回避とサイコとツトム_第三章 旅先珍道中

時田総司(いぶさん)

文字の大きさ
1 / 15

第一節 兆し

しおりを挟む
「えー、4X+Y=3とありますが、こちらの式に先程出したXの値を代入し……」



平々凡々中学、主人公と逃隠の教室の授業風景である。数学の授業。主人公は真面目に教師の言葉に耳を傾けている。その後ろの席、逃隠はがっつりと教科書を盾にするように熟睡している。

(なるほど、式を変形するのか……移項したり、式全体を四則演算……代入も間違えて入れないようにしないと……)

と、そこへ



「ブ――、ブ――、ブ――、」



「!」

「⁉」



主人公、逃隠の携帯が鳴る。ハッと気付く主人公。逃隠も目を覚ます。



「すみません!」



バッと手を上げる主人公。

「ん? 何だ、ツトム」

「ちょっと頭がボーっとして……風邪みたいなので早退します」

教師に嘘をつく主人公。

「あー、そうかそうか。しっかり休めよ」

すっかり騙される教師。

「失礼しまーす」

教室を出る主人公。



「ハイッ! ハイハイ!」



逃隠も手を上げる。

「何だ? サケル」

「俺モ体調が悪いんデ早退しまース」

あからさまにバレそうな嘘をつく逃隠。

「本当かぁー? サケル」



「あははははは!」



教室が少し賑やかになる。

「……まぁいい、信じてやる。気を付けて帰れよ」

「あざッス! 失礼しまッス!」

逃隠は教室を出る。

(……元気そうに見えるがなぁ……)

教師は少し疑問に思う。



 廊下を走る主人公。

「もしもし! ツトムです。今、教室を出ました。」

「ああ、ツトムか。ゾムビーが発生した。場所はY市T町2丁目の、とあるオフィス街だ。今、そちらへ車を向かわせている」

爆破からの、任務の電話だった。

「ハイ! 校門付近で待機します」

「ああ。じゃあ、また後でな」



「プー、プー、プー」



電話は切れた。



「ツトムゥ!」



後ろから逃隠が走ってきた。二人で階段を駆け下りる。

「ゾムビーが発生したのカ⁉」

「うん、T町のオフィス街でだって。移送用の車がこっちに来るから……」

走りながら会話を交わす逃隠と主人公。





――1時間後、T町2丁目、オフィス街にて。

「キキー……」

3台の車が道路の端に止まる。各車から、爆破、身体、逃隠、抜刀、狩人隊員、そして、主人公が姿を現す。

「この路地の奥、ゴミ箱が数個置いてある場所に発生したと、連絡があった。住民の避難は完了しているらしい。行くぞ!」

爆破が指示を出す。

「ラジャー!」

一同、応える。



「ザッ」

部隊が現場に到着する。



「ゾ?」

「ゾ?」

「ゾゾ?」



そこには3体のゾムビーが存在していた。ごみ箱を開け、カラスや猫の様にゴミをあさっている最中だったようだ。

「現れたな……」

爆破は言う。



「おぉっと」

「!」



誰かが爆破の肩に手をやる。

「ここは俺にお任せあれ……ってな!」

抜刀セツナだった。そのまま身を乗り出した抜刀は数歩歩き、ゾムビーと対峙する。

「ハッ」

右手で左腰から刀を抜く動作を行う抜刀。右腕には、光り輝く超能力の刀が。次に、抜刀は剣道で言う正眼の構えをとった。2秒後、真上に刀を振り上げる。

「だりゃっ!」

刀を振り下ろす抜刀。ゾムビーは縦に真っ二つになる。

「ズズズ」

崩れ落ちるゾムビー。





「ゾ!」

「⁉」





斜め後ろに居たゾムビーが抜刀に襲い掛かる。



「ゾムバァアア」



体液を吐き出してくるゾムビー。

「おっと!」

タンッと後ろに飛び、それを避ける抜刀。

「ジュウウウウ」

地面が溶け出す。

「うはぁ! 危ねぇ危ねぇ」



「バースト」

「ボボンッ!」



先程抜刀が真っ二つにしたゾムビーの死骸を爆破が爆破する。

「やれやれ、威勢がいいのは最初だけか? それに私に後掃除をさせるとは」

少し頭を掻きながら言う爆破。

「こぉんな狭い場所じゃあ、俺の刀を振り回せねぇっての! ってぇコトで、チェンジチェンジ! 選手交代な!」

振り向いて超能力の刀を消し、部隊の方へ歩く抜刀。ため息をつきながら言う爆破。

「フゥ――、仕方ないな。ツトム、行けるか?」

「ハイ! やります!」

主人公がゾムビー2体と対峙する。

「ゾ?」

「ゾ?」

「……行くぞ! リジェクトォオオオ‼」



「ドシャアアア」



ゾムビー達は2体とも、リジェクトの餌食となった。

(やった! 2体同時に倒せた。威力も上がってきているな)

主人公は笑みを溢す。

「お見事!」

称賛の言葉を口にする爆破。

(……今回は俺の出番は無し、か……)

(相変わらズ、やってくれるゼ! ツトム‼)

身体、逃隠がそれぞれに思う。

「よし! 後は周辺の探索だ! 他にゾムビーが発生していないか、隈なく探せ!」

爆破が指揮を飛ばす。――1時間半、周囲の探索が行われたが、他にゾムビーは発生していなかった。





「ご苦労! サケル! ツトム! 学校があったのにも関わらず、済まなかったな」

爆破は二人に言う。

「いいえ」

「余裕だゼ!」

照れ臭そうな主人公。自信満々の逃隠。

「それにセツナ! バイトの方は大丈夫だったのか?」

爆破が抜刀に問う。

「まぁ何とかなりますよ。もしもの時は狩人の方で雇って下せぇ」

抜刀は答える。

「そうだな。考えておく」

至って真剣な爆破。

「これからもこのチームでゾムビー達と戦っていく。各々、協力する姿勢を忘れないように! では、帰るぞ!」

爆破の言葉で、今回の任務は締めくくられた。





――狩人ラボ、会議室。爆破が男達の前で報告をしている。

「ここ1カ月間、抜刀セツナ隊員の加入もあったせいか、この狩人・関東支部は隊員の内、一人の犠牲者も出す事なく活動を続けられております」



「……順調だな」

「この調子を保ってほしいものだ」



感心の声が会議室に漏れる。



「しかし、気掛かりな事があります」



「⁉」



爆破の言葉に、静まり返る室内。

「例のゾムビーの細胞に似た性質の宝石が我々の手に渡ってから、ここK県でのゾムビー発生率がぐっと高まっています。他の九州支部や関西支部等のゾムビー発生事例の報告書を見ると、それは火を見るよりも明らかです」



「そんな事が……」

「あの宝石と何か関係があるのか……?」



ざわつき始める室内。



「今後更に、宝石についての研究を進めると同時に、ゾムビー発生との因果関係についても調査を行っていきます」





――爆破のオフィスルーム。爆破が、何か資料を手に取り、椅子に腰かけている。

(やはり、おかしい。他の支部と比べて、差が大きいところでは4倍近くまでゾムビー発生率が増してきている。前年度の関東支部と比べても2.5倍……。ゾムビーの能力を高める宝石……。その宝石をゾムビーは取り返そうとしている……? 何にせよ、あの宝石はゾムビー撲滅のカギとなってくるな……)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...