なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが

なずとず

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第17話 YAKISOBA

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「ごめん、ごめんね、ユウキ……」

「いいんだよ、気にするなって」

「だって、せっかくユウキと、一緒に……」

 エリスはこの世の終わりのようにしょんぼりしている。彼の楽しみにしていたカップ焼きそばは、ダメになってしまった。悲しげな声を出して、ずっとシンクを見つめているエリスに、自分の焼きそばを差し出す。これを混ぜ混ぜして食べな、と言うと、エリスは信じられないといった顔で勇気を見た。

「だって、これ、ユウキの」

「俺はいいんだよ、いつでも食べられるんだから」

「でも、そしたら、ユウキの、バンメシ、無い」

「大丈夫、他にも食べるもんあるから。一人暮らしの味方、冷凍食品とかな」

 そう言って冷蔵庫の冷凍室を開ける。一人暮らし用の小さなソレには、とりあえず腹を満たせるようにと、ご飯やからあげ、野菜炒めなどの冷凍食品が常備されている。電子レンジで温めればできあがりだ。

「焼きそばだけじゃ味気ないし、色々あっためよう」

「日本の、ショクタク、家庭の、味」

「ん、こういうのはちょっと違うかもしれないけど、まあいいか」

 勇気は苦笑して、「ほら、あったかいうちに」と焼きそばソースの素をエリスに手渡した。






 テレビをつけるとバラエティ番組をやっている。それを見ながら、二人でテーブルを囲った。エリスは念願のカップ焼きそばを嬉しそうに頬張って、「家庭の味」と繰り返している。大いなる誤解のような気がした。

 冷凍庫にあった物を適当に温めてを並べ、いちいちエリスに「これは何?」と聞かれながら一緒に食べる。テレビからは笑い声が上がっていたが、勇気も大して面白くないと思ったし、エリスはもっと、何が面白いのかわからない様子で、しかし興味深げに見ていた。

「……そういえば、エル」

「ン?」

「結局、日本語ペラペラなのか?」

 気になっていた事を尋ねると、エリスは「ふふ」と微笑んだ。

「そんなこと、ないよ」

「でも」

「フレーズ、セリフ、覚えるのは、できる。イラッシャイマセコンニチハー、とかね。でも、喋るは、難しい。日本語、便利だから、話せるけどね」

「便利?」

「ン。単語、並べる、大体、通じる。便利」

 あーなるほど。勇気は納得した。英語で難しいのは文法がしっかりしていたり、単語にトゥーだのアだの、何かひっつけてないとダメなことだと思う。日本語はその点、確かに単語さえ正しければ、間の言葉はなんとなく想像できるものだ。

「じゃあ、ペラペラではないんだ。ちょっと安心した」

「安心?」

「だってもし、全部エルの演技だったらさ、なんか俺、めちゃくちゃ踊らされて落とされたみたいな感じするし……」

「そう?」

「うん、ちょっとな」

 結局、勇気はエリスに惚れてしまうに至ったのだ。もし全てエリスの手の内だったのなら、複雑な心境にもなる。だがエリスはハッキリ違うと言ってくれた。

「でもね、ユウキ」

「ん?」

「もし、私、騙してた、でも、お互いさま。ユウキ、酔って、私に、求婚した」

「……それを言われると、俺もなんとも……」

 痛いところだ。するとエリスが微笑む。

「でも、私、事実、ユウキが、好き。ユウキも、私、好き。嬉しい。全部、チャラ」

 ネ?

 エリスが何が「ね?」なのかわからないことを言ってくるが、まあ言いたいことはわからないでもない。そうだな、と勇気は苦笑した。








 泊まりの荷物も持って来ていたエリスを先にシャワーに入らせた。彼は「狭い! 日本の、バスルーム、とても狭い!」と大喜びしていた。交代で勇気もシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かして部屋に戻ると、シルクのパジャマ姿のエリスが床に転がっていた。

「うわ。エル、床で寝ちゃダメだ」

 慌てて起こすと、エリスは眠そうに、「日本人、床で寝る……」と呟く。床で寝るけど、それは床の事じゃない。寝るなら布団を敷かないと、と勇気は敷布団を用意した。

「ほら、ここで寝ないと」

「ん、ン」

 引っ張ると、眠そうにしながらも敷布団の上に移動してくれた。そこに枕を置いて、頭を乗せさせてやり、掛け布団を用意する。おやすみな、と掛けて、自分も寝る準備をしようと立ち上がろうとした手を、エリスが掴む。

「ユウキ」

「ん、ダメだよ、布団は狭いから」

「寝ない。寝ないから、一緒に、いて?」

「寝ないからって、わ、わ」

 グイッと引っ張られて、掛け布団の中に引きずり込まれる。エリスのほうが美人だし、受け身だから忘れていたが、彼のほうが背は高いわけだし、男だから力もある。抵抗するのもままならないうちに、ぎゅうと抱きしめられて、勇気はどうしようもなくなった。

「ンー、ユウキ」

「あー、もう、いいよ、子守唄でも歌えばいいのか?」

 甘えるように擦り寄ってくるエリスを撫でてやると、彼は嬉しそうに微笑む。

「ユウキ、とても、優しい」

「優しかないって」

「ユウキ、ユウキ」

「わ、ちょ、ちょっと」

 ちゅ、ちゅ、と啄むようにキスをされる。それは性を意識するものというよりは、本当に愛しいものにするような、例えるならペットや子供、ぬいぐるみにするようなもので、勇気はどうにも弱った。

 エリスがどういうつもりであれ、何度か体を重ねた仲なのだから。あまり刺激されると、火がついてしまう。しかし甘えられているだけなのに、そんな気分になる自分がいけないといえばいけないんだし……と悶々としていると。

「んん!?」

 唇にキスが落とされる。それは、やりすぎだ。エル、と名を呼びかけた口を塞がれて、開いていた唇を割って舌が潜り込んでくる。慌てて離れようとしても、エリスが抱き込んできて、離してくれない。

「……っ、え、エル、だ、ダメだって、……っ」

 息継ぎの度にダメだと言ったが、エリスは止まらない。角度を変えて、何度も唇を重ね、舌を絡ませてくる。息苦しさと、口内で交わる感覚にクラクラして、自然と息も上がり、鼓動も熱も高まる。

「え、エル……っ、ダメだ、って、なんも、準備、してないし……」

「有るよ……?」

「え……」

 真っ赤になった顔で止めようとしたのに、同じくうっとりとした顔のエリスが、そう言って誘うのだから、もうどうしようもない。

「私、持って来た」

「な、な、……」

「ユウキ、……嫌?」

 小首を傾げる仕草で、エリスの髪が流れる。そんな誘い方をされて、もう今更引き下がれる筈がなくて、今度は勇気から唇を重ねた。

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