただ、今日はちょっとだけ違うことがある。
 僕が座っている場所が部長と先輩の席に近いというのもあるけど、逆に、他の部員は遠くに纏まっているというか。

 これは部長の横でパソコンの電源を入れるでもなく、ただ部長とぼんやりと話している先輩の存在が原因だろうな……。

「いいのか、お前はあっちに合流しないで」
「同級生とは部活の外でもお喋りできますから」
「じゃあ、下級生いちねんとは?」
「まだ今年が終わっても来年があります。部長とのお喋りが一番今は貴重なんです」
「へえ……。おい、部長さんよ。慕われてるじゃねえか」

 先輩はにたにたと笑って部長にちょっかいを掛けると、部長はため息を吐いて先輩をにらみ付け、先輩はそれにくすくすと笑い始める。
 このあたりは、前々からちらほらと見たやり取りだ。本当に仲が良いんだろう。

 ……折角だし、前から気になっていた事を聞いてみよう。

「……部長って、そういえば、いつから先輩とお友達だったんですか?」
「ん? 小学校からかな。具体的にいつ頃か……って考えると、いつだろうな」
「さあ。あんまり考えたことないな。けど、友達なんてそんなもんだろ――いつの間にか仲良くなってる。で、いつまで経っても腐れ縁」

 腐れ縁かあ……。
 そんなものだろうか、そんなものかもしれない。

 だとしたら得がたい友人だと思う。親友、なのかもしれない。

「実際、よく遊びに行ったり来たりもするしな。この前の週末も俺、部長こいつに呼ばれたし」
「呼んだっていうか、お前が見たいっていうから用意しただけなんだけどな……親の帰りが遅い日がたまたま週末だっただけだ」

 見たい?
 ペットを飼ってるって話は聞いたことがないんだけど……。

「見たいって、何をですか?」
「なんだ。聞きてえのか。さして興味がありそうでもないんだが」
「そうですね。けれどまあ社交辞令的なものも含めて」
「物好きなやつだなお前」

 先輩は僕を物好きと評しながら、ちょいちょい、と手招きすると、部長が「おい」、とそれを咎めた。
 珍しいな……部長がこうもはっきり感情を出すのは。

 却って気になってしまったので、先輩と部長の居る方へ、椅子に座ったまま床を蹴ってキャスターで滑り、部長と先輩のすぐ近くへと向う。

「聞くのは辞めとけ、涼太」
「そう言うと余計に気になるもんだと思うけどな」
「悔しいですけど先輩に同感です。で、何を見たんですか」

 先輩は、僕の問いに声を潜めて静かに答えた。

「アダルトビデオ。無修正の」
「…………」

 …………。

「だから辞めとけって言ったのに……」

 リアクションに困っていると、部長がやれやれと首を振っている。
 なるほど、辞めておけというのはそういう意味か……。

「……部長、そんなもの持ってるんですか?」
「いや親父のだよ。だから親が居ない間に呼んだんだ」

 あー……。

「ま、部長おまえの親父の趣味には正直俺もドン引いたけどな。極端すぎるだろ」
「それはまあ……」
「え、どんな……?」
「涼太は涼太でまだ踏み込んでくるのか、おい」
「いえ気になりますよこれ」

 僕が素で返すと、先輩はあはは、と笑い声を上げる――愉快なものをみた、とでも言いたげに。

「二つ見たんだよ。一つは海外のやつ。ふつーのだな。もう一つも海外のだったけど、アレだ。ゲイビデオだった。部長こいつ、『ないわー』、『親父のヤツなに考えてんだ馬鹿じゃねえの?』ってぼやいててな、それも楽しかったぞ」
「実際なに考えてんだって感じだろうが……きもちわりぃ」

 部長は嫌悪感を丸出しにしながら、この話はこれでおしまい、とでも言いたげに僕が座った椅子を押して元の位置へと戻そうとする。
 抵抗しようと思えばできるけれど、でもなあ。

 あんまり深掘りする話でも無いか……。

 僕は大人しく元の位置に戻り、先ほどまでの続きに戻る。

 けど、そうか。
 そうだよな。

 僕だってしてるんだ、部長だって男なんだし、オナニーくらいはしてるだろう。
 部長は先輩と一緒にそれを見た時、オナニーしてたのかな……同性愛には否定的な感情がさっきの態度から見て取れるけれど。

 いや。
 それこそ、僕が深掘りする話でも無いか。
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