クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

第20話 文化祭の準備開始

教室の前の黒板に大きく貼り出された紙には「文化祭企画会議」と書かれていた。机を寄せ合い、いつもは雑談でしかざわつかないクラスが、今日はやけに熱気を帯びていた。

「で、俺たちのクラスは──喫茶店に決まったらしい」
「定番だけど、ちゃんとやれば盛り上がるよな」
「エプロンとか衣装どうする？　女子がやったら絶対映えるよな」

笑い声とざわめきが交錯する中、俺は少し離れた席で様子を眺めていた。
（……喫茶店か。俺ができることなんてあるのか？）

そう思った瞬間、視界に半透明のパネルが浮かぶ。

【クエスト発生】
・内容：文化祭の準備に参加せよ
・報酬：SP＋3

（やっぱり来たか。文化祭……逃げずにやるしかない）

―

役割分担が進んでいく。接客、調理、装飾、会計。人気のある役はすぐに埋まり、最後に残ったのは「会計」だった。

ためらったが、俺は黒板に自分の名前を書き込んだ。数字を扱うのは嫌いじゃないし、目立たないならむしろ都合がいい。

その直後、ステータスが更新される。

【スキルショップ更新】
・SP5 → 会話術Lv1
　→ 日常会話がスムーズに。相手の反応に＋補正（魅力＋0.5扱い）
・SP10 → 笑顔強化
　→ 笑顔の印象が格段に良くなる。接客・交渉で＋効果（魅力＋1扱い）

（……これは）

胸の奥で迷いが生まれる。俺は今、SPを12持っている。両方は買えない。

（準備は人と話す場面が多い。まずは“会話術”だな）

意を決して購入ボタンに触れる。

【スキル購入：会話術Lv1／SP－5】

頭の奥がじんわりと熱くなる。言葉が少し整理され、相手の表情を読む感覚が鋭くなるのを感じた。

―

昼休み、隣の男子が声をかけてきた。
「佐久間、会計よろしくな。レジって使える？」
「あ、うん。駄菓子屋で小さい頃手伝ってたから、計算は得意だよ」

言葉が自然に出て、相手が安心したように笑った。
（……これが“会話術”か）

さらに別の女子がノートを差し出してきた。
「売上記録用に表作ってみたんだけど、どう？」
「すごい、ありがとう！　これなら計算も楽になるよ」

口から出た感謝の言葉に嘘っぽさはなかった。相手も照れくさそうに笑ってくれる。今までの俺なら黙って受け取って終わっていたはずだ。

―

放課後、装飾班が困った顔で廊下にいた。
「黒の画用紙が足りないんだよな……。もう一枚は欲しいんだけど」
気づけば声をかけていた。
「駅前の文具店にまだあるかも。俺、帰りに買ってこようか？」
「え、いいの？」
「会計の経費で処理すれば大丈夫だし。どうせ帰り道だしね」
「助かる！　佐久間って、意外と動けるんだな」

笑顔で言われると、胸の奥が少しだけ温かくなった。

【クエスト達成】
・内容：文化祭の準備に参加せよ
・報酬：SP＋3

（……よし。最初の一歩は踏み出せたな）

―

家に帰ると、妹がじろりと俺を見る。
「お兄ちゃん、なんか……今日は喋りやすいっていうか、雰囲気違う？」
「そ、そうか？」
少し照れながら答えると、妹はふっと笑った。前までの軽蔑混じりの視線は、もうなかった。

夜、布団に潜り込んでステータスを開く。

【現在のステータス（夜）】
・名前：佐久間 陽斗
・年齢：16
・身長：168.1cm（＋8cm）
・体重：62.0kg
・体脂肪率：15％
・筋力：18.5（＋1）
・耐久：18.5
・知力：13（＋1）
・魅力：16.7（会話術補正＋0.5）
・資産：￥160,080（＋2000／日）
・SP：10.0
・スキル：早食いLv1／資産ブースト（＋2000／日）／暗記力＋10％／身体強化Lv1／恐怖心克服Lv1／瞬発力アップ（小）／スタミナ持久力＋1／会話術Lv1
・特別イベント：文化祭準備（進行中）
・特別イベント：水城遥との出会い（進行中）

（魅力が……上がってる。少しずつだけど、確かに変わってる）

数字の変化が心に勇気を与えてくれる。
（文化祭……今度は、みんなの前で“見せる”番だ）

胸の奥で炎が灯り、俺は静かに目を閉じた。