アパート管理人はダンジョンマスターを兼務する

深香月玲

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第4話 ポイントのご利用は計画的に

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それはまるで圧延ローラーにでも巻き込まれるがごとく、あっという間に腕を、上半身を、体全体を跡形も残さず呑み込んでしまった。
これまでなかったはずの七個目の郵便受けが、だ。

『侵入者を撃退したのでポイントを獲得しました。』

「はい?」

今のって…。何かのドッキリ?
自分の目で確かめるために急いで郵便受けの所に向かう。

郵便受けの前には割と夥しい量の血とか体液みたいなのが溜まっている。
更には体と一緒に巻き込まれなかったスマホとかの持ち物も残っていて、さっきのことが現実にあったことだと突きつけてくる。
え?あの人どうなっちゃったの?

『侵入者の素体は確保しており、再利用が可能です。』

「はい?」

再利用って人のことをリサイクルできるみたいに言うのはおかしいでしょ。
あれで五体満足で生きてるとはとても思えない。
一体どうやって再利用するというのだろう。

『ひとつ、自陣に放つ駒として利用可能です。ひとつ、敵陣に攻め込む駒として利用可能です。』

なんか、この謎の声と普通に会話してるみたいになっちゃってるけど私の頭は大丈夫だろうか。
いや、それより死人が出ているのに死体もなくて、血痕だけが…って綺麗になくなってるし。

『ダンジョン内の軽微な損傷等は一定時間経過で原状回復されます。重大な損傷はポイントを使用して修復することができます。』

どんどん意思疎通が円滑に進むようになっているんですけど。
もしかしてアレも言わなくて思うだけでできるとか?
ステータスオープン。

あ、やっぱりできるんだね。
ポイントが15に増えている。
チラシ男のことは気にはなるけど、メニューの残り一つも見ておこうか。
メニュー、ポイント交換。

・交換可能一覧
・履歴

履歴ってポイントの獲得とか使用の履歴なのかな。
履歴。

2022/11/08 20:41 初期ポイント獲得 10ポイント
2022/11/08 20:50 ミミック設置 -5ポイント
2022/11/08 20:50 侵入者撃退 10ポイント

想像通りだった。
あの増えてた郵便受けってミミックだったんだ。
宝箱に化けるだけじゃないんだね。
5ポイントであの凄まじさだと100ポイントとか使ったらとんでもないことができるんじゃなかろうか。怖っ。

「多田さん、こんばんわなのですわ。」

「あぁ、面近さん、こんばんわ。お帰りなさい。」

「ただいまなのですわ。こんなところで何してるんですか。あー、また変なチラシ入ってるのですわ。」

郵便受けを開けながら文句を言う面近さん。

「さてはチラシ入れてる人追い返してたんですか。ほんと、ゴミになるだけなんだからやめてほしいのですわ。」

「あぁ、まぁ、そんなところです。」

追い返したというか、ミミックに食べられちゃったんだけどね。

「皆既月食も終わっちゃったのですわ。駅の所でちょっと見てましたけどあんなの初めて見たのですわ。」

空を見上げると、赤黒い月はもう終わっていて部分食の白い月があった。
そう言えば、ダンジョン関係のことが起こり始めたのって天王星食が始まった頃だよな。
なんか関係があるんだろうか。

「面近さんも見てたんだ。神秘的だったね。」

「多田さん、前から言ってますけどそんなに他人行儀な呼び方しないでほしいのですわ。前みたいに恵理ちゃんって呼んでくれないと泣きますよぉ。」

言いながら私の腕に抱きついてくる面近さんは広尾の有名女子大に通う女子大生だ。
なかなかもてそうな可愛い顔をしており、腕から伝わる感触からも分かる通り胸も結構大きい。
去年の四月の入学当時から住んでいて私が管理人になる前から面識があり、彼女のちょっとした問題を解決してからこうして信頼してくれている。

「いやいや、管理人として弁えとかないとみんなに贔屓してるとか思われるといろいろまずいでしょ。だから、ね。」

「いいもん。むしろ贔屓してほしいもん。だーかーらー。」

「分かりました。検討しておきます。」

そう言って、彼女をやんわり腕から引き剥がす。

「そうやって子ども扱いするー。」

口を尖らせて不満そうにする面近さんは子供っぽくってとても微笑ましい。

「何、そんなところでいちゃついているのさ。」

内階段を降りてきたのは尾茂さんだ。

「いちゃついてなんかいませんよ。」

「えー、ひどーい。こんなにラブラブ光線出しまくってるのに。」

「おじさんをからかって楽しいですか。」

「またいちゃついてるし。」

「参ったな。」

「ちょっとコンビニまで行ってくるけどなんか欲しいものあるなら買ってくるよ。」

「私は大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」

「あっそ。」

そう言って出て行こうとする尾茂さんだったが、立ち止まってしまった。

「なんか出られないんだけど。」
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