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第一節 消失
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「ガッ! ……ドガッ‼」
「ぐあッ‼」
身体が主人公を殴り飛ばした。主人公はそのまま壁にぶつかる。
「見損なったぞ! ツトム‼」
身体は悔しそうに言う。一行はインド洋近海から陸地に移動し、現在はスリランカの軍事施設に駐在させてもらう事となった。
「絶対に元の御姿に戻すんじゃなかったのか⁉」
身体は涙ながらに言う。
「ハ……ハイ。だって、絶対元に戻せるって信じてたから……」
主人公は腹部を押さえながら言う。
「ほ……他にどうすれば良かったんですか⁉」
「! ……」
言葉が出ない身体。
「畜生ゥ」
逃隠がぼそっと呟いた。
そこへ――、
「副隊長、hunter.N州支部から連絡が……」
隊員が通信機を持って近付いて来た。
「……よこせ」
それを手に取る身体。
「How are you! Everyone」
「……」
こちらと明らかに空気の違う、そんな声が聞こえて来た。
『……どうしましたか?』
英語で問う身体。
『今回のミッション、成功に終わり本当にお疲れ様デース!』
N州支部の者からの労いの言葉も、身体には届かなかった。
『ミッション、成功ですか? そちらのエース格の隊員と、こちらの隊長がやられたというのに……?』
身体は感情的になって問う。
『oh! 今回のミッションは、宇宙に出てゾムビー達を倒すという前人未到のミッションデース。成功確率は、五分五分と見ていマシタ。それが、ゾムビー達を見事、撤退させ、犠牲者は2名と軽微なモノで済みマシター。成功と見て良いデショウ』
答える支部の者に対し、俯く身体。
「クッ(隊長が居なければ、今回のミッションは到底成功しえなかっただろう。それなのに! 犠牲者は2名と軽微なモノだと……? あのお方の死はそんな言葉で片付けられてしまうのか……‼)」
『どうか、しマシタか?』
『……いいえ、何でもありません』
感情を押し殺して身体は答えた。
『それでは、今後の活動にツイテ、話しマース。狩人部隊はスリランカから直帰で帰国してもらいマース。こちらのhunter部隊はそこからN州へと帰国させマース』
『ハッ!』
N州支部の者に対し敬礼する身体。
『……』
『……』
英語での会話が続く中、主人公は一人、考え事をしていた。
(あの時――)
(回想)
爆破の体は、みるみるうちに溶け出すかのように小さくなっていった。
「そっ、そんな⁉ スマシさん‼」
主人公は叫ぶ。
「……」
爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。
(回想終了)
(スマシさん……何であんな言葉を……?)
「ム……ツトム」
顔を上げる主人公。そこには身体が居た。
「ツトム! k県に帰るぞ……。コロンボまで移動だ……」
コロンボから成田空港への便を利用する一行。チェックインを済ませ。搭乗して行く。その誰もが俯いていた。飛行機内、主人公は寝ることもなく、機内食も食べず、景色を見る事さえせず、自分の犯した行動を悔やんでいた。一行は成田空港へ到着した。
「ひとまずここで解散だな……」
「ハッ!」
身体に敬礼する隊員達と逃隠。主人公は下を向いたままだった。
(どうしたんだ、ツトム……と言いたいところだが、無理もない、か……せめてそっとしておいてやろう)
電車に乗る主人公。虚ろな目をしている。
「ガタンガタン」
(スマシ……さん……)
主人公は自宅へと到着した。
「ただいま……」
「タッタッタッタッタッタッタ」
「ツトム!」
母が家の奥から走ってきた。
「ひしっ!」
「大丈夫? ケガは無い⁉」
主人公を抱きしめる母。
「あ……うん」
力無く答える主人公。母は主人公と顔を合わせる。
「どうしたの? 元気が無いじゃない」
「あ、……ちょっと、ね」
曖昧に返す主人公。
「まぁいいわ、ケガはしていないみたいだし。ご飯できてるわよ、入って」
「うん……」
その日、主人公は夕食を食べたが、半分以上残してしまった。自室に居る主人公。
「どうすれば良かったんだろう……ねぇ、どうすれば良かったの……? 誰か、答えてよ……」
主人公はその晩、一睡もできなかった。
翌朝――、
「ツトム――! 朝ごはんよ――‼」
一階へと降りていく主人公。
「! ツトム! 何? そのクマは。酷い顔よ」
主人公は眠れなかった所為か、目にクマが出来ていた。
「うん……母さん、今日、学校は休むよ」
力無く呟く主人公。
「何を言って……? まぁそんな体調じゃあ仕方ないわね。丁度今日は金曜日だし、この3日間で体調を戻すようにね」
「うん……母さん」
その日、主人公はトイレ、食事、風呂以外では一回も部屋から出ずに引きこもっていた。「スマシさん……」
(回想)
「危なかったなぁ、少年。」
「ツカ……ツカ……ツカ」
何者かが足音を立てながら近づいてくる。
「しかしもう安心だ。私は爆破スマシ。政府公認部隊・狩人の隊長だ!」
「少年、まだ名前を聞いていなかったな。名は何と言うのだ?」
問う爆破。答える主人公。
「ツトム。主人公ツトムです」
「うん、いい名前だ。ツトム、来てほしいところがあるんだ」
「ツトム、スポーツでも何でも、上達するときは反復して行っていく中、少しずつ上手くなるのではない。コツを掴んだとき急成長するものだ! 今の感覚を忘れるなよ」
「…………」
「…………」
「…………」
爆破の、数分の沈黙が二人を襲う。暫くして爆破は口を開いた。
「……ダメだ、書き直し」
(回想終了)
「スマシさん……!」
(回想)
「私事で本当に悪いのだが、見た所、相手は1体。暫く、新手は現れそうにない。そこで、自分の実力を確かめておこうと思ってな」
「サケル、セツナ。下がっていてくれないか? 私一人でどれだけ通用するか、試してみる。だが、万が一危なくなったら、頼むぞ」
「しー」
主人公は、二人に向かって人差し指を立てる。
「ん?」
「ア……!」
二人は爆破の様子に気付く。
「寝てらぁ」
「隊長っテ、こうして見ると結構可愛いんだナ」
「店を出る時までは、寝かしておいてあげよう」
三人は暫く爆破の寝顔を見てから、かにを満喫した。
(回想終了)
「スマシさん……‼」
(回想)
主人公の両肩に手をやり、爆破は言う。
「ツトム、お前にだけは言っておきたい事があってな、月並みの言葉で済まないが、聞いてくれ、ツトム。人は失敗や過ちを犯す生き物だ。しかも、何度でも、何回も。しかしその度に反省してまた前を向いて生きていけるんだ。だからこそ人間は正しくて清い、それだからこそ人生はおもしろい。私からの最後の……いや、最期の言葉だ」
「……」
爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。
(回想終了)
「スマシさん……‼ 何であの時、『ありがとう』なんて言葉を……⁉」
「ガッ!」
壁を殴る主人公。拳には少し血が滲んだ。金曜日、土曜日と主人公は変わらず塞ぎ込んだままだった。
「はー」
溜息をつく母。
(大丈夫かしら、ツトム……)
二階を見上げる。
そして――、
日曜日が来た。昼、昼食を食べ終えたばかりの時だった。
「ブー、ブー」
主人公の携帯が鳴る。
「!」
主人公は自室でそれに気付いた。尾坦子からのメールだった。
「『アメリカから、もうそろそろ帰った頃かな? 返信、待ってます』……! 尾坦子さん‼」
咄嗟に返信する主人公。
「『アメリカからは二日前に帰りました』……と」
すると――、
「ブー、ブー、ブー、」
電話が鳴り始めた。尾坦子からの着信電話だった。
「ぐあッ‼」
身体が主人公を殴り飛ばした。主人公はそのまま壁にぶつかる。
「見損なったぞ! ツトム‼」
身体は悔しそうに言う。一行はインド洋近海から陸地に移動し、現在はスリランカの軍事施設に駐在させてもらう事となった。
「絶対に元の御姿に戻すんじゃなかったのか⁉」
身体は涙ながらに言う。
「ハ……ハイ。だって、絶対元に戻せるって信じてたから……」
主人公は腹部を押さえながら言う。
「ほ……他にどうすれば良かったんですか⁉」
「! ……」
言葉が出ない身体。
「畜生ゥ」
逃隠がぼそっと呟いた。
そこへ――、
「副隊長、hunter.N州支部から連絡が……」
隊員が通信機を持って近付いて来た。
「……よこせ」
それを手に取る身体。
「How are you! Everyone」
「……」
こちらと明らかに空気の違う、そんな声が聞こえて来た。
『……どうしましたか?』
英語で問う身体。
『今回のミッション、成功に終わり本当にお疲れ様デース!』
N州支部の者からの労いの言葉も、身体には届かなかった。
『ミッション、成功ですか? そちらのエース格の隊員と、こちらの隊長がやられたというのに……?』
身体は感情的になって問う。
『oh! 今回のミッションは、宇宙に出てゾムビー達を倒すという前人未到のミッションデース。成功確率は、五分五分と見ていマシタ。それが、ゾムビー達を見事、撤退させ、犠牲者は2名と軽微なモノで済みマシター。成功と見て良いデショウ』
答える支部の者に対し、俯く身体。
「クッ(隊長が居なければ、今回のミッションは到底成功しえなかっただろう。それなのに! 犠牲者は2名と軽微なモノだと……? あのお方の死はそんな言葉で片付けられてしまうのか……‼)」
『どうか、しマシタか?』
『……いいえ、何でもありません』
感情を押し殺して身体は答えた。
『それでは、今後の活動にツイテ、話しマース。狩人部隊はスリランカから直帰で帰国してもらいマース。こちらのhunter部隊はそこからN州へと帰国させマース』
『ハッ!』
N州支部の者に対し敬礼する身体。
『……』
『……』
英語での会話が続く中、主人公は一人、考え事をしていた。
(あの時――)
(回想)
爆破の体は、みるみるうちに溶け出すかのように小さくなっていった。
「そっ、そんな⁉ スマシさん‼」
主人公は叫ぶ。
「……」
爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。
(回想終了)
(スマシさん……何であんな言葉を……?)
「ム……ツトム」
顔を上げる主人公。そこには身体が居た。
「ツトム! k県に帰るぞ……。コロンボまで移動だ……」
コロンボから成田空港への便を利用する一行。チェックインを済ませ。搭乗して行く。その誰もが俯いていた。飛行機内、主人公は寝ることもなく、機内食も食べず、景色を見る事さえせず、自分の犯した行動を悔やんでいた。一行は成田空港へ到着した。
「ひとまずここで解散だな……」
「ハッ!」
身体に敬礼する隊員達と逃隠。主人公は下を向いたままだった。
(どうしたんだ、ツトム……と言いたいところだが、無理もない、か……せめてそっとしておいてやろう)
電車に乗る主人公。虚ろな目をしている。
「ガタンガタン」
(スマシ……さん……)
主人公は自宅へと到着した。
「ただいま……」
「タッタッタッタッタッタッタ」
「ツトム!」
母が家の奥から走ってきた。
「ひしっ!」
「大丈夫? ケガは無い⁉」
主人公を抱きしめる母。
「あ……うん」
力無く答える主人公。母は主人公と顔を合わせる。
「どうしたの? 元気が無いじゃない」
「あ、……ちょっと、ね」
曖昧に返す主人公。
「まぁいいわ、ケガはしていないみたいだし。ご飯できてるわよ、入って」
「うん……」
その日、主人公は夕食を食べたが、半分以上残してしまった。自室に居る主人公。
「どうすれば良かったんだろう……ねぇ、どうすれば良かったの……? 誰か、答えてよ……」
主人公はその晩、一睡もできなかった。
翌朝――、
「ツトム――! 朝ごはんよ――‼」
一階へと降りていく主人公。
「! ツトム! 何? そのクマは。酷い顔よ」
主人公は眠れなかった所為か、目にクマが出来ていた。
「うん……母さん、今日、学校は休むよ」
力無く呟く主人公。
「何を言って……? まぁそんな体調じゃあ仕方ないわね。丁度今日は金曜日だし、この3日間で体調を戻すようにね」
「うん……母さん」
その日、主人公はトイレ、食事、風呂以外では一回も部屋から出ずに引きこもっていた。「スマシさん……」
(回想)
「危なかったなぁ、少年。」
「ツカ……ツカ……ツカ」
何者かが足音を立てながら近づいてくる。
「しかしもう安心だ。私は爆破スマシ。政府公認部隊・狩人の隊長だ!」
「少年、まだ名前を聞いていなかったな。名は何と言うのだ?」
問う爆破。答える主人公。
「ツトム。主人公ツトムです」
「うん、いい名前だ。ツトム、来てほしいところがあるんだ」
「ツトム、スポーツでも何でも、上達するときは反復して行っていく中、少しずつ上手くなるのではない。コツを掴んだとき急成長するものだ! 今の感覚を忘れるなよ」
「…………」
「…………」
「…………」
爆破の、数分の沈黙が二人を襲う。暫くして爆破は口を開いた。
「……ダメだ、書き直し」
(回想終了)
「スマシさん……!」
(回想)
「私事で本当に悪いのだが、見た所、相手は1体。暫く、新手は現れそうにない。そこで、自分の実力を確かめておこうと思ってな」
「サケル、セツナ。下がっていてくれないか? 私一人でどれだけ通用するか、試してみる。だが、万が一危なくなったら、頼むぞ」
「しー」
主人公は、二人に向かって人差し指を立てる。
「ん?」
「ア……!」
二人は爆破の様子に気付く。
「寝てらぁ」
「隊長っテ、こうして見ると結構可愛いんだナ」
「店を出る時までは、寝かしておいてあげよう」
三人は暫く爆破の寝顔を見てから、かにを満喫した。
(回想終了)
「スマシさん……‼」
(回想)
主人公の両肩に手をやり、爆破は言う。
「ツトム、お前にだけは言っておきたい事があってな、月並みの言葉で済まないが、聞いてくれ、ツトム。人は失敗や過ちを犯す生き物だ。しかも、何度でも、何回も。しかしその度に反省してまた前を向いて生きていけるんだ。だからこそ人間は正しくて清い、それだからこそ人生はおもしろい。私からの最後の……いや、最期の言葉だ」
「……」
爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。
(回想終了)
「スマシさん……‼ 何であの時、『ありがとう』なんて言葉を……⁉」
「ガッ!」
壁を殴る主人公。拳には少し血が滲んだ。金曜日、土曜日と主人公は変わらず塞ぎ込んだままだった。
「はー」
溜息をつく母。
(大丈夫かしら、ツトム……)
二階を見上げる。
そして――、
日曜日が来た。昼、昼食を食べ終えたばかりの時だった。
「ブー、ブー」
主人公の携帯が鳴る。
「!」
主人公は自室でそれに気付いた。尾坦子からのメールだった。
「『アメリカから、もうそろそろ帰った頃かな? 返信、待ってます』……! 尾坦子さん‼」
咄嗟に返信する主人公。
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すると――、
「ブー、ブー、ブー、」
電話が鳴り始めた。尾坦子からの着信電話だった。
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