～ボクの彼氏は枯れている～

”第2章”

【ep：映画の感想】

　映画は終わった。


　天咲は思った。


『金と時間を返せ』と。


　流行の俳優女優がキャラクターと親和性ゼロにも関わらず登場し、マンガが基なのにミュージカル調で共感性羞恥が発動するし、なにより内容が粗い。


　マンガでは主人公と、対をなす女性が出てきてそれぞれの幸せを模索するという物語なのに……


　後半30分はもうひとりのヒロインが出てこずに、主人公がハッピーエンドを掴み取って終了した。


　しかも特に意味のない、売れっ子俳優によるバトルシーンまで無駄に盛り込まれていた。


　原作を知る者からすれば完全に別物。


　そうでなくとも、高レベルな失敗作と言えるであろう。


「なんつーか……オイラには難しい内容だったぜ」

「いや……記憶から抹消していい位の作品だったので……」


　せっかくテンション高めだった天咲も、ガク落ちだ。


　改めてネットを見てみたが、たしかに話題になっていた。


　でもそれは『原作レイプ』『実写化を許すな』『感動を返せ』という炎上によっての話題作であった。


「たはは……」


　源蔵との映画――


　浮かれていたのと、なるべくネタバレを回避した結果……こうなってしまった。


「なんだか……すみません」

「ん？　楽しかったぜ？」

「いや、本当にお気遣いなく……」

「開始10分でよく分からなくなったが、蓮ちゃんの横顔見てる方が楽しかった」

「えっ？」

「特に表情筋がビキビキになって固まっているのとか、面白かったぜぃ」


　それは単純に原作ファンとしてブチ切れていたから……


「でもよぉ……最初の方は良かったンじゃねぇか？」

「そうですか？」

「トゲトゲしいなぁ……演技で飯食ってるヤツらなんだから、お遊戯会レベルじゃないだろぃ？」


　……それが逆に腹立たしいのだ。


　前半は期待せずにはいられないほど、クオリティが高かった。


　思えば、テレビのCMでも番宣でも前半部分しか放映されていなかった。


　悔しいが、騙された。


　それに――


　心がえぐられた。