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第5章「ニャッカ王国珍道中」
姫と少年
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センテバは、屋根から屋根へと巧みに飛び歩いて、町の外れにある教会に向かう。ニャッカの教会は見晴らしの良い場所に建てられていて、街の様子を一望できる。また、城と同じく堅固な作りになっているため、クロボルの攻撃に耐えることができ、人々の避難場所になっている。
「良かった、ここにはまだクロボルがいない」
センテバは、正面の大扉の脇にある小扉を開けて中に入った。聖堂に整然と並べられた長椅子には、避難してきた町人達が点々と座っている。
「魔物は以前より強くなったな」
「先日、ワットリー山脈を越えた東にあるルンサームが一夜で壊滅したらしい。噂によれば、魔王が復活したと」
「魔王は伝説上の存在ではなかったのか?」
「最近の魔物の出現は、魔王の企みなのか……」
「おい、この話はここでしない方が良いのじゃないのか?」
仲間内で話に花が咲いたところを、近くで聞いていた者が止めに入る。教会という神聖な場所で、不吉な話をするなという警告だ。しかし、不安を口にする者は絶えない。
「テバーニ隊が魔物討伐に行かなければ、奴らが襲撃に来ることはなかったんだ。これは、魔物の復讐だ……」
「でも、テバーニ様は無事だろうか」
「ニャッカも、イストギールと同じように結界を張れば、テバーニ隊が全滅することはなかったんだ。宰相のアスナー様は、随分前から結界を張ることについて進言されているのに」
「このままでは、ニャッカが魔物に滅ぼされてしまう……リューク様、お助けください」
悪態を吐く者もいれば、必死に祈りを捧げる者もいる。センテバは小耳に挟みながら、入口の反対側にある説教台へと向かった。
「スミロフじいさん」
老神父は、町人の手を優しく握り、不安を和らげていた。
「センテバ、どうしたのだね」
「聖水がほしいんだ」
「何に使うのかね?」
「聖水が魔物にやられた人を浄化したり、魔除けになることも知ってるよ。貴重な聖水だということは分かってる……やましいことじゃないから、安心して」
センテバは両手を合わせて、スミロフを見つめる。少年の純粋かつ、真剣な眼差しに、神父は首を縦に振るしかなかった。
「ありがとう」
センテバは聖水が入った小瓶を受け取ると、体を反転させて、入口に戻ろうとした。
「これこれ。魔物が立ち去るまで、ここにいなさい」
早く帰りたいのは山々だったが、またクロボルに不意打を食らうのは真っ平だと思い、少年は従ったのだった。
「良かった、ここにはまだクロボルがいない」
センテバは、正面の大扉の脇にある小扉を開けて中に入った。聖堂に整然と並べられた長椅子には、避難してきた町人達が点々と座っている。
「魔物は以前より強くなったな」
「先日、ワットリー山脈を越えた東にあるルンサームが一夜で壊滅したらしい。噂によれば、魔王が復活したと」
「魔王は伝説上の存在ではなかったのか?」
「最近の魔物の出現は、魔王の企みなのか……」
「おい、この話はここでしない方が良いのじゃないのか?」
仲間内で話に花が咲いたところを、近くで聞いていた者が止めに入る。教会という神聖な場所で、不吉な話をするなという警告だ。しかし、不安を口にする者は絶えない。
「テバーニ隊が魔物討伐に行かなければ、奴らが襲撃に来ることはなかったんだ。これは、魔物の復讐だ……」
「でも、テバーニ様は無事だろうか」
「ニャッカも、イストギールと同じように結界を張れば、テバーニ隊が全滅することはなかったんだ。宰相のアスナー様は、随分前から結界を張ることについて進言されているのに」
「このままでは、ニャッカが魔物に滅ぼされてしまう……リューク様、お助けください」
悪態を吐く者もいれば、必死に祈りを捧げる者もいる。センテバは小耳に挟みながら、入口の反対側にある説教台へと向かった。
「スミロフじいさん」
老神父は、町人の手を優しく握り、不安を和らげていた。
「センテバ、どうしたのだね」
「聖水がほしいんだ」
「何に使うのかね?」
「聖水が魔物にやられた人を浄化したり、魔除けになることも知ってるよ。貴重な聖水だということは分かってる……やましいことじゃないから、安心して」
センテバは両手を合わせて、スミロフを見つめる。少年の純粋かつ、真剣な眼差しに、神父は首を縦に振るしかなかった。
「ありがとう」
センテバは聖水が入った小瓶を受け取ると、体を反転させて、入口に戻ろうとした。
「これこれ。魔物が立ち去るまで、ここにいなさい」
早く帰りたいのは山々だったが、またクロボルに不意打を食らうのは真っ平だと思い、少年は従ったのだった。
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