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第五章 守護者とコアと中年冒険者

Gと中年

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『ギヂヂヂッ、ギヂッ』
 くっそ、笑ってんのか?

 コイツはマジで手加減してやがった、レベルが1だが、ランクSは伊達じゃないのな。

「ハイヒール……っと回復も待ってくれるとは……だいぶ傷付くが、今はありがたい」

 Gは頭から生えてる触角を動かしながら、回復するのを待っている。

 斬撃はほぼ無効、打撃も効きにくい上にドラゴンナックルは前回のでダメージ受けてて、速攻で壊れてしまった。
 炎も効かない様だし……

「まいったなぁ、化け物はいるもんだな。……てかこれ倒さないと俺が死ぬじゃん」
 まだ手加減してる、今が狙い目なんだよな。

『ギヂギヂ』
「心を通わせたくは無いけど、今の言葉は分かったなぁ。……そのまま返すよ、
 覚悟はできたか?」

 武器は要らない、トップスピードでぶつかり合う。
“ガッッガガガガッ!”
 っとに硬いな、腕がもげそうだよ。

 一度離れて、もう一度、
『ギヂヂッ!』
“ガッガッガガガッ!”
「うるせぇよ、耳障りだ」

“ガッガッゴッゴガンッ”
 Gを殴り、胸を蹴り飛ばす、

「人に近くなっても、【無神経】さは変わらないのか」
 拳を交えながら、氷魔法を撃ち込んで置いた。……何も感じないのか、普通に動いてたけど、

『ギ、ギヂヂ……』
「動くと余計に崩れるぞ? 本当に、ナメてくれてありがとう」
 両腕は崩れ落ち、胸も蹴った時にヒビが入っている。

『ギヂギヂ』
「っとに、動かすから残った2本も崩れそうじゃんか。そろそろ終わりにすんぞ?」

 Gに向かって走り出すと、Gも走り出す。
「覚悟は決まったんだな」
“バキャンッ!!”

 走りながら崩れていくGの顔面を殴り倒す。

「えーと、黒き流星だっけ? あとは忘れたけど。まぁこんな階層にいるのは迷惑だから、もう出て来んなよ」
 煙に向かって話す。

 ヒールをかけて、ドロップを確認、
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
クロノ・ナックル
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
 ドロップが一個だけ、まぁ、ありがたく使わせて貰うわ。

「消毒してからな」
 と時停倉庫にしまう。

 十九層に降りて確認するが、地蔵はいない、と。

 上に戻ると、
「良かった、さすがにまずいかなぁって思ってたとこだったよ」
 とモッチーが言う。

「あうあうあうぅぅ」
 ボブは泣いてて、何言ってるかわかんね。
「ボブボブボブゥゥ」

でも、
「だぁーい丈夫だよ! まぁ心配かけたな、ちゃんと倒してきたから泣くなよ」
「あうあぅ」
 ボブは頷きながら泣いてる。

「一回戻ろうか、この前来た時はあんな化け物いなかった。みんなで話をしたい」

「そうなんだ、それじゃあ帰ろうか。っとその前に、ちょっと休憩」
 その場に座り込むモッチー。

「だな、俺もちょっと疲れたわ」
「それで済むカズトさんが凄いよ。あれにはまだ勝てないって、足がすくんじゃったよ」

「アイツはランクS。ここの守護者が出したんだろうけど、俺狙いなんだろうな」
 他の奴らには倒せないだろうし。

「あーね、俺らじゃ無理なわけだ。……でもラッキーだな、まだ勝てないって思えたんだから」

「だな、まだ強くなれるんだからな」
「あぅう」

 さて、このダンジョンの守護者は、何を考えてるんだ? 普通に下に来させない為? だったらクリアした階層にアイツを置くのはどうだろう?

 まずは報告してからだな。


 ハウスの会議室。

「駄目よ! 危険だわ」
 美羽は反対か。

「いや、早めに行くべきだろ?」
「お、お父さん?」
 お父さんは賛成。

「そのモンスターを出す為に、多くのポイントを使用するのであれば、減っている今が一番危険が少ない。後になれば補充されるんだろ?」

「そうですね。東京ダンジョンは、低階層はモンスターが弱い。美容グッズのレアドロップがある。しかも都会のど真ん中にある。この三つで冒険者が多く、ポイントの獲得は簡単でしょうね」
 時間が経てばいくらでもPが手に入るだろう。

「俺も確認だけでもした方がいいと思うな。二十層でランクBだったのに、十八層にランクSを置いてるのは、それ以上人が降りて来ない様にって事でいいんじゃない? しかも十九層はリポップしてないのなら、ポイントが尽きてる可能性もあるよね」
 賢人も賛成か。

「そ、それでも、危ないじゃない。もし二十層から入ってたら? それ以降にもランクが高いのがいる可能性だってあるのよ?」

「だから確認でしょ? このまま放置する方が危ないと思うよ? ポイント使って、ガチガチに固められたら手が出せなくなるし」

「……そうね。じゃあ私も行くわ」
 そうなるか。

「美羽も一緒に行くが、後方で回復要員な? 必ず最下層に行くわけじゃない。危なければ帰る」

「だね、いつもの通り行こうよ」
 賢人の言う通り、いつもの俺らで行こう。

「んじゃ、明日、いつものメンバーで東京ダンジョンの調査に向かうぞ」

「「「「うい」」」」
 久しぶりの六人でのダンジョンだ。
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