ファンの心の自由

月澄狸

文字の大きさ
1 / 1

コメントの影響力

しおりを挟む
 YouTubeで好きな曲を聴きながらその曲のコメント欄を見ていたら、素敵なコメントがあって共感した。私と同じようにこの曲を知ったばかりの人が、「良い曲だなぁ」と書いているような文章だった。しかしそのコメントに「この曲について何も知らないくせに偉そうに語るな」というような返信が付いているのを見て落ち込んだ。

 YouTubeや知恵袋などは元々、感じ悪いコメントが多いので、気にしなくて良いのかもしれないが……。こういうことがあると何か、若干退いてしまう。せっかくその世界を好きになりかけていたのに、その世界の住民とも言えるファンから攻撃されるのはショックが大きい。本気のファンとしては「ああ、そんなことで退くんだったら、とっととどっか行っちまえ」というような心境かもしれないが、私もコメントした人もただ新しい感動に触れて喜んでいただけなのに、そんなキツい言い方することないじゃないかと思う。

 この曲はある作品に関連する曲であり、コメントを書いた人や私は、曲の元となる原作についてよく知らない。しかしこれからちょっとずつ作品に興味を持ち、もしかしたら原作にも足を踏み入れていたかもしれなかった。
 私はまだ原作を買っていないが、YouTubeで関連動画を見たりグッズを買ったりしており、ここしばらく、毎日作品の情報に触れていた。作品の世界観に触れるとワクワクした。しかし今日は、グッズを見ると、さっきの嫌なコメントを思い出して落ち込んでしまう。

 これって、仕事のことを思い出す感覚に似ているかも。仕事のことを思い浮かべてワクワクするような仕事好きは、あまりいなさそうな気がする。私も仕事があんまり好きじゃない。好きじゃない理由は主に、「仕事が遅い」というようなニュアンスの注意をよく受けること、たまに耳にする陰口っぽい言葉が苦手なこと、「仕事は絶対やらなきゃいけない」空気があること、長く働かないと生きていけないことだ。仕事は変えようと思えば変えられるけど、働くこと自体はやめられない。
 今の作業や職場(建物)の雰囲気自体は嫌いじゃないというか、多分好きだ。が、仕事はしがらみが多いので、そう余裕を持っては楽しめない。「仕事」と言われると、ちょっと憂鬱になる。以前ほどの仕事恐怖症ではないものの、明日休日だったはずなのに急に仕事が入ったら、ガッカリするだろう。

 遊びに関しては、強制的な何かがなく、自由だ。仕事の作業だって、自由にやっていいならば好きになっただろう。逆に遊びでも、仕事や学校みたいに縛られている感があると、私は好きになれないと思う。集団行動が苦手なのだ。ゲームが好きな人の中には、チームを組んで仲間とプレイするのが好きな人もいるようだが、私は誰かと一緒に毎日ゲームしたり、役割をこなさなくてはならないゲームをするのはしんどいと思う。

 今回、ただ作品の一部に触れて感動しているだけの人がキツいコメントを書かれている場面を目にしたことで、「自由」を侵された感じがして、なんとなく嫌になってしまった。これは「にわかファン」と「古参ファン」、「ガチ勢」と「エンジョイ勢」的な問題でもあるだろうか。

 私は生き物が好き(?)だが、詳しくない。しかし私の生き物好き(?)歴は長いので、一応自分の考えみたいなものが出来上がっている。もしも「昆虫図鑑を5冊以上持っていないようなヤツは昆虫について語る資格ないね」と誰かに言われたとしても、「そんなのはアンタの勝手な意見だ。昆虫はアンタのもんじゃない」と思えるだろう。

「昆虫が好きであること」自体を「変だ」と人から否定されたときはショックだったが、それについては「安易に自分の趣味を人にさらけ出すもんじゃないな」と学んだ。ネットではそれぞれ自由に語っていいと思っているので、今もあれこれ書いているが、職場では「虫が好きなんですよね」というような話はしなくなった。

「趣味をさらけ出すと否定される」は作品についても同じか……。
 生き物については持論を語られても「君の持論でしょ」と思えるし、生き物のことをよく知らなくても生き物デザインの服を買ったりして良いと思うけど、「作品」は人間のものなので原作や世界観といったものがあり、「『好き』の形は自由じゃん」と言いづらい。別に、「知っていればいるほど偉い」「知らないのは悪い」なんて思わないんだけど。

 私はポケモンのソフトはわりと何シリーズもやっている。ガチ勢からしたら全然なのだろうけど、クリスタル・ファイアレッド・サファイア・エメラルド・プラチナ・ハートゴールド・ホワイト・ブラック2・Y・アルファサファイア・ムーンをプレイした。全部クリアしたはず。しかし、ソフトを色々やっているからどうということもなければ、やっていないからポケモンファンじゃないということもないだろう。ポケモンを知らなくたって、ピカチュウの服を着たり絵を描いたりぬいぐるみを飾ったり、「カワイイ」と言うのは自由だ。

 ドラクエもいくつかはプレイしている。ポケモンやドラクエの曲は好きだ。が、YouTubeで、やったことのないゲームの曲も聴いたりする。知っているゲームの曲も好きだが、もしかしたら、やったことないゲームの曲の方が好きで長年聴いているかもしれない。ファイナルファンタジーとか、東方プロジェクトとか、アルトネリコとか。何だか知らなくても音楽が好きで、気に入った曲をよく聴いている。
 ちなみにFFは曲が良かったので1つゲームを買ってみたが、ストーリーにあんまり魅力を感じなかったのですぐやめた。これもファンからしたら怒られる楽しみ方なのだろうが、個人的にはまぁ良いじゃんと思う。

 鬼滅の映画が流行ったとき、「アニメ見ていないけど映画楽しめた」というコメントを見かけて、「知らないアニメの映画を見に行くってどういう訳だろう」と思わなくもなかったが、それもまぁ自由だろう。「映画では描かれていない部分に、この作品の重要なメッセージがあると思うんだけどな~」とは思うが、そんなこと私が言おうが言うまいが、映画を見て気になった人は勝手に作品を追うだろうし、「今話題のアニメ映画を見て面白かった」で済ませるのも別に良いはず。

 私は鬼滅をアニメで見ていて、マンガは一切読んでいないが、これも話せばケチを付けてくるファンはいそうである。話さなきゃ良いんだけど。
 既に原作は完結しているので、ストーリーを知っている人は多いはず。うっかり関連情報など漁ればネタバレ情報が出てくるに違いないので、ネタバレを避けるため、鬼滅についてあまりネットで情報を見ていない。するとファンの持論などに触れなくて済むので、それも精神衛生上良いのかもしれない。

 今回、せっかく好きな作品を見つけて曲に浸っていたのに、嫌なコメントを見かけてショックを受けたが、こうやって文章を書いているとちょっと気持ちが落ち着いてきた。嫌なことは忘れて、またマイペースに好きなものを探求したいと思う。

 ファンは作品の案内人であってほしいが、心の狭いファンも多いものだ。そうなる理由というのもあるかもしれないが……。「人間の温かさ」みたいなテーマの作品のファンが「にわかファン嫌い」などと言っていたら、せっかくの作品のテーマがそのファンに伝わっていない気がするし、原作を知らない人が何かの主題歌を聴いて「この曲すごく好き。心に響く」って言っていたら、その人の方が深く作品を感じているんじゃないかと思わなくもない。

「仲良くすることの大切さ」を説いた作品のファンがいじめをしていたら本末転倒。平和のために教育をしているのに「学歴差別」が発生したらバカバカしい。
「知っている」「持っている」ことが偉いと思っている一部の人。何かズレているような。それぞれが自由に「感じる」、それで良いじゃないか。

 ……自由に感じれば良いってことは、批判する側も自由ってことか。よくあるパラドックス。まったく人間というのは、果てしなく面倒な生き物だ。

 私は絵や文章を書くのが下手だが好きだ。しかし多分、一番最初に書いたときに「ヘタクソ」と罵られていたら、トラウマになって書かなかったんじゃないか。なんとなく、かつて作品を褒められた嬉しい思い出があるので、創作を継続しているのかもしれない。

 第一印象の影響は大きい。ある程度続けたことならば、批判されても耐えられるかもしれない……が、最初に否定されるってすごいショックだ。子どもの頃に何かを否定されたことが、すごく記憶に残っているように。
 誰かが何かの入り口に立っているとき、安易に否定的な言葉をかけるものじゃないなと思った。仕事の教え方でもそうだけど、無駄に嫌なイメージが付いたって良いことないし、漠然と良いイメージを抱いていることで乗り越えられることもある、はず。

 などと言いつつ私も、持論の押し付けみたいな思いばかり抱いている。私の作品を読まずに、テキトーにいいねだけ付けていくのやめてくれ……。なんでみんな、玄関まで来てピンポン押しただけで帰ってしまうんだ。中に入ってくれよ。作品を収益化しないと創作で生きていけないので、興味もないのにいいね連打されたら困る。
 でも私も同じようなことをしている。人のことを言えない。うまくスタイルを確立できていないのだ。ああ、人間って本当にめんどくさい。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

大林和正
2023.11.28 大林和正

面白かったです
「知らない癖に偉そうに語るな」
言った事ありますし
そういうコメントを見て
へーアンタ作者並に全てを知ってんだー
とイジワルな事を思った事もあります
どちらも経験しました😅
と歳取ると逆にいい思い出だったりします😆

2023.11.28 月澄狸

大林さん
こんなグダグダ文を楽しんでいただいてありがとうございます🙇

作品の世界観に対して思い入れがあるファン、なにかの思い込みでズレたことを語っている人、独自の受け取り方をする人……いろんな人がいますね。
「このシーンが良かった!」とか感想コメント書いてあるけど、そんなシーンなかったような……別にそういう意味じゃないような……なんてコメントもあったり。

やっぱり何でも、どちらの視点も経験して、ニュートラル(?)になることで、人間丸くなっていくのかもしれませんね😊

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

感想欄を閉じます

有栖多于佳
エッセイ・ノンフィクション
感想欄に悪口を書く人がいるので、閉じる決意が出来ましたと言う話です。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

マグカップ

高本 顕杜
大衆娯楽
マグカップが割れた――それは、亡くなった妻からのプレゼントだった 。 龍造は、マグカップを床に落として割ってしまった。そのマグカップは、病気で亡くなった妻の倫子が、いつかのプレゼントでくれた物だった。しかし、伸ばされた手は破片に触れることなく止まった。  ――いや、もういいか……捨てよう。

アルファポリスの禁止事項追加の件

黒いテレキャス
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスガイドライン禁止事項が追加されるんでガクブル

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

小説サイトを比較研究してみた(現在12サイト)

流離の風来坊
エッセイ・ノンフィクション
どんな小説サイトがあるのだろう? ちょっと調べたけど、色んな人が色んな経験を語られている。でも自分に合うかなぁ? そんな方に超簡単な解説で紹介します。 ★このコラムはリアルに影響しそうになったと感じた時点で削除する可能性があります。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。