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第六節 未来へ
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地上――、N州。
MASA宇宙センターなるものが衛星写真であり得ないモノを映し出していた。
『なんだこれは!? 人がスペースデブリを破壊している……!?』
そこには数名の人影が。しかしそれは、人というには青白く、透明過ぎる色をしていた。写真はその人影が左手をかざし、スペースデブリを爆発させている様な光景を映し出していた。MASA宇宙センターは慌ただしくなる。
『宇宙に謎の生物が居るぞ!』
『我々が作った人工衛星も破壊されるかも知れん』
『人類には攻撃をしてこないか!?』
次の写真を見ると、青白く透明な人影はその場から消え去っていた。
『攻撃は……して来ないのか……?』
MASA宇宙センターの人員は胸をなでおろした。
宇宙――、
「さて、一通り区切りは付いたぞ」
爆破はスペースデブリの破壊を済ませ、ゾムビーの親玉に話し掛ける。
『礼ヲ言ウゾ、人間……。コレデ同胞達ノ無念モ、少シハ晴レル』
親玉はやや穏やかな表情をした様に見えた。と、そこへ――、
「スマシちゃん、ちょっと」
「何だ? 好実」
何か思いついた様子で杉田が爆破に話し掛けた。
「せっかく地球の近くに来たんだから、何かしていかないかい?」
「悪いが私はお前の様に異性の風呂をのぞく趣味は無いぞ?」
ガクッと腰を抜かした様子の杉田だったが、気を取り直して話を切り出す。
「違うよスマシ、少しだけ感じ取れたんだけど、地上でスマシのコト、相当想ってくれている人が居るみたいだから、会ってあげなってコト。1カ月に1回くらいのペースで、同じ場所を訪れているよ? 何か感じるモノは無いかい?」
「何? ……!!」
爆破は感じ取った。日本のとある墓地で手を合わせている男がいる事を――。
「アイツ……」
「スマシちゃん、地上へは1、2回しか行けない決まりになっているから、しっかり後悔の無い様に行ってくるんだよー」
「分かった……」
爆破は右手を振ると、光の速さでその場所へ向かった。ある男のいる場所へ――。
とある墓地――、
一人の男が、溜め息をつき呟いた。
「フー、爆破隊長。あれから半年を迎えそうです。そちらの世界は平和ですか? 苦しいことはありませんか? せめてあちらの世界では、幸せに暮らしてください……」
『身体副隊長、中々平和だぞ? それに苦しくはない』
「!?」
男は後方から声が聞こえた気がして、振り返った。そこには、青白く透明な、爆破スマシの姿があった。
『久しぶりだな、副隊長』
そう、男の名は、身体スグル。狩人の現隊長である。
「隊長……!!」
身体は歓喜した。両目にうっすらと涙を浮かべて――。
「隊長! 隊長なのですか!?」
『ああ、そうだ。爆破スマシだ。爆破スマシの、霊魂みたいなものだがな』
「隊長、お元気そうで何よりです……。そうだ、今は狩人の隊長を務めさせてもらっています!」
『そうか、私の役目を受け継いでくれているのだな。どうだ? 上との報告会は難儀だろう?』
「は……、はい。こちらは上に従う一方です」
『ははは、そうか。それにしても、お前は律義なヤツだな。1カ月に1回も、墓参りをしてくれているとはな』
「いいえ、時間さえあれば、毎日でも通いたかったのですが、職務に追われ、この程度しか……」
『もういい』
「!?」
『十分だ。これ以上されると、逆に迷惑だぞ? 死んでいるこちらが気を使ってしまう』
「ハッ! 分かりました!!」
『それにしても、何故そこまで私にこだわる? どんな理由があるんだ?』
「俺は!」
『?』
「貴女に命を助けられた! その恩義がるからです! 貴女が居なければ、俺の命はあの日途絶えていた。だから、この命を懸けて、貴女の右腕として尽力していこうと、あの日決めたからです!」
ハハっと笑い、爆破は言った。
『そうか、それならもう良い。お前は十二分に私の右腕として、狩人の副隊長として役に立ってくれた。これからは自分の為に生きていけ』
「ハッ! 分かりました!!」
『何故なら、私はもう死んでいるからな!』
「……」
苦笑いを浮かべる身体だった。
『因みに、私は今、幸せに暮らしている。昔の恋人に会ったからな』
「! ……そんな方が……おめでとうございます」
『ああ、ありがとう。そろそろかな、あの世に帰るよ』
「ハッ!! この度は、どうもありがとうございました!!」
敬礼をする身体。
『ハハ、じゃあ……な』
爆破の体は薄っすらと透明さを増し、消えていった。
「爆破隊長……」
身体は、空を見上げた。
主人公の学校、昼休憩にて――。
「ブーブー」
「あっ、電話だ……」
主人公は自分の携帯が鳴っているのに気付く。急いで携帯をポケットから出し、画面を確認した。
「身体隊長からだ……もしもし」
「もしもし、俺だ」
「どうしたんですか?」
「ああ、爆破隊長に会ったんだ」
「!? それって……」
「隊長の墓参りに行った時の事だ。青白く透明なお姿ではあったが、元気にしていると聞いた。ツトム、お前も以前夢の中で会ったと言っていたな?」
「はい。少しの間でしたし、あまり話は出来ませんでしたが……」
「俺も少し話をした。幸せに暮らしていらっしゃる様だったぞ」
「そう……ですか。良かったです」
「はは、嬉しくなって電話してしまった。用はそれだけだ。すまなかったな」
「いえ、では」
「じゃあな」
「ブツン、プープープー」
電話は終わった。
「身体……、隊長……」
主人公は身体の事が、自分の事の様に嬉しくなった。
2月下旬――、
主人公にとっての、運命の日が訪れた。
(今日は、志望校の合否発表の日だ……どうなるんだろう……)
緊張した面持ちで、主人公は学校に足を運んだ。
朝礼後――、
「ツトムとミノリ、ちょっと来い」
「はっ、はい!」
「はーい」
担任が、主人公と巨房を別室へ呼んだ。
(緊張する……! どうなるんだろう……?)
主人公の心臓は爆発寸前だった。担任がゆっくりと口を開く。
「二人とも……」
「ゴクリ」
「……合格だ!」
「や……やった」
「わーい!」
歓喜する二人。
「あー。そうだ、言い忘れてたけど」
不意に、巨房が口を開いた。
「?」
「主人公ツトム隊員、高校でも、同じ学校なのでヨロシクね!」
「!? はっ、ハイ!(高校でも一緒!? ミノリちゃんの誘惑に、負けない様にしないと……)」
気を引き締める主人公だった。
その日の放課後――、
「『高校受験、合格しましたよ』っと」
主人公は尾坦子にメールを送った。数分後、
「ブーブー」
「!」
電話が鳴った。すかさず電話に出る
「もしもし……」
「もしもしツトム君? 合格おめでとう!」
「ありがとう、尾坦子さん」
「ツトム君、約束通り良いコトして、あ、げ、る」
「!?」
――、
「尾坦子さん、コレは……」
「ジュウ――」
「さあじゃんじゃん食べて」
主人公らは焼肉屋に来ていた。
「良いコトって、コレ?」
「そーよ、不服かしら?」
「いや、別に……(過激なコトするよりかは、気まずくなくていっか)」
「私ね……」
「!」
「将来、子供が欲しいって、最近になって考える様になったんだ」
「こ……子供?」
「前も話したかもだけど、私、患者さんはスキ。子供もスキ。おじいさんや、おばあさんもスキ。困っていたり、苦しんでいる人を助けることが大好きだったの。でもね……」
「?」
「ちょっと前から、ツトム君の事が一番大好きになって、ツトム君との子供にも会って見たくなって……」
「それで……?」
「ツトム君、18歳になったら、一緒に子供、作ろうね!」
「! ! ! ……は……、はひ」
思わず顔が赤くなる主人公。
「学生結婚になるのかな? 子供出来たら、結婚しようね。できちゃった婚みたいのはちょっと嫌だけど……」
「う……うん!」
二人はその後焼肉をたらふく食べた。
――、
「今日はありがとう。またね」
「またねー!」
主人公は家路を辿る。
(今から3年とちょっとか……。どんな生活をしているんだろう……?)
期待と不安を抱きながら、主人公は自宅に着いた。
「ただいまー」
「お帰りなさい。お風呂、湧いてるわよ」
「ありがとう、母さん」
その日の夜――、
主人公は日記を書いた。
『僕は高校生になるけど、これからも生活は続いていく。環境学部環境科で、もっと地球の環境を考え、守り、ゾムビー発生から教えられたこと、地球に住む者としての役割、残された者の責任と、真摯に向き合い、行動していく。まだ見ぬ、僕達の子供の為にも……』
回避とサイコとツトム外伝~後日談~ 完……?
MASA宇宙センターなるものが衛星写真であり得ないモノを映し出していた。
『なんだこれは!? 人がスペースデブリを破壊している……!?』
そこには数名の人影が。しかしそれは、人というには青白く、透明過ぎる色をしていた。写真はその人影が左手をかざし、スペースデブリを爆発させている様な光景を映し出していた。MASA宇宙センターは慌ただしくなる。
『宇宙に謎の生物が居るぞ!』
『我々が作った人工衛星も破壊されるかも知れん』
『人類には攻撃をしてこないか!?』
次の写真を見ると、青白く透明な人影はその場から消え去っていた。
『攻撃は……して来ないのか……?』
MASA宇宙センターの人員は胸をなでおろした。
宇宙――、
「さて、一通り区切りは付いたぞ」
爆破はスペースデブリの破壊を済ませ、ゾムビーの親玉に話し掛ける。
『礼ヲ言ウゾ、人間……。コレデ同胞達ノ無念モ、少シハ晴レル』
親玉はやや穏やかな表情をした様に見えた。と、そこへ――、
「スマシちゃん、ちょっと」
「何だ? 好実」
何か思いついた様子で杉田が爆破に話し掛けた。
「せっかく地球の近くに来たんだから、何かしていかないかい?」
「悪いが私はお前の様に異性の風呂をのぞく趣味は無いぞ?」
ガクッと腰を抜かした様子の杉田だったが、気を取り直して話を切り出す。
「違うよスマシ、少しだけ感じ取れたんだけど、地上でスマシのコト、相当想ってくれている人が居るみたいだから、会ってあげなってコト。1カ月に1回くらいのペースで、同じ場所を訪れているよ? 何か感じるモノは無いかい?」
「何? ……!!」
爆破は感じ取った。日本のとある墓地で手を合わせている男がいる事を――。
「アイツ……」
「スマシちゃん、地上へは1、2回しか行けない決まりになっているから、しっかり後悔の無い様に行ってくるんだよー」
「分かった……」
爆破は右手を振ると、光の速さでその場所へ向かった。ある男のいる場所へ――。
とある墓地――、
一人の男が、溜め息をつき呟いた。
「フー、爆破隊長。あれから半年を迎えそうです。そちらの世界は平和ですか? 苦しいことはありませんか? せめてあちらの世界では、幸せに暮らしてください……」
『身体副隊長、中々平和だぞ? それに苦しくはない』
「!?」
男は後方から声が聞こえた気がして、振り返った。そこには、青白く透明な、爆破スマシの姿があった。
『久しぶりだな、副隊長』
そう、男の名は、身体スグル。狩人の現隊長である。
「隊長……!!」
身体は歓喜した。両目にうっすらと涙を浮かべて――。
「隊長! 隊長なのですか!?」
『ああ、そうだ。爆破スマシだ。爆破スマシの、霊魂みたいなものだがな』
「隊長、お元気そうで何よりです……。そうだ、今は狩人の隊長を務めさせてもらっています!」
『そうか、私の役目を受け継いでくれているのだな。どうだ? 上との報告会は難儀だろう?』
「は……、はい。こちらは上に従う一方です」
『ははは、そうか。それにしても、お前は律義なヤツだな。1カ月に1回も、墓参りをしてくれているとはな』
「いいえ、時間さえあれば、毎日でも通いたかったのですが、職務に追われ、この程度しか……」
『もういい』
「!?」
『十分だ。これ以上されると、逆に迷惑だぞ? 死んでいるこちらが気を使ってしまう』
「ハッ! 分かりました!!」
『それにしても、何故そこまで私にこだわる? どんな理由があるんだ?』
「俺は!」
『?』
「貴女に命を助けられた! その恩義がるからです! 貴女が居なければ、俺の命はあの日途絶えていた。だから、この命を懸けて、貴女の右腕として尽力していこうと、あの日決めたからです!」
ハハっと笑い、爆破は言った。
『そうか、それならもう良い。お前は十二分に私の右腕として、狩人の副隊長として役に立ってくれた。これからは自分の為に生きていけ』
「ハッ! 分かりました!!」
『何故なら、私はもう死んでいるからな!』
「……」
苦笑いを浮かべる身体だった。
『因みに、私は今、幸せに暮らしている。昔の恋人に会ったからな』
「! ……そんな方が……おめでとうございます」
『ああ、ありがとう。そろそろかな、あの世に帰るよ』
「ハッ!! この度は、どうもありがとうございました!!」
敬礼をする身体。
『ハハ、じゃあ……な』
爆破の体は薄っすらと透明さを増し、消えていった。
「爆破隊長……」
身体は、空を見上げた。
主人公の学校、昼休憩にて――。
「ブーブー」
「あっ、電話だ……」
主人公は自分の携帯が鳴っているのに気付く。急いで携帯をポケットから出し、画面を確認した。
「身体隊長からだ……もしもし」
「もしもし、俺だ」
「どうしたんですか?」
「ああ、爆破隊長に会ったんだ」
「!? それって……」
「隊長の墓参りに行った時の事だ。青白く透明なお姿ではあったが、元気にしていると聞いた。ツトム、お前も以前夢の中で会ったと言っていたな?」
「はい。少しの間でしたし、あまり話は出来ませんでしたが……」
「俺も少し話をした。幸せに暮らしていらっしゃる様だったぞ」
「そう……ですか。良かったです」
「はは、嬉しくなって電話してしまった。用はそれだけだ。すまなかったな」
「いえ、では」
「じゃあな」
「ブツン、プープープー」
電話は終わった。
「身体……、隊長……」
主人公は身体の事が、自分の事の様に嬉しくなった。
2月下旬――、
主人公にとっての、運命の日が訪れた。
(今日は、志望校の合否発表の日だ……どうなるんだろう……)
緊張した面持ちで、主人公は学校に足を運んだ。
朝礼後――、
「ツトムとミノリ、ちょっと来い」
「はっ、はい!」
「はーい」
担任が、主人公と巨房を別室へ呼んだ。
(緊張する……! どうなるんだろう……?)
主人公の心臓は爆発寸前だった。担任がゆっくりと口を開く。
「二人とも……」
「ゴクリ」
「……合格だ!」
「や……やった」
「わーい!」
歓喜する二人。
「あー。そうだ、言い忘れてたけど」
不意に、巨房が口を開いた。
「?」
「主人公ツトム隊員、高校でも、同じ学校なのでヨロシクね!」
「!? はっ、ハイ!(高校でも一緒!? ミノリちゃんの誘惑に、負けない様にしないと……)」
気を引き締める主人公だった。
その日の放課後――、
「『高校受験、合格しましたよ』っと」
主人公は尾坦子にメールを送った。数分後、
「ブーブー」
「!」
電話が鳴った。すかさず電話に出る
「もしもし……」
「もしもしツトム君? 合格おめでとう!」
「ありがとう、尾坦子さん」
「ツトム君、約束通り良いコトして、あ、げ、る」
「!?」
――、
「尾坦子さん、コレは……」
「ジュウ――」
「さあじゃんじゃん食べて」
主人公らは焼肉屋に来ていた。
「良いコトって、コレ?」
「そーよ、不服かしら?」
「いや、別に……(過激なコトするよりかは、気まずくなくていっか)」
「私ね……」
「!」
「将来、子供が欲しいって、最近になって考える様になったんだ」
「こ……子供?」
「前も話したかもだけど、私、患者さんはスキ。子供もスキ。おじいさんや、おばあさんもスキ。困っていたり、苦しんでいる人を助けることが大好きだったの。でもね……」
「?」
「ちょっと前から、ツトム君の事が一番大好きになって、ツトム君との子供にも会って見たくなって……」
「それで……?」
「ツトム君、18歳になったら、一緒に子供、作ろうね!」
「! ! ! ……は……、はひ」
思わず顔が赤くなる主人公。
「学生結婚になるのかな? 子供出来たら、結婚しようね。できちゃった婚みたいのはちょっと嫌だけど……」
「う……うん!」
二人はその後焼肉をたらふく食べた。
――、
「今日はありがとう。またね」
「またねー!」
主人公は家路を辿る。
(今から3年とちょっとか……。どんな生活をしているんだろう……?)
期待と不安を抱きながら、主人公は自宅に着いた。
「ただいまー」
「お帰りなさい。お風呂、湧いてるわよ」
「ありがとう、母さん」
その日の夜――、
主人公は日記を書いた。
『僕は高校生になるけど、これからも生活は続いていく。環境学部環境科で、もっと地球の環境を考え、守り、ゾムビー発生から教えられたこと、地球に住む者としての役割、残された者の責任と、真摯に向き合い、行動していく。まだ見ぬ、僕達の子供の為にも……』
回避とサイコとツトム外伝~後日談~ 完……?
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