回避とサイコとツトム_第六章 終幕

時田総司(いぶさん)

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第十二節 パンタナルのゾムビー

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「尾坦子……さん……?」

主人公は豆鉄砲を食らったような顔になっていた。

「あのさぁ、ツトム君、また何の相談も無しに海外へ出てっちゃったの? お母さんから聞いたよ?」

不機嫌な表情が伝わってくるように尾坦子は言う。

「あ……あのさっ、心配かけない様に敢えて言わなかっていうか……」

「何にも相談しない方が心配しますぅ!」

「はっ! はひ」

誤魔化す主人公に、きつい口調で言う尾坦子。返す言葉が見つからない主人公。



「……」

「……」



長い沈黙が二人を襲う。



「……これだけは約束して!」

先に口を開いたのは尾坦子だった。

「え!?」



「ケガ……しないでね」



「う、うん……」

「じゃあね! バイバイ!」

「あ……バイバイ」

「プツン、プープープー」

電話は終わった様だった。

「……」

だんまりの主人公。その胸中は?

(心配してもらってる心配してもらってる心配してもらってる心配してもらってる心配してもらってる心配してもらってる!!!!)

赤面する主人公だったが、

「ヒュ―ヒュー、お熱いネー」

冷やかしの言葉を掛ける逃隠。快く無かった様だ。その夜、主人公は興奮の余り中々寝付けなかった。





翌朝――、



「朝食が済んだら、馬に乗って探索をして行くぞ」

身体の声で隊は引き締まる。今日は乗馬しての探索になる様だ。一人ひとり、乗馬して行く。

(馬に乗るなんて、狩人に入隊してからいろんな経験してるなぁ。まぁ、ロケットに乗るよりかは、珍しくないか……)

主人公はそっと、静かに思うのだった。

「おー! 何だか揺れるんだい!」

逃隠は初めての乗馬に、ややはしゃぎ気味だった。



乗馬してでの探索には理由があった。

川とまではいかない浅い水辺の、ぬかるんだ場所での移動手段として、カヌーや徒歩よりもメリットがあるからだ。パンタナルの馬は何百年も人間に飼われてこの環境に順応している為、安心して身を任せることができる。浅い水辺を、乗馬した一行が進んで行く。

すると――、

キラリと光る物体が。例の紫色の石である。手持ちの石をかざして近付いて行く。地面にある石の、すぐ近くまでhunter.T州支部の隊員が近寄った。

「Wow」

隊員が馬から降りて石に手を伸ばした、





瞬間――、



「ゾゾォ!!!」

「ゾォ!!!」

「ゾゾォ!!!」

「ゾムゥ!!!」

地面から、ゾムビーが4体現れた。



「何!?」

「あぁ!」



身体と主人公も完全に虚を突かれた。



「Oh! No!」



ゾムビーに囲まれる隊員。バシャア、と顔面目掛けてゾムビーの体液が襲い掛かる。



「Oh……ゾ……ゾム」



隊員はゾムビー化した。

更に、近くに居た馬も、ゾムビーの体液を足に浴びたらしく、段々とゾムビー化していった。

「ヒヒーン……ヒヒ……ゾヒ……ゾゾ」



(マズい!)



身体は焦った表情を見せながら思いを巡らせる。

(ゾムビーの動きを鈍らせる機器は、ここには移動手段が無く持ち寄れなかった! 相手を捕獲するのは困難を要する! それに!)

「ゾム……」

「ゾゾ……」

(今、ゾムビー化した者達はどうする? 捕獲して、宇宙に送る必要があるのか!?)





「副隊長! 指示を!」





主人公が叫ぶ。

「くっ」

表情を歪ませる身体。



(そうだ!)



ハッと何か思い付く身体。

「ゾムビーの親玉! 聞いているか!? ゾムビー達が攻撃をして来ない様に指示するんじゃあ無かったのか!?」

「……」

身体の呼びかけも虚しく、親玉からの“声”はこちらへ返って来ない。

「今攻撃してきているゾムビーを退治しても良いのか!?」

続けて身体は声を上げる。



しかし、

「……」

またもや、声は返って来ない。

「副隊長! 何を!?」

主人公は無謀とも言える身体の行動を見て動揺した。

「クッ(“声”は届かないのか!? 早くしなければ残りの隊員達も犠牲になってしまう)」

「ゾゾォ……」

「ゾム……」

身体の不安通り、ゾムビー達はこちらへ向かって襲い掛かって来る。そんな中、身体の脳裏に、爆破との記憶が蘇る。



(回想)

「まずは副隊長」

「は、ハイ……」

反応する身体。

「今まで私の右腕として良くついてきてくれたな、ありがとう」

「滅相もございません!」

「私にもしもの事があれば、この部隊を仕切ってくれるのはお前だ。宜しく頼むぞ」

「は……ハイ‼」

(回想終了)



(そうだ……俺は……!)

満を持して身体が口を開く。

「皆! 聞いてくれ! 現時刻を以て、ゾムビー化した者のみを攻撃対象とする。元々ゾムビーだった敵は、特殊素材の袋で捕獲する! 分かったな!?」



「ラジャー!」



狩人部隊は、身体の命令に従い動き出す。ゾムビー化したhunter.T支部の者、並びにその者が乗っていた馬に銃口を向ける。





そして――、







「タタタタタタタタ」







発砲を開始した。

「ゾ……」

「ゾム……」

2体のゾムビーは一瞬にしてハチの巣になった。

「次だ!」

身体の命令で、袋を用意する狩人隊員。二人がかりで袋の両端を持ち、バサッと一気に元々ゾムビーだった1体のゾムビーに被せた。

「ゾゾォ……?」

多少、暴れるゾムビーだったが袋から出てくることは無かった。

「次は紐だ! 括り付けろ!」

紐で袋を括り付ける隊員達。難なく1体のゾムビーを捕獲する事ができた。

「残りの3体も、同様に捕獲するんだ!」

身体がはつらつと命令を下す。

「ラジャー」

答える隊員達。まず近くに居た2体から、先程と同様に1体につき二人がかりで捕獲していく。

この時、1体には狩人部隊、もう1体にはhunter.T州支部の隊員が担当して捕獲に取り掛かった。

狩人部隊は順調に作業をこなしていく。ゾムビーに袋を被せ、紐で括り付けた。身体に報告を行う狩人隊員。

「こちら、捕獲完了しました」

「よし!」

身体も報告に答える。そして英語でT州支部の隊員に問いかけをする。

『そちらはどうだ?』



その瞬間――、



ドッと鈍い音と共にT州支部の隊員一人が吹き飛ばされていった。

「バシャッバシャッ!」

湿った地面を二度三度跳ねるT州支部の隊員。

(このパワーは、まさか……)

咄嗟に、ゾムビーに対して石をサッとかざす身体。すると、ゾムビーの身体の一部から、身体が持っている石と呼応するかのように、紫色の光りが差し込んできた。

(石の……か……!)

『おい! 一人ではゾムビーを捕獲できない! ゾムビー化させられる!』

T州支部の隊員は、恐れおののきながら叫ぶ。それに対し、身体は

『一旦、引いてくれここは俺達に任せろ!』

冷静に言葉を返した。

「サケル、行くぞ……石のゾムビーだ。死なない程度に攻撃するぞ」

「はっ! ……あいあいサー」

身体と逃隠は石のゾムビーを捕獲するべく、言葉を交わした。ダッと地面を蹴り、走り出す二人。先に攻撃を仕掛けるのは身体だった。渾身の力を込めて右ストレートを繰り出す。



が――、





「ドムゥン」





石のゾムビーはその体質で衝撃をいなした。

「クッ、サケル!」

「だい!」

身体の陰から飛び出てくる逃隠。そこから自分の身体の半分よりは長い様に見える一振りの刀で、斬撃を繰り出した!
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