好きと嫌いは両立するかも

月澄狸

文字の大きさ
1 / 1

好きと嫌いは両立するかも

しおりを挟む
 いつ頃までだったか、子どもの頃は、「人を嫌いになっちゃいけない」という美学(?)を持ち、「嫌いな人がいない自分」に酔っていた気がします。
 しかし今。めちゃくちゃ器が縮んでいます。

 子どもの頃の方が、思想に関しては善人だったんじゃないでしょうか……。
 とはいえ言動がおかしいらしく怒られまくっていたので、「崇高ぶったことを言ってみせるのが好きだけど中身が伴っていないヤツ」状態だったのかもしれませんが。

 で、発言と行動のレベルを合わせようとした結果、思想の中の崇高だった部分が失われ、ただの短気なゲスと化しました。

 今では普通に人を嫌いになります。嫌いになる勇気が出てきたのかも。
 嫌いになるということは嫌われる確率が増すことかもしれませんが、どうせ何もしなくても嫌われるのだし、「もう嫌われたって良いんだ」とどこかで思えたのでしょう。「嫌われるのも嫌うのも、そこまで大したことではない」と。まだ面と向かって「嫌い」って言われたら泣くと思うけど。

 今も昔も友達がいるとは言えませんが、昔は「仲間がいない」ことが、ものすごく重く感じられました。特に私は依存的な性格なので、「誰も助けてくれない」ことが非常に恐怖でした。だから、友達はいないにしてもせめて「嫌われたくない」。なので「嫌うわけにはいかない」と、どこかで思っていたのかも……?
 いや、子どもの頃はもうちょい清らかだったので、そんな打算的ではなく、ただ人を好きでいたかったのだと思いたいけど。

 それでも今の自分にとってはもう、陰口を言うのも人を嫌うのも、ストレスを溜めて誰かに殴りかかったりしないための必要悪です。自己嫌悪しているかもしれませんが、もはや手放せません。
 落ちこぼれの自分が誰かに怒りを持つ資格なんてない。自分が悪い。分かっていても文句を言います。しょうがないのです。

 ちなみに私の嫌いな人は主に、「自分に敵意を向けた」「私のことが嫌いなんだな」と感じる人。あるいは「私の属するカテゴリー」「私に近い何か」を嫌っているらしい人です。
 例えば「だらしない人が大っ嫌い!!」「社会不適合者に価値はない」と言うような人は……多分私の敵になりますね。メンタリストの人がホームレスがどうとかおっしゃいましたが、それを擁護した人は多分私の敵です。あとは誰かを切り捨てるような意見を持つ人も。

 落ちこぼれや弱い人や少数派、外国やお年寄りなど、何らかの人種を嫌う人は基本嫌いです。自分にも差別心はあると思うけど、それを増長させる人と関わりたくない……同族嫌悪かも。
 あと、私の好きなもののことをメチャクチャ嫌いな人とか、方向性の合わない人も。相容れないレベルが高まると、双方苦手意識を持ちますね。

 それでもKYな私は好意と敵意の見分けがあんまりつきません。からかわれて笑われているのも、裏で嫌われて表で笑顔を向けられるのも、利用されることも、気を使われて無難なことを言われるのも、お世辞を言われるのも、全部好意だと勘違いしていそう。

 で、私のためを思ってズバッと意見を言ってくれる人が苦手だったりするかも。考えなしに意見してくる人との見分けがつきません。
 厳しさと悪口の違いすら分かっていないかも。優しさと甘さの見分けもついていなさそうだし……。人の見極め、だいぶ間違っていそう。

 自分を好いてくれる人のことは好きですが、人は裏表がある場合もあるし、我慢して怒りを溜め込むこともあります。私自身演じ方が下手で矛盾だらけなので、私の態度も端から見て意味不明だろうし、しょうがないとは思いますが……。誰が自分のことを好きで、誰が嫌っているのか見定められないので、テキトーに人を嫌いになります。好意を見せてくれても、自分の意見への勧誘系かもしれないし。

 ただ……。嫌いな人に殺意が沸くこともありますが、「いざとなったら助けてもいいかな」くらいには思える気がします。いざというとき、助けるか、どさくさに紛れて突き落とすか、どっちか分かりませんが。

 好きの反対は無関心、嫌いは好きに近いってよく言いますよね。すると「嫌い」と「好き」は両立する気がします。

 この間NHKでフランケンシュタインの話を見ました。フランケンシュタイン、図書館かどこかで子ども向けのバージョンを読んだことがあります。懐かしい。
 そのフランケンシュタインの話で、「憎悪も愛情の一種なのかもな」と感じました。自分を生み出した人類から愛されたい、愛したい。それが上手くいかない苦しみ。苦しみが悲しみ、憎しみになってゆく。けれど憎んでも恨んでも、どこか愛し合うことを求めているのだと。

 だから本当にいつかは……。天国みたいになった世界で、「あのときはすまなかったね」って和解できたら良いんでしょうね。

 それまでの間は好き放題、人を嫌い、陰口を言うことにします。イライラが溜まって突き落とさずに済むように。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

包帯妻の素顔は。

サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

処理中です...