運命の人じゃないけど。

加地トモカズ

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 松中まつなか鷹倫タカミチという男は完璧だった。

 幼稚舎からエリートコース真っしぐらで、中学高校時代はスポーツで国際試合にも出場、そして成績は常に首席。卒業後は一流企業に就職し、あれよあれよと言う間に30歳には取締役。

 そして受けた性はαアルファ。絵に描いたようなα。容姿も、漆黒の髪に程良い筋肉質のモデル体型、会社の広告塔に抜擢されるほどの美男子でαの女性からは求愛され、βベータからも羨望の眼差しで見られる。


「あと足りないのは、伴侶だけ、てか。」


 同僚には半分呆れられながら笑われる。
 この歳まで誰かを抱いたことがない、運命の人を見つけるまでは綺麗な身体でいるべき、という真面目な鷹倫はαの友人達の揶揄いの対象だった。


「そんな簡単に見つかるものじゃないだろ。運命のつがいなんてものは。」

「松中ならΩオメガじゃなくてもαの女でどうにかなるだろ。」

「うーん……しかし一生の伴侶だから、軽々しくは決めたくない。」

「行き遅れんなよ。つーか今日飲みいかね?」

「悪いな。今日エアコンの取り付け頼んでるから。」


 鷹倫はそう言ってデスクから立ち上がって颯爽と会社をあとにした。


 取締役になってから会社からは車通勤を勧められているが、社用で運転するだけで疲れるので未だに電車を利用している。

 そういうところも謙虚だと好意的に捉えられて益々株が上がっていく鷹倫は、周囲が段々と煩わしくなっていた。


(早く結婚でもすれば、静かになるのだろうか……。)


 同僚のαの中にはΩの番と所帯を持っている連中もいる。それはそれは相手にメロメロで溺れている。口を開けば番との惚気話。鷹倫は自分がそうなるのだろうかと思うと、己のフェロモンにもゾッとしてしまう。


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