どこかで雨が降る音がする(分からないことを分からないままでいられる幸せ)

月澄狸

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どこかで雨が降る音がする(分からないことを分からないままでいられる幸せ)

 雨が上がった朝、どこかからずっと音が響いている。
 なんだろう、ヘリコプターや飛行機ではない。
 遠くを車が走る音にも似ているけれど、車ならすぐ通り過ぎる。
 淡い音がずっと続く。

 もしかして、遠くで雨の降る音だろうか。


 なんとなく、旅行した日の朝を思い出す。
 いつもと違う場所での目覚め。いつもと少し違う朝。
 あの場所は今どうしているだろうか。


 小さい頃はこんなことよくあった気がする。
 何か分からないものに目を向け、耳を傾け、感じる。
 それが何なのかを知るのはまたいつか。
 物事を知らないでいるのになんの罪もなかった。

 だからいくらでも好きに空想した。
 もしかしたら一年に一度だけ魔法が使える日があるかもしれないとか。
 空を飛ぶこととか。
 多くのことを知らない、分からないからこそ自由だった。


 今、大気中に響くこの音はなんだろう。
 風向きのおかげか音自体の呼吸か、強まったり弱まったりする。

 いつもなら分からないことは大抵調べるけれど……
 今日くらいは分からないままでいいか。


 これはきっと、どこか遠くで雨の降る音だ。




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