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”記憶に残る一日篇”
【格闘技オタクくんさぁ・・・・・・】
しおりを挟む「さぁて・・・・・・夕食の買い物に行くの忘れてたわ。お留守番頼めるかしら?」
「え? さっき行ってきたんじゃないの?」
「セツナちゃんの分も買ってくるのよ~♪ 今日はご飯ごちそうするわね♪」
サッと着替えて、マイバックを持つママ。
「じゃ、セツナちゃんと仲良く待っていてね~」
「は~い」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・話すことがない!!
どうしたものか・・・・・・
そうだ!
「あのさ・・・・・・」
「・・・・・・?」
「僕の部屋って格闘技の専門雑誌がたくさんあるんだ。見てみない?」
『私、読書ができるほど日本語上手じゃない』
「ぼ、僕が説明するから」
『・・・・・・なら、読んでみたい』
「よしっ! 行こう!」
新樹の部屋は、整理整頓されていた。
家が大きいせいか、部屋も広い。芥川の部屋よりも二倍はある。
部屋の隅に、筋トレ器具が転がっている。
ダンベルにバトルロープ、手首足首につける重しに、通販で買ったのであろう用途不明の物まであった。
「ほら、この間あったボクシングのヘビー級の試合!」
半裸の屈強な男同士が殴り合っている、女子に見せるにはいささか暑苦しい表紙の雑誌を取り出した。
「やっぱしジャック・ブラインは強いよな~!!」
『・・・・・・どっちがどっち?』
「ジャック・ブラインを知らないの? こっちの黒人の方だよ」
筋骨隆々の、丸坊主の黒人。
なるほど、佇まいからして強そうだ。
「まさかの一R三〇秒でKOだもんな~」
新樹がスマホを出す。
「このQRコードを読み込めば、カット無しの決着シーンを観られるんだ!」
興奮しながら、スマホをかざす。
そして、動画を見た。
「観て観て!」
セツナにも見えやすいように、近づく。
彼女もジッと液晶を見ている。
白人の挑戦者のフックを華麗に避けると、そのまま流れるようにアッパーカットをアゴに入れる黒人。白人の方は魂が抜けたかのごとくふらりと倒れ、そのまま試合終了。黒人のジャック・ブラインは汗もかいていない。
「なっ!? すごいだろ!!」
「・・・・・・(コクリ)」
「皆、チャレンジャーのフックのガラ空きばっかり指摘してるけど、僕はそうじゃないと思うんだよ。挑戦者のこれまでの戦歴を見てみると、懐に入ってのフックで一発KOを量産しているから、雑な一撃じゃないんだ。狙っての一発。それをフットワークで躱して、尚且つ必殺のアッパーを喰らわせたのが、ジャック・ブライン。つまりは、お互いに必殺技を出した死力を尽くした戦いなんだよ!!」
・・・・・・いや長いッッ!!
この新樹という青年、格闘技の話しとなると饒舌どころじゃない。
もはや格闘技オタクと言っても過言じゃないだろう。
だが、セツナはその全てを流さずにちゃんと聞いていた。
それほどに熱心なのだ、と、理解をしているからである。
そしてそれこそが、彼を彼たらしめているのだと、もーーーー
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