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第八話 比べてとるモノ
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主人公ツトム、高校一年生の夏――、
『来月には終戦記念日を迎えようとする中、アジアで核保有国になる事を目指す国、×××がまたしても核実験をおこないました』
「! ――」
主人公宅――、
朝食を食べている主人公が、とあるニュースを耳にし、思わずハッとしその手が止まった。母がそれに気付き、心配そうに頬に手をやり、主人公に声を掛けた。
「またあの国が核実験ですって。恐いわぁ……。日本に核爆弾を撃ってこないかしら」
「無いとは言い切れないね、母さん」
「全く……、困ったもんだわ……! ツトム! ご飯早く食べて学校行かないと」
「そうだった! もごっ、ひっへひはーふ!」
主人公は急いで口いっぱいにトーストを頬張り、家を後にした。
一学期期末試験も近付くこの日、主人公は勉強のことよりも海外の核開発のニュースのコトで頭がいっぱいになっていた。
『環境汚染』――。
彼の脳裏にはその言葉が過った。
核開発の裏側において切っても切れないモノが放射性廃棄物だ。それに含まれる放射性物質は、触れると被ばくし、癌などの病気になってしまう。ある地域に核爆弾が投下されると、爆発や爆風で亡くなる者も居れば、その後の二次災害として、放射性物質により被ばくし、病魔に蝕まれ、じわじわと苦しんで亡くなる者も居る。二次災害は重大で、植物や海水にまで放射性物質は拡がり、自然や生き物たちの命を蝕んでいく。
(核の問題――、何かできるコトは……?)
主人公はそんな考え事をしながら、気付けば高校の自分のクラスの教室まで、足を運んでいた。
「主人公隊員!」
「!」
不意に、巨房が話し掛けてきた。巨房は、んーと、腕を組み神妙な面持ちで迫って来る。
「主人公隊員、朝っぱらからどうしたの? 浮かない顔して……?」
「ミノリちゃん……。はは、もう狩人は離職したから、隊員じゃないよ。うん、ちょっとね……」
主人公は話した。
国外の核実験のこと、放射線物質のこと、自然環境に関することを――。
「うーん、難しいけれど、環境学部に所属している身としては、見逃せない問題だね……」
「うん、そうなんだ……」
「あ!」
イスに座って話し合っていた二人だが、ここで巨房が、ガタンと大きな音を立てて立ち上がる。
「!?」
「主人公隊員! ゾムビー退治した時みたいに、何とかできないかなぁ!? リジェクトぉとか、グングニルぅとかで」
「何を言い出すかと思えば……。ん? ゾムビーの体液で人間が感染してゾムビーになる。放射性物質による被ばくで人間が病気になる。少し似てるかも」
「でしょでしょ!」
「でも……」
「!?」
「ゾムビーの体液を構成する物質と、放射性物質を構成する物質が一致しない限り無理だろうね。グングニルで消去! なんてことはできないんじゃないかな」
「うー、がっくしー」
フー、仕方ないなと、軽く溜め息をついた主人公は、落ち込んだ巨房の気を紛らわそうと、別の話題を振った。
「放射性物質と言えば、原子力発電所が稼働するとかって話が、近頃またニュースで流れてたね」「あー、そうだね。過去の原発事故の経験から、稼働さすなーって声が、原発近隣住民から上がってるね……あっ」
ここで巨房は、オリエンテーションでの担任教師が話していたことを思い出す。
(回想)
「皆さん、私達の社会は自然という基盤の上に成り立っています。より便利な社会を作るコト、豊かな自然を守るコト、この一方を追求すれば他方が犠牲になるため、これらの環境について考えるコトは、両者のバランスを考えるコト、であると言えます」
(回想終了)
「どうしたの? ミノリちゃん」
「ほら! オリエンテーションでセンセーが話していた、バランス! だよ。原子力発電所が無いと、電力が不足する地域もあるよ。放射性廃棄物発生を防ぐのを優先するか、安定した電力を供給するのを優先するか、だよ!」
「あっ!」
思わずハッとなる主人公。自然環境保護をとるか人々の暮らしを安定させるのをとるか、再び選択を迫られる。
「やっぱり難しい問題だね。この高校を卒業するころには答えを出せればいいね」
「だね!!」
主人公の言葉に、巨房は元気よく答えた。
その日の夜――、
主人公は仰向けでベッドに横たわり、天井を見上げていた。
(核物質との共生……か。スマシさんはこんな感じに悩んでたのかな? ゾムビーと人間の共生。まだ高校一年生の僕には難し過ぎて分からないや。でも――)
ガバッと主人公は起き上がり、机に向かった。
(卒業して、大学行くかは分からないけど、社会人になる頃には少しでも地球環境の保全の力になれる様、頑張ろう)
主人公はその日、日記を書いた。
『来月には終戦記念日を迎えようとする中、アジアで核保有国になる事を目指す国、×××がまたしても核実験をおこないました』
「! ――」
主人公宅――、
朝食を食べている主人公が、とあるニュースを耳にし、思わずハッとしその手が止まった。母がそれに気付き、心配そうに頬に手をやり、主人公に声を掛けた。
「またあの国が核実験ですって。恐いわぁ……。日本に核爆弾を撃ってこないかしら」
「無いとは言い切れないね、母さん」
「全く……、困ったもんだわ……! ツトム! ご飯早く食べて学校行かないと」
「そうだった! もごっ、ひっへひはーふ!」
主人公は急いで口いっぱいにトーストを頬張り、家を後にした。
一学期期末試験も近付くこの日、主人公は勉強のことよりも海外の核開発のニュースのコトで頭がいっぱいになっていた。
『環境汚染』――。
彼の脳裏にはその言葉が過った。
核開発の裏側において切っても切れないモノが放射性廃棄物だ。それに含まれる放射性物質は、触れると被ばくし、癌などの病気になってしまう。ある地域に核爆弾が投下されると、爆発や爆風で亡くなる者も居れば、その後の二次災害として、放射性物質により被ばくし、病魔に蝕まれ、じわじわと苦しんで亡くなる者も居る。二次災害は重大で、植物や海水にまで放射性物質は拡がり、自然や生き物たちの命を蝕んでいく。
(核の問題――、何かできるコトは……?)
主人公はそんな考え事をしながら、気付けば高校の自分のクラスの教室まで、足を運んでいた。
「主人公隊員!」
「!」
不意に、巨房が話し掛けてきた。巨房は、んーと、腕を組み神妙な面持ちで迫って来る。
「主人公隊員、朝っぱらからどうしたの? 浮かない顔して……?」
「ミノリちゃん……。はは、もう狩人は離職したから、隊員じゃないよ。うん、ちょっとね……」
主人公は話した。
国外の核実験のこと、放射線物質のこと、自然環境に関することを――。
「うーん、難しいけれど、環境学部に所属している身としては、見逃せない問題だね……」
「うん、そうなんだ……」
「あ!」
イスに座って話し合っていた二人だが、ここで巨房が、ガタンと大きな音を立てて立ち上がる。
「!?」
「主人公隊員! ゾムビー退治した時みたいに、何とかできないかなぁ!? リジェクトぉとか、グングニルぅとかで」
「何を言い出すかと思えば……。ん? ゾムビーの体液で人間が感染してゾムビーになる。放射性物質による被ばくで人間が病気になる。少し似てるかも」
「でしょでしょ!」
「でも……」
「!?」
「ゾムビーの体液を構成する物質と、放射性物質を構成する物質が一致しない限り無理だろうね。グングニルで消去! なんてことはできないんじゃないかな」
「うー、がっくしー」
フー、仕方ないなと、軽く溜め息をついた主人公は、落ち込んだ巨房の気を紛らわそうと、別の話題を振った。
「放射性物質と言えば、原子力発電所が稼働するとかって話が、近頃またニュースで流れてたね」「あー、そうだね。過去の原発事故の経験から、稼働さすなーって声が、原発近隣住民から上がってるね……あっ」
ここで巨房は、オリエンテーションでの担任教師が話していたことを思い出す。
(回想)
「皆さん、私達の社会は自然という基盤の上に成り立っています。より便利な社会を作るコト、豊かな自然を守るコト、この一方を追求すれば他方が犠牲になるため、これらの環境について考えるコトは、両者のバランスを考えるコト、であると言えます」
(回想終了)
「どうしたの? ミノリちゃん」
「ほら! オリエンテーションでセンセーが話していた、バランス! だよ。原子力発電所が無いと、電力が不足する地域もあるよ。放射性廃棄物発生を防ぐのを優先するか、安定した電力を供給するのを優先するか、だよ!」
「あっ!」
思わずハッとなる主人公。自然環境保護をとるか人々の暮らしを安定させるのをとるか、再び選択を迫られる。
「やっぱり難しい問題だね。この高校を卒業するころには答えを出せればいいね」
「だね!!」
主人公の言葉に、巨房は元気よく答えた。
その日の夜――、
主人公は仰向けでベッドに横たわり、天井を見上げていた。
(核物質との共生……か。スマシさんはこんな感じに悩んでたのかな? ゾムビーと人間の共生。まだ高校一年生の僕には難し過ぎて分からないや。でも――)
ガバッと主人公は起き上がり、机に向かった。
(卒業して、大学行くかは分からないけど、社会人になる頃には少しでも地球環境の保全の力になれる様、頑張ろう)
主人公はその日、日記を書いた。
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