【休止中】死が二人を分かつまで

KAI

文字の大きさ
8 / 361
”出逢い”

【活殺術】

しおりを挟む

 男は真剣だった。



 今や無抵抗状態のMr.リズムに向かって、覇気を出していた。



 その覇気は並々ならぬ怒りと憎しみ。



 そして・・・・・・愉悦。



 禍々まがまがしいとさえ形容できる笑みを浮かべ、今宵こよい初めて構えた。



 両手を前へせり出し、重心を腰まで落とし、飛びかかる獣のような姿勢をとっている。



(な・・・・・・何をするつもりだ?)



 今なら分かる・・・・・・この作務衣を着たジャパニーズ・・・・・・自分と同じ人種だ。



 拳・・・・・・脚・・・・・・五体で人を殺すことができるタイプ。



 そうそう居るものじゃない。



 さらに言えば、自分よりもはるか上・・・・・・



 圧倒的なまでに負けた・・・・・・完敗だ・・・・・・



 だが、知っている。



 この手の戦いのはーーーー



 勝ち負けにあらず!!



 立っている者が勝利者としてたたえられ、伏している者が敗北の苦渋くじゅうを舐める・・・・・・だけではない!!



 戦闘不能・・・・・・その先がある。



 生殺与奪の権を握った者が、その先を決めるのだ。



「・・・・・・あまり子供にこういった光景を見せたくはないのですが・・・・・・この世の中には終わりを見なければ終わらない物語がある」


「・・・・・・?」


「貴方と彼女の物語・・・・・・悲劇的な物語です。これを、目の前で完璧に終わらせることで終了とする」


「へっ・・・・・・やってみな・・・・・・このガキに植え付けてやった物・・・・・・奪ってやった物・・・・・・それを終わらせる? やれるモンならやってみな!!」


「その意気やヨシ・・・・・・」



 ザッ・・・・・・



 男が行動に出た。



 最初にしたことーーーー



 Mr.リズムの分厚い耳を、両手で包み込んだのだ。



「!?」


「耳たぶって、実は簡単にとれるんですよ・・・・・・こうやって・・・・・・上の付け根を摘まんで」



 ムニ・・・・・・



「そうして・・・・・・顔の前方四五度くらいに目がけ、壊れかけのジッパーを下ろすようにッッ!!」



 ミリミリ・・・・・・



 プツッ・・・・・・



「ね?」



 男の両手には、痙攣けいれんしている蛾の両の羽がごとき耳がつままれていた。



「ガッ・・・・・・」


「それとね・・・・・・靭帯というのは手術でも治せますし、自然治癒もできる・・・・・・ですので」



 耳を捨てると、男は拳銃をポケットから取り出した。



 何!?



 非武装で戦っていた男が、武器を!?



「私にとってこの手の武器は・・・・・・あくまでも道具です」



 カチ・・・・・・



 パパァァァン!!



 パパァァァン!!



 男は皮膚に銃口を押し付け、決して外さないように、リズムの腰に向かって発砲した。しかも左右を丁寧に。



「脚の付け根の太い骨が粉砕しました。治すのは・・・・・・難しいかと」


「うぐぅぅぅ!!」


「まだまだ・・・・・・」



 タンッッ!!



 気付きつけをするかのように、リズムの脇腹を叩いた。



「がはぁ・・・・・・」



 Mr.リズムは吐血した。



「肋骨を折り、肺に突き刺しました。禁煙をオススメします」



 さて・・・・・・と、男。



 鼻を無造作に掴むとブチィィ!!



 口に向かって足を横に叩き込む『足刀そくとう』蹴りによって、全ての歯が折損せっそん



「・・・・・・ぁぁ」



 サンドバックのようなリズムには、もう叫ぶだけの余力はない。



 もう終わる・・・・・・



 耳も骨も歯も・・・・・・だけどこれで終わるんだ・・・・・・



「もしかして、もう終わりだと思ってます?」


「!?」


「貴方・・・・・・自分の罪・・・・・・数えたこと、ありますか?」


「も・・・・・・もう・・・・・・」


「あの娘は声を奪われた・・・・・・貴方もでなければ、不公平だ」



 ザシュッッ・・・・・・



 歯というガードのない口の中に、男は指を突っ込んだ。



「フンッ!!」



 グチィッッ!!



「・・・・・・ッッ・・・・・・!!」


「タンはいただきました。ここまで来れば・・・・・・最後の仕上げ・・・・・・何をするかお分かりですね?」



 ・・・・・・見当はつく・・・・・・



 だけど・・・・・・



「あがふが・・・・・・ッッ!!(それだけはやめてくれ!!)」



 ピタリ・・・・・・



 男の右手の人差し指、中指がじっとり濡れている眼球に触れた。



「貴方は・・・・・・と言った女性に手心を加えましたか?」



 ブッ!!



 ・・・・・・



 ・・・・・・・・・・・・



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 暗闇・・・・・・



「限界を超える痛みを与え、代わりに感覚を奪う・・・・・・『なおかせるむごい技』・・・・・・活殺術かっさつじゅつなりけり」



 ドドォォ・・・・・・



 地獄の責め苦が終了し、リズムは・・・・・・否、ただの大きな肉塊は倒れ伏した。



「ふぅ・・・・・・いささか疲れましたね・・・・・・」



 ハンカチを取り出し、血を拭うと、ニンマリとして少女に手を差し伸べた。



 リズムに邪魔された『』をするためである。



「さあ。これで恐いものはなくなりました。行きましょう」



 この手・・・・・・



 今なら恐くない・・・・・・



 自分を痛めつけない。



 自分を辱めない。



 自分を引き剥がさない。



「貴女を護ってみせます。命に代えて」



 もう、恐くない。



 自由に向かって、手を伸ばせた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...