ザキュウ!

ひさ

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第1章 「ザキュウ」

理想と現実

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ヒュンッ


バシッ


ヒュンッ


バシッ


刀が振り下ろされる音と、矢が的に当たる音。
道場にこだまする日常的な音である。
練習中…今回は自主練だが、行っている最中2人は一切言葉を交わさない。
ここ数年で出来た暗黙の了解である。
理由は、互いに集中しているのと、2人の間で交わされる話のネタが尽きかけているからである。

2人。そう、2人なのだ。
座弓専門の師範がいれば3人だが、それでも3人。
そして今日は座弓の先生は来ないので今は2人。

この道場には、門下生が由奈しかいないのだ。

ここにきて、なぜこの話がため息から始まるのかがお分かりいただけるだろう。

理由は、多分建物の位置。
場所は街から離れた、山々に囲まれた土地。
少し標高が高く自然に囲まれているので景色は綺麗だが、そんなこと由奈には関係ない。
高校の友達に声はかけてみたが……。

「んー武道カッコイイけど、私には向いてないかな…」
「あーゴメン、アタシ軽音部に入るから」
「俺……バスケがしたいです」
「あーマジめんご〜、ケツカッチン〜」

とか何とか言われて、結局誰も相手にしてくれなかった。
無理もない気もするが……。

「最後のはまだしも、皆アニメやらなんやらに影響されちゃってさ、何がケツカッチン〜だよ、こっちは真面目に話してんのにさ」
「おいどうした?ブツブツと」

思っていた事が声に出ていたようだ。
空手の先生に声をかけられてしまった。暗黙の了解、ここにやぶれり。

「……安藤先生」
「ん?」
「……何となく言いづらくて今まで話題には出さなかったんですけど……」
「おう、どした?」

そう言いながら、刀を鞘に収め由奈の方へ歩く安藤。

「この道場、門下生私だけなんですよね?」
「んーそうだな」
「他に人、来ないんですかね……」
「そうだなぁ……座弓がもっと広まればな……うちの流派全体が理想だけど」
「座弓ですか」
「そう、この辺で座弓習えるの、ここしかないんだよ。いやもしかしたらこの地域でうちだけかも」
「そうなんですか!」

確かに、他で座弓を習える場所は知らない。
現に調べて出てこないんだから。
けど逆に、もし座弓の存在を皆に知ってもらうことができ興味を持ってもらえたら、ここに何人の人が入るだろう。
しかし。

「理想と現実は違いますよね……」
「そうなんだよな……」

そう言って刀を抜くのと弓を構えるの

ガラガラッ

道場の扉が開くのは、ほぼ同時だった。

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