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は、と目を開くと、ユンユンに後ろから抱きしめられたまま、一緒に布団の中へ入っていた。自分を見ると裸だったけれど、精液も汗も気にならないから、知らないうちに綺麗にしてもらったのかもしれない。
後ろのユンユンは寝ているのだろうか。僅かに顔を動かすと、「まだ起きてたネ?」と問われた。
「疲れたデショ、もう寝たほうがいいアル」
「……ユンユン、その……」
トウマはユンユンに聞きたいことが山程有った。有りすぎて頭が働かない。「どうして今まで猫のフリをしていたのか」「なぜこのタイミングで明かしたのか」「ホンマにこれしか恩返しの方法無かったんか」「エセ中国人風バーってどれぐらい利用客いるの」などなど。全ての疑問が流れては睡魔に食べられていく。
「その……ええと……」
何から聞けばいいのやら。わからないままウトウトしていると、ユンユンが小さな声で尋ねた。
「ご主人様サマ、ユンユンのこと、嫌になったアルカ?」
「なに……」
「ユンユン、もうここにいないほうがいいアルカ?」
急にしおらしいことを言い始めたユンユンに、トウマは困惑した。どうしてそんな話になるのだろう。確かにビックリもしたし、なんで飼い猫に尻を弄られたのかさっぱりわからない。けれど、だからと言ってユンユンを嫌いになったり、追い出したりする理由が有るだろうか。
いいや、少なくともトウマには無い。
「ユンユン、そんな事ない……嫌なわけないし、ここに……俺と一緒にいてほしいよ……」
ユンユンを飼い始めてからの満ち足りた暮らしを思い出す。猫との生活は幸せに溢れていた。布団を占有して寝ているのも、仕事中に椅子に乗り上げられるのも、困るなりに幸福なのだ。そのふわふわした毛並みを撫でると優しい気持ちになるし、温もりに癒された。
全て、ユンユンがくれた時間なのだ。たとえ先程人間の姿になった彼に尻を弄られたとしても。
「……俺のこと……一人にしないでくれよ……」
ぽつり、と呟く。するとユンユンがぎゅっと抱きしめてくれた。その温もりが心地良くて安心する。
「ご主人サマ、大好きアル……ワタクシ、ずっとずっとアナタと一緒ネ」
これからもいっぱいご奉仕するアル。物騒なことを言われている気がしたものの、トウマはついに眠りに落ちた。
ううん、と目を覚ますと、外はすっかり明るくなっているようで、カーテンの隙間から陽の光が差し込んでいる。
妙に体がおもだるい。そういえば、とんでもない夢を見た気がする。トウマはうめき声を上げながら姿勢を変えて、目の前で眠っているユンユンに目をやった。ふわふわの毛並みの猫は、今日も変わらず珍妙な毛色で可愛らしい。変な模様ではあるが、トウマにとっては間違いなく世界一かわいい猫だ。
何がどうしてあんな夢を見たのやら。仕事のし過ぎかもしれないな、とトウマは何故か痛い体を起こし、ボンヤリと床を見下ろした。
昨夜、ユンユンが着ていた服と下着、そしてローションのボトルがほったらかしである。
「あ」
トウマは思わず声を出して、それで一連の出来事が夢ではないということを理解してしまった。つまりあの男も、酷い痴態も、眩暈のするような快感も全部。そうはっきり認識して、トウマは真っ赤になった。思わずユンユンを見たけれど、彼は今、ただの猫の姿で丸くなって寝ているばかりだ。
考えるべきことは山ほどあった。本当にあんなことがあったとして、これからも続くとしたら自分はどうなってしまうのか。今も変な仕事をしているなら止めなければ。猫又って猫と同じご飯で大丈夫なのか。
色々考えると頭がぐちゃぐちゃになるし、今のユンユンは猫だから会話も成立しないだろうし。トウマが頭を抱えていると、視界の端で巨体が動く。見れば、ユンユンも目を覚ましたらしく、大きく上半身を伸ばした後で後ろ足を延ばし、それからトウマのそばに向かって来た。
「ユンユン、」
名を呼んでいる間にも、ユンユンは額から体をトウマに押し付け、ゴロゴロと鳴きながら膝に乗って来る。スリスリと首元にすり寄りながら「ナーン」と可愛らしく鳴くものだから、トウマは考えたことをすっかり忘れてしまった。
「よしよし、ユンユン……」
いつものように撫でてやり、嬉しそうに目を細めているユンユンを見ながらトウマは一つだけ言った。
「ユンユン……出しっぱなしはよくないから、次からは片付けるとこまでやろうか」
ナーン? とユンユンが首を傾げる。だから床の服やローションのボトルを指差すと、彼はフンフンを匂いを嗅ぐような仕草をした後に、ナァーンと大きな声で鳴いた。
こうしてトウマとユンユンの奇妙で淫靡な生活が始まったのだった。
後ろのユンユンは寝ているのだろうか。僅かに顔を動かすと、「まだ起きてたネ?」と問われた。
「疲れたデショ、もう寝たほうがいいアル」
「……ユンユン、その……」
トウマはユンユンに聞きたいことが山程有った。有りすぎて頭が働かない。「どうして今まで猫のフリをしていたのか」「なぜこのタイミングで明かしたのか」「ホンマにこれしか恩返しの方法無かったんか」「エセ中国人風バーってどれぐらい利用客いるの」などなど。全ての疑問が流れては睡魔に食べられていく。
「その……ええと……」
何から聞けばいいのやら。わからないままウトウトしていると、ユンユンが小さな声で尋ねた。
「ご主人様サマ、ユンユンのこと、嫌になったアルカ?」
「なに……」
「ユンユン、もうここにいないほうがいいアルカ?」
急にしおらしいことを言い始めたユンユンに、トウマは困惑した。どうしてそんな話になるのだろう。確かにビックリもしたし、なんで飼い猫に尻を弄られたのかさっぱりわからない。けれど、だからと言ってユンユンを嫌いになったり、追い出したりする理由が有るだろうか。
いいや、少なくともトウマには無い。
「ユンユン、そんな事ない……嫌なわけないし、ここに……俺と一緒にいてほしいよ……」
ユンユンを飼い始めてからの満ち足りた暮らしを思い出す。猫との生活は幸せに溢れていた。布団を占有して寝ているのも、仕事中に椅子に乗り上げられるのも、困るなりに幸福なのだ。そのふわふわした毛並みを撫でると優しい気持ちになるし、温もりに癒された。
全て、ユンユンがくれた時間なのだ。たとえ先程人間の姿になった彼に尻を弄られたとしても。
「……俺のこと……一人にしないでくれよ……」
ぽつり、と呟く。するとユンユンがぎゅっと抱きしめてくれた。その温もりが心地良くて安心する。
「ご主人サマ、大好きアル……ワタクシ、ずっとずっとアナタと一緒ネ」
これからもいっぱいご奉仕するアル。物騒なことを言われている気がしたものの、トウマはついに眠りに落ちた。
ううん、と目を覚ますと、外はすっかり明るくなっているようで、カーテンの隙間から陽の光が差し込んでいる。
妙に体がおもだるい。そういえば、とんでもない夢を見た気がする。トウマはうめき声を上げながら姿勢を変えて、目の前で眠っているユンユンに目をやった。ふわふわの毛並みの猫は、今日も変わらず珍妙な毛色で可愛らしい。変な模様ではあるが、トウマにとっては間違いなく世界一かわいい猫だ。
何がどうしてあんな夢を見たのやら。仕事のし過ぎかもしれないな、とトウマは何故か痛い体を起こし、ボンヤリと床を見下ろした。
昨夜、ユンユンが着ていた服と下着、そしてローションのボトルがほったらかしである。
「あ」
トウマは思わず声を出して、それで一連の出来事が夢ではないということを理解してしまった。つまりあの男も、酷い痴態も、眩暈のするような快感も全部。そうはっきり認識して、トウマは真っ赤になった。思わずユンユンを見たけれど、彼は今、ただの猫の姿で丸くなって寝ているばかりだ。
考えるべきことは山ほどあった。本当にあんなことがあったとして、これからも続くとしたら自分はどうなってしまうのか。今も変な仕事をしているなら止めなければ。猫又って猫と同じご飯で大丈夫なのか。
色々考えると頭がぐちゃぐちゃになるし、今のユンユンは猫だから会話も成立しないだろうし。トウマが頭を抱えていると、視界の端で巨体が動く。見れば、ユンユンも目を覚ましたらしく、大きく上半身を伸ばした後で後ろ足を延ばし、それからトウマのそばに向かって来た。
「ユンユン、」
名を呼んでいる間にも、ユンユンは額から体をトウマに押し付け、ゴロゴロと鳴きながら膝に乗って来る。スリスリと首元にすり寄りながら「ナーン」と可愛らしく鳴くものだから、トウマは考えたことをすっかり忘れてしまった。
「よしよし、ユンユン……」
いつものように撫でてやり、嬉しそうに目を細めているユンユンを見ながらトウマは一つだけ言った。
「ユンユン……出しっぱなしはよくないから、次からは片付けるとこまでやろうか」
ナーン? とユンユンが首を傾げる。だから床の服やローションのボトルを指差すと、彼はフンフンを匂いを嗅ぐような仕草をした後に、ナァーンと大きな声で鳴いた。
こうしてトウマとユンユンの奇妙で淫靡な生活が始まったのだった。
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