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masquerade.2
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「あいてっ」
私、美隅恵子は低空から見慣れぬ森の草むらへと落下する。
雑草がちくちくと私のぷるすべ肌を刺す。
高層マンション最上階の高級敷布団とは似ても似つかぬ感触である。
「転生おめでとう、プレイヤー」
その少年は無様な格好の私を見下ろしながらそう言った。
「君の昨晩のアーブル、素晴らしい出来だったよ。リリカには遠く及ばないが、素人にしてはなかなかだ。君は特別にキノドからスタートさせてあげるよ」
「何言ってんの?」
何もかもがでたらめで体を持ち上がらせる気力も湧かない。
「こういうことさ」
少年はそう言って指をパチンと鳴らす。
それを合図に私の部屋着がひとしきり煌々と光を放つ。光が止むと、私の姿は昨晩のメイドコスに変貌していた。
「マセガキ」
「君の退屈はこの世界で消える」
「戦争ならしないよ」
「君たちがするのは舞踏会だ」
少年の姿が蜃気楼のように揺らめき、やがて虚無へと溶けていく。
森の奥から白を基調とした怪物たちが、木々の隙間をゆらりゆらりと蛇行しながら私に近づく。
「戦争じゃないかよ」
しかしまったくやる気が出ない。武器もなしにどうしろと言うのだ。
死ぬなら死ぬでそれでいい。私は今それ以上に動きたくないのだ。
「何が欲しい?」
エコーのかかった少年の声だ。
「機関銃」と私は言う。
草むらに寝転ぶ私の目の前に、ガチガチのブローニングM2重機関銃が鈍い音を立てて落下した。
「弾数は無制限だから」と少年は言う。
「普通M3でしょ馬鹿が」
少年からの返答はなかった。
構えるのが面倒だった。もう死んでもいいかなと思った。
怪物たちはこちらとの距離を測り終えると、やがて叫びを上げながら襲い掛かってくる。
死んだかな、と思ったそのとき。私の目の前でM2がひとりでに宙へと浮かぶと、高速回転の末、襲い掛かる怪物たちを自身による殴打により一掃したのである。
「おお」
M2は私の感嘆の声を聞き、砲身をこちらへと向ける。
「あぶないあぶない」
私がそう言うと、M2は少し砲身を私から逸らした。こいつは言うことを聞くのか?
「ぶっ放してもいいんだよ」と私は試しに言ってみる。
するとM2は待ってましたとばかりに空中で体を一回転させ、森の中の怪物たちに無尽蔵の弾丸を浴びせ始めた。
鼓膜を破るほどの爆音がひとしきり続き、やがてピタッと音は止む。
怪物たちが砂煙の中から姿を現すことはなかった。全滅である。
「やるねえ」
褒めてやるとM2は砲身を差し出してきたので、私はそれを撫でてやった。
なぜか暖かい程度の熱と硝煙の匂いが私の手のひらにこびり付いた。
私、美隅恵子は低空から見慣れぬ森の草むらへと落下する。
雑草がちくちくと私のぷるすべ肌を刺す。
高層マンション最上階の高級敷布団とは似ても似つかぬ感触である。
「転生おめでとう、プレイヤー」
その少年は無様な格好の私を見下ろしながらそう言った。
「君の昨晩のアーブル、素晴らしい出来だったよ。リリカには遠く及ばないが、素人にしてはなかなかだ。君は特別にキノドからスタートさせてあげるよ」
「何言ってんの?」
何もかもがでたらめで体を持ち上がらせる気力も湧かない。
「こういうことさ」
少年はそう言って指をパチンと鳴らす。
それを合図に私の部屋着がひとしきり煌々と光を放つ。光が止むと、私の姿は昨晩のメイドコスに変貌していた。
「マセガキ」
「君の退屈はこの世界で消える」
「戦争ならしないよ」
「君たちがするのは舞踏会だ」
少年の姿が蜃気楼のように揺らめき、やがて虚無へと溶けていく。
森の奥から白を基調とした怪物たちが、木々の隙間をゆらりゆらりと蛇行しながら私に近づく。
「戦争じゃないかよ」
しかしまったくやる気が出ない。武器もなしにどうしろと言うのだ。
死ぬなら死ぬでそれでいい。私は今それ以上に動きたくないのだ。
「何が欲しい?」
エコーのかかった少年の声だ。
「機関銃」と私は言う。
草むらに寝転ぶ私の目の前に、ガチガチのブローニングM2重機関銃が鈍い音を立てて落下した。
「弾数は無制限だから」と少年は言う。
「普通M3でしょ馬鹿が」
少年からの返答はなかった。
構えるのが面倒だった。もう死んでもいいかなと思った。
怪物たちはこちらとの距離を測り終えると、やがて叫びを上げながら襲い掛かってくる。
死んだかな、と思ったそのとき。私の目の前でM2がひとりでに宙へと浮かぶと、高速回転の末、襲い掛かる怪物たちを自身による殴打により一掃したのである。
「おお」
M2は私の感嘆の声を聞き、砲身をこちらへと向ける。
「あぶないあぶない」
私がそう言うと、M2は少し砲身を私から逸らした。こいつは言うことを聞くのか?
「ぶっ放してもいいんだよ」と私は試しに言ってみる。
するとM2は待ってましたとばかりに空中で体を一回転させ、森の中の怪物たちに無尽蔵の弾丸を浴びせ始めた。
鼓膜を破るほどの爆音がひとしきり続き、やがてピタッと音は止む。
怪物たちが砂煙の中から姿を現すことはなかった。全滅である。
「やるねえ」
褒めてやるとM2は砲身を差し出してきたので、私はそれを撫でてやった。
なぜか暖かい程度の熱と硝煙の匂いが私の手のひらにこびり付いた。
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