2 / 47
第2話 多田信忠は飛べないけれど唯の豚ではない
しおりを挟む
私の名前は多田信忠。
54歳のただのおっさんだが、ただの豚ではない。「ただのぶただ」だ。
子供の頃からこの名前でよくからかわれたものなのでもう慣れっこではある。
紅な豚が公開されたのがちょうど最初の会社に入社した頃だったので、いろんな人にいじられたのを今でも思い出して腹が減る。ぐう。
私は嫌なことを忘れられない性質だ。自分では忘れたいとは思っている。逆に楽しかったことはよく忘れる。残念だ。
そんなことはどうでもいい。
ひょんなことから、この「コーポ大家」を譲り受けて、管理人としての日々を過ごし始めたところだ。
(。´・ω・)ん?
そう、元・大家の大家さんから「コーポ大家」を譲り受けたんです。
名前で遊んでるわけではない。厳然たる事実をそのままお伝えしているだけなのでご容赦願いたい。
今は、缶ビール片手にバルコニーに出てきたところだ。
既に月食が進行していてそろそろ皆既月食になろうかという状態だ。
そう、今日は2022年の11月8日である。
日本では442年ぶりとなる皆既月食と惑星食が同時に見られるという貴重な天体ショーが見られる日だ。
この日を逃すと次に同様の現象が日本で見られるのは322年後の2344年と予想されているので、海外旅行をしない私にとっては唯一無二の機会だ。
ちょっとした双眼鏡も購入して万全の態勢で夜を待った。
天気も大変よろしくて、この東京でもはっきりと月が欠けていく様子が観察できている。
皆既月食になると赤黒い月が地球を照らすのが、何とも言えず神秘的だ。
この後、天王星がこの赤黒い月の裏に隠れてしまう。
天王星と言えば、自転軸が極端に傾いていることで知られている。地球が23度ほど公転面に対して傾いているのに対して天王星は約98度、つまり公転面に対してほぼ横倒しの状態だ。なので、84年の公転周期のこの惑星の極点では42年間の昼と夜が交互に訪れることになる。
なんとも不思議な惑星だ。
その天王星が今まさに月の裏に隠れようとしている。
その時を見逃すまいと双眼鏡を覗き込む。
今、日本中で月食は同時刻にほぼ同じ食の状態が見えているが、天王星食は場所によって結構違う。
例えば、東京では20:41ごろに天王星が月の裏に隠れ始めるが、京都では20:32、福岡では20:22ごろといった具合だ。
おおっ、弱い光の天王星が、今、月に食べられましたー。ぱちぱちぱち。
一分ほど余韻に浸りながら双眼鏡を覗き続けていると、どこからともなく声が響いた。
『ダンジョンを初期設定にしました。変更する場合はメニューから実施してください。』
「はい?」
今、どこから声がした?
周りを見てもバルコニーに面した部屋の中の白面以外誰もいない。
白面は大家さんが飼っていたメンフクロウのオスだ。
大家さんと一緒にお話していた時から私にも慣れてくれていたので、そのまま私が飼うことにした。
真っ白でとても綺麗だ。
まさか、白面が喋った…わけないよな。
しかも、ダンジョン?初期設定?
何、そのゲームみたいなの。
住人の誰かが大音量でゲームでもしてるのかな。
しばらく様子を伺ってみたが、さっきのような声は聞こえてこなかった。
空耳、か?
幻聴とかやだなあ。薬の影響かなぁ。
多発性骨髄腫の治療で今はちょっと強めの薬を飲んでたりする。
週一で飲む薬は昨日服用していてその影響で昼ぐらいまで気分が優れなかった。
『スキルを獲得しました。スキルはステータスで確認できます。』
「はい?」
また聞こえた。
えー、なになにドッキリ?
昔からテレビっ子だった私はヒーローものやアニメの類はよく見ている。
この歳になった今でもリアルタイムで見るのは辛いが、録画して昼間の空き時間とかに見てたりする。
昔の悪の組織との対決とは違い、最近は転生ものや異世界ものが多いということもちゃんと知っている。
その中でよく使われているのが、ステータスで自分の能力値やスキルを確認できるということも。
これはあれか。
住人の誰かが悪戯していて、私が調子に乗って例の言葉を言おうものなら笑ってやろうというドッキリを仕掛けているのだろう。
仕方がない、こんなことをしそうなのは103のクリスか、203の尾茂さんだろうけど付き合ってあげるとしよう。
「ステータスオープン。」
かくして、私の脳裏にステータスが表示された。マジか。
54歳のただのおっさんだが、ただの豚ではない。「ただのぶただ」だ。
子供の頃からこの名前でよくからかわれたものなのでもう慣れっこではある。
紅な豚が公開されたのがちょうど最初の会社に入社した頃だったので、いろんな人にいじられたのを今でも思い出して腹が減る。ぐう。
私は嫌なことを忘れられない性質だ。自分では忘れたいとは思っている。逆に楽しかったことはよく忘れる。残念だ。
そんなことはどうでもいい。
ひょんなことから、この「コーポ大家」を譲り受けて、管理人としての日々を過ごし始めたところだ。
(。´・ω・)ん?
そう、元・大家の大家さんから「コーポ大家」を譲り受けたんです。
名前で遊んでるわけではない。厳然たる事実をそのままお伝えしているだけなのでご容赦願いたい。
今は、缶ビール片手にバルコニーに出てきたところだ。
既に月食が進行していてそろそろ皆既月食になろうかという状態だ。
そう、今日は2022年の11月8日である。
日本では442年ぶりとなる皆既月食と惑星食が同時に見られるという貴重な天体ショーが見られる日だ。
この日を逃すと次に同様の現象が日本で見られるのは322年後の2344年と予想されているので、海外旅行をしない私にとっては唯一無二の機会だ。
ちょっとした双眼鏡も購入して万全の態勢で夜を待った。
天気も大変よろしくて、この東京でもはっきりと月が欠けていく様子が観察できている。
皆既月食になると赤黒い月が地球を照らすのが、何とも言えず神秘的だ。
この後、天王星がこの赤黒い月の裏に隠れてしまう。
天王星と言えば、自転軸が極端に傾いていることで知られている。地球が23度ほど公転面に対して傾いているのに対して天王星は約98度、つまり公転面に対してほぼ横倒しの状態だ。なので、84年の公転周期のこの惑星の極点では42年間の昼と夜が交互に訪れることになる。
なんとも不思議な惑星だ。
その天王星が今まさに月の裏に隠れようとしている。
その時を見逃すまいと双眼鏡を覗き込む。
今、日本中で月食は同時刻にほぼ同じ食の状態が見えているが、天王星食は場所によって結構違う。
例えば、東京では20:41ごろに天王星が月の裏に隠れ始めるが、京都では20:32、福岡では20:22ごろといった具合だ。
おおっ、弱い光の天王星が、今、月に食べられましたー。ぱちぱちぱち。
一分ほど余韻に浸りながら双眼鏡を覗き続けていると、どこからともなく声が響いた。
『ダンジョンを初期設定にしました。変更する場合はメニューから実施してください。』
「はい?」
今、どこから声がした?
周りを見てもバルコニーに面した部屋の中の白面以外誰もいない。
白面は大家さんが飼っていたメンフクロウのオスだ。
大家さんと一緒にお話していた時から私にも慣れてくれていたので、そのまま私が飼うことにした。
真っ白でとても綺麗だ。
まさか、白面が喋った…わけないよな。
しかも、ダンジョン?初期設定?
何、そのゲームみたいなの。
住人の誰かが大音量でゲームでもしてるのかな。
しばらく様子を伺ってみたが、さっきのような声は聞こえてこなかった。
空耳、か?
幻聴とかやだなあ。薬の影響かなぁ。
多発性骨髄腫の治療で今はちょっと強めの薬を飲んでたりする。
週一で飲む薬は昨日服用していてその影響で昼ぐらいまで気分が優れなかった。
『スキルを獲得しました。スキルはステータスで確認できます。』
「はい?」
また聞こえた。
えー、なになにドッキリ?
昔からテレビっ子だった私はヒーローものやアニメの類はよく見ている。
この歳になった今でもリアルタイムで見るのは辛いが、録画して昼間の空き時間とかに見てたりする。
昔の悪の組織との対決とは違い、最近は転生ものや異世界ものが多いということもちゃんと知っている。
その中でよく使われているのが、ステータスで自分の能力値やスキルを確認できるということも。
これはあれか。
住人の誰かが悪戯していて、私が調子に乗って例の言葉を言おうものなら笑ってやろうというドッキリを仕掛けているのだろう。
仕方がない、こんなことをしそうなのは103のクリスか、203の尾茂さんだろうけど付き合ってあげるとしよう。
「ステータスオープン。」
かくして、私の脳裏にステータスが表示された。マジか。
10
あなたにおすすめの小説
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました
チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。
完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。
【捕食】
それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。
ゴブリンを食べれば腕力を獲得。
魔物を食べれば新スキルを習得。
レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。
森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。
やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。
これは――
最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる