回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

時田総司(いぶさん)

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第二十八話 グングニル

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「ハッ!!」



矢は大きさを増していく。主人公は手のひらを壁のゾムビーに向けた。

「行っけぇえええええええ!!!!」

光りの矢は壁のゾムビーに向かって放たれた。

「ゾ……」

壁のゾムビーは光り輝いて段々と消えていった。





「シュウウウン」





「やっ、やった……!!」



「カラン」



そこには二つの宝石のみが残った。

「ツトム君!!」

主人公に一番最初に近寄るのは尾坦子だった。抱きしめ、言う。

「ケガはない!?」

「おなか殴られちゃったから少しそこが……(今日は二回も殴られちゃったなぁ。でもその分二回も抱きしめられた)」

「ツトム!! よくやった」

次に労いの言葉を掛けたのは爆破だった。

「何だったんだ? さっきの技は?」

「自分でもよく分かりません。でも、大切な人を守りたいと、切に願った時体が輝いて……」

「今の技になったんだな?」

「はい」

爆破と主人公は会話を交わす。

「やったんダーイ……ってワー!!」

近寄ろうとする逃隠の首根っこを掴んだ身体は言う。

「先程発現した技でして、こちらの女性を元の姿、人間に戻す性質も持ち合わせております」

「何!? それは本当か?」

「はい……」

「……」

身体の言葉に、少し考え込む爆破。

「ところで隊長、セツナさんは?……」

「そうダイ! あのトサカ頭はどこダイ?」

何の気なしに主人公は問い、逃隠もそれに続く。

「…………」

爆破は首を横に振った。





――――、

「何……で……どうして?」

「くソ……!」

「……」

主人公は嘆き、逃隠は怒り、身体の顔は下を向いたままだった。

「あの……私は……」

「そうだ! 尾坦子さんは元に戻れたんだから、セツナさんだって……」

尾坦子の一声に、反応し、続く主人公。

「ツトム、見たところあの技は体力を存分に使う技だと見受けられる。それに、この方はゾムビー化した後も正気を保ち、人の為に動けた。しかしセツナは違ったんだ。私たちに刃を向け、攻撃してきた……恐らく、元には戻れなかったであろう(今は、そう言い聞かせるしかない……)」

「そんな……」

爆破の言葉に、ショックを隠せない主人公。爆破は続いて言う。

「子供じみた表現だが、ツトムとこの方との信頼関係と、思いが通じあってこその奇跡が生んだ産物だったのだろう」

(私って、特別だったのか……)

坦子は静かにそう思う。

「救護班!! 急いで!!」

ふと、隊員の声が聞こえ始めた。

「さて、……ラボはこの有様だ。上への報告からだな、私の仕事は――。今回はずさんな警備体制も惨事の原因となった……。ふぅ、皆は清掃班の手伝いでもやっていてくれ」

爆破はそう言うと、少しふらつきながらラボの中へ歩いていった。爆破は自責の念に駆られていた。自らの抜刀セツナへの処遇は、遺恨の念しか残らなかった。

(狩人部隊……それは一種の軍だ。……軍を保有する上での責任の所在は……私は――もう動かなくては)

「…………」

身体、逃隠、主人公は声も出せなかった。

(もう次の事をお考えになってらっしゃるのですね……隊長。その様な忽然とした態度を取られなくとも……あなたは釈然としない事くらい分かります)

(クッ……死んでモ死なねェようなヤツが)

(セツナ……さん)

ぼろぼろと涙を流す主人公。ラボは数時間かけて清掃された。しかし、施設は所々破壊され、隊員達はラボ設立以来最悪の死傷者を出した。



爆破スマシ――。

深夜、満月の下ライダースーツを身にまとい、バイクを走らせている。

(軍隊である私たちは常に死と隣り合わせ――。其れがどうした事か、その事実とは裏腹に、互いに傍らに居り、笑いあっている姿が当たり前のように思えていた。あの笑い合っている瞬間が、確かに私たちの日常だった。なのに――)



「何が隊長だ! 名倒れも甚だしい! クソっ!!」



爆破は自責の念に駆られていた。街道を少し飛ばし目に走る。

(喉が渇いた。何か買おう)

爆破はコンビニに立ち寄る事とした。

「いらっしゃいませ!」

店内に入る。

(コーヒー……は、深夜帯は体に悪いか……)

ペットボトルのほうじ茶を手に取る。

「いらっしゃいませ! こちらへどうぞ!」

店員に促される。ふと顔を見上げると、抜刀が接客を行っていた。

――様に見えた、爆破スマシには――――。

「セ……セツナ!?」

爆破は店員を凝視する。すると、抜刀によく似ただけで、店員は抜刀では無い、赤の他人であることが分かった。

「なっ、何でしょうか……?」

「いや、何でもない……これを下さい」

「ありがとうございましたー」

店を後にする。満月を見上げながら、爆破は思う。

(世間は狭くて世界は広い――か。……この国でもまだ行った事の無い場所がある。しかしそんな場所でも、似たような人間に出くわすのかもな。性格も、容姿も似た、人間に)



狩人〇×病院――、

身体、逃隠が戦闘でケガをし、入院していた。

爆破は見舞いを兼ねて、今後の活動予定を二人に話した。爆破は言う。

「例の石……あの所持権をアメリカに移そうと思う」

「!」

「!?」

驚愕する二人。

「すると、どうなるんだい?」

「ここからは予想の範疇の話になるが聞いてくれ。石のゾムビー、壁のゾムビー並びに全てのゾムビーの発生率を抑える事ができると予想されるんだ」

「!!」

「……本当ですか?」

身体が問う。

「ああ、あくまで予想になるがな」

「何故、そのような予想を……?」

更に身体が問う。

「例の石、紫に輝く宝石が、我々の手に渡ってから、ラボ周辺のゾムビー発生率が数倍に上がったのだ。その期間に我々の間での異変があると言えばあの石を手に入れた事意外に何もない。そこからこの様な予想をしたのだ。アメリカに石を移す事で、アメリカでのゾムビー発生率が上がるかも知れない。だが、今の我々の勢力と比べると、アメリカにある支部の方が戦力が上だ。あちらに少し頑張ってもらおう」

「ふ――。これで気兼ねなく休めますネ! 副隊長!!」

「ああ、助かった」

逃隠と身体が会話を交わす。爆破は締めに言う。

「私からは以上だ!!」



石の所有権をアメリカに移す――。

その作戦は主人公にも伝えられた。そして、主人公に発現した新たな超能力の名前を、爆破は『グングニル』と名付けた。



狩人ラボ、爆破自室――。

「よし!」

荷造りしていて、今終えた様子の爆破。

(明日はここを4時半にでる。早く寝なければ)

爆破もこれから床に就く。



――翌朝、未明。

爆破は着替えを済ませたところだった。

「よし、――行くぞ」

今回の旅は爆破の他に3名の狩人隊員が加わり、合計4名でのものとなる。羽田空港に着いた。まず、搭乗手続き、チェックインを行う。団体名をサラサラと書く爆破。筆跡に迷いがない。続いて保安検査、セキュリティチェックを行う。爆破が不安視していた、例の石が引っかかった。専門家が呼び出され、チェックを行い、なんとか審査が通った。続いて税関検査、出国審査が行われ、ようやく搭乗口まで辿り着くことができた。数分後、爆破を含む4名は羽田空港の国際線に搭乗することができた。ここから約9時間かけてサンフランシスコへ飛ぶ。爆破は席に座りアイマスクをして、仮眠を摂る様だ。
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