聖女の結婚~逆ハー強制ルート?~聖女は性女、伴侶達は腹黒最強S夫でした!?

しろくまさん

文字の大きさ
32 / 59
二章「結婚の儀」

二十九話「巫女姫の疑惑」前編

しおりを挟む
「明日、巫女姫が訪問したいと言ってるみたいだけど、どうする?」夕食時にパクレットがみんなに尋ねた。

 巫女姫が保護されて一週間がたった。十日間の逃避行で、巫女姫は随分消耗していたそうだ。三日程前までは、コレウスとイオナンタも彼女の治療に駆り出されていた。

 漸く回復した彼女を歓迎して、今夜は王族の私的な晩餐会が開かれている。加護が増したパクレットには、そこでの会話が聞こえたようだ。個室内の会話は遮断してるけど、公的な所での会話は拾ってしまうんだって。

「何か予定があったかしら?」私は首を捻る。
「お父上とフィルが、届け物に来るって言ってたよ」タリーの言葉に思い出す。あぁ、お義母さんが私に作ってくれた物ね。

「フィルは騎士見習いの登録に来るんだっけ?」ヒビスクスを見ると頷いている。
「隊長は昇進登録です。新領地に移動になるかもしれません」嬉しそうなのは、お父様のシゴキから逃げられるからじゃないよね?

「フィルはどこに配属されそう?」みんなが私を見る。ブラコンだと思ってるんでしょ。
「巫女姫の命の守護者になるなら、早目に絆を結んだ方が良いのかと思って」

 私の言葉にタリーが頭を掻き、イオも困り顔を向けた。
「巫女姫は、光の御子とその世話係達には会いたくないんだって」みんなが呆気に取られた。
「……じゃあ、何の為にこの国に来たの?」私の質問に、みんな頷いた。

「王族達も訳が分からないようですね。彼女が望んだのは、貴女に会うことだけです」タッカが闇の精霊に尋ねてくれたらしい。
「そんな状況で会うのは不安だわ」私の母を恨んでいても、おかしくはないし。

「他の精霊達は何か知りませんか? イーストフィールドの精霊達にも尋ねて貰いましょう」イオがみんなに頼んでくれる。
 私はお茶を入れて、みんなの返事を待った。

「『ただの誤解と思い込みだ。問題はそんな事ではない』と光の精霊が呆れています。直接には話せないので、説得もできないそうです」イオが首を傾げながら言った。

「『どうしてみんな、お母様を捨てたの?』と、うわ言を言っていたそうだ。イーストフィールドでは鏡を見ると泣くからと、治療者が外していた」コレウスが顎を撫でている。

「母親である聖女のお墓に向かって『本当にお父様を裏切ったの?』と話しかけてたって。彼女が出国準備を始めたのは、縁談が持ち上がるより前みたいだね」パースランが続ける。

「お父上に保護された時には酷く驚いてた。あと、この国の豊かさを見て『お父様が加護を失ったせいなの?』と自国の貧しさを嘆いてる。父親は土の魔術師だったそうだよ」

「家族で温泉に出掛けたのが、最初で最後の旅行だったらしい。その時の家族の絵を大切にしていたのに、急に仕舞い込んでしまったと、火の精霊が寂しがってる。この国に入ってからの情報はない」ヒビスクスがため息を吐いた。

「僕には新しい情報はないね。マジョラムと会うのを強硬に嫌がったというくらい。まぁ、推測はできるけど。パクレットの意見も聞かせてくれる?」タリーがお茶を飲む彼を見る。

「巫女姫は『みんなが母親を捨てた』と言う。これは父親である聖女の伴侶、命の守護者であるマジョラム、ヴェロニカのお母上の巫女長、この三人だよね?」パクレットの言葉に頷く。

「最近、彼女が鏡や絵を見たがらなくなり、聖女の墓に『父親を裏切ったのか』と言ったのだから、自分が父親の子供ではないと疑ってるんじゃないかな?」うーん、違和感があるわ。

「でも、マジョラムは巫女姫が生まれるより前、聖女と伴侶が結婚した直後に王宮を出たけど、巫女姫は十六でしょ? 二年後に生まれてるんだから、計算が合わないわ」

「マジョラムは何回か、王都に戻っています。もう一つの可能性は、お父上ですね。貴女が一歳の頃にお母上に頼まれてイーストフィールドに行き、聖女達と会ったそうです」

 イオの言葉に唸る。時期もぴったりね。
「巫女姫はマジョラムかお父様が実の父親じゃないかと疑ってるのね。私が知ってる訳ないじゃない?」はぁ、とため息を吐く。

 夢の中の聖女を思い出す。あの人は伴侶を愛していた。彼の嫉妬によって加護を失うと分かっていても、離れられないと言った。

 聖女の想いを考えると辛くなる。巫女姫はどうしてそんな疑いを持ったんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...