クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第38話 学年末テスト決戦、偶然じゃないことを証明する日

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二月下旬。冬の曇り空はどこか重たく、吐く息は白く伸びてすぐに消えていった。
いつもより早めに登校した俺は、教室の自分の席に腰を下ろし、鉛筆を握り直す。
机の上にはシャーペンと予備の芯、そして消しゴム。必要最低限の道具だけが整然と並んでいる。

(……ついにこの日が来た。やれるはずだ)

中学の頃は、テストといえばただ「どうか赤点を取らないように」と祈るだけだった。
惨めな結果を貼り出されて、心のどこかで「俺なんてどうせ」と諦めていた。

でも今は違う。
スキルショップで手に入れた集中力強化、論理思考。
そして何日も積み重ねてきた勉強。
数字として伸びてきた知力は、確かに俺が「変わった」証だ。

担任が教室に入ってきて、ざわついていた空気が一気に引き締まる。
配られる問題用紙。カツン、と時計の針が音を立てた。

「よし、始め」

その合図で、鉛筆を走らせた。



一教科目:国語

冒頭の文章問題を読んだ瞬間、頭の中に光が走るような感覚があった。
ただ読むのではなく、論理思考スキルが「要点」と「余分」を自動的に切り分けてくれる。
段落ごとの役割、作者の意図。まるでマーカーで線を引くように整理されていく。

(……これなら、いける)

漢字の書き取りも、前日にまとめ直したノートが脳裏に浮かんで自然と書ける。
かつては白紙で終わらせていた古文も、現代語訳の流れがすっと繋がった。



二教科目:数学

難問ぞろいの二次関数の応用問題。
一瞬手が止まったが、論理思考が「最短ルート」を示す。
まるで迷路の壁が透けて、正解への一本道が浮かび上がるようだった。

(あとは計算ミスさえしなければ……)

集中力強化の効果で、数字の細かい確認も怠らない。
式を一つひとつ確かめ、解答欄を埋めていく。
消しゴムのカスが山のようにできても、不思議と焦りはなかった。



三教科目:英語

長文問題。
かつてなら読むだけで頭が真っ白になっただろう。
けれど今は違う。

「courage」――文化祭で声を張り上げた記憶がよみがえる。
「river」――夏に見た川辺の光景が浮かぶ。

英単語と映像がリンクして、自然に意味が染み込んでくる。
まるで暗記が暗記じゃない。経験がそのまま答えになっていた。



四教科目:理科

化学反応式の穴埋め。
頭の中でイメージが勝手に組み上がる。分子の結合、電子のやり取り。
図解を丸暗記したわけじゃない。理解した流れそのものが答えを導く。

(……昔の俺なら、絶対途中で投げてただろうな)

問題用紙に書き込むたび、確かな自信が積み重なっていった。



五教科目:社会

年号と出来事を問う問題。
ただ数字を覚えるだけじゃなく、流れで繋がっている。
戦国大名の動き、江戸幕府の改革。
全部が「物語」として脳内に再生されて、手が止まることはなかった。



「そこまで」

最後の合図が響き、鉛筆を置く。
張りつめていた教室の空気が一気に緩む。

「……やり切った」

小さく息を吐いた瞬間、視界にウィンドウが浮かぶ。

【特別クエスト達成】
・内容:学年末テストを最後までやり切れ
・報酬:知力+1/SP+3

(よし……!)

心臓の奥で熱がじんわり広がる。
結果はまだわからない。けれど、これまでとはまるで違う「手応え」があった。



一週間後、結果発表。

三月初め。まだ寒さの残る校舎。
廊下に貼り出された成績表の前には、生徒の群れができていた。
笑い声、悲鳴、落胆の声。いろんな感情が入り交じっている。

俺はゆっくりと人垣をかき分け、視線を名簿に滑らせた。

(……あった)

「佐久間 陽斗」――順位は、5位。

「っ……!」

思わず息が詰まった。
前回の8位だって奇跡のようだったのに、今回はさらにその上。
一ノ瀬凛の名はやはり今回も1位に輝いていた。
だが、もう圏外の頃の俺じゃない。上位に確かに「佐久間」の名が刻まれていた。

背後からざわめきが広がる。

「佐久間……5位ってマジかよ」
「やっぱ、佐久間すげぇ……」
「もう偶然とかじゃねえな」

敵意も嘲笑もない。ただ純粋な驚きと尊敬。
胸の奥が熱くなる。数字が、俺の変化を証明してくれていた。

視界に再びウィンドウが浮かぶ。

【特別ボーナス獲得】
・内容:学年末テストで10位以内を維持し、さらに順位を伸ばした
・報酬:知力+1/SP+5



「佐久間くん」

後ろから静かな声。振り向けば一ノ瀬凛が立っていた。
相変わらず表情はクールだが、わずかに目元が柔らかい。

「やっぱり前回の結果は偶然じゃなかったんだね。しかも……順位を上げてる」
「……ああ。努力した結果だ」
「そう。だからこそ、面白い」

その瞳に宿る光は、認めたうえで「ライバル」として見ているものだった。
追いかけるだけじゃない、追われる側にもなったのだ。



夜。布団に潜り込んでステータスを開いた。

【現在のステータス(三月初め・学年末テスト結果後)】
・名前:佐久間 陽斗
・年齢:16
・身長:168.1cm
・体重:62.0kg
・体脂肪率:15.0%
・筋力:22.9
・耐久:23.7
・知力:27.2
・魅力:28.7
・資産(現金):¥289,000
・投資中:¥60,000(評価額:¥65,500/利益:+¥5,500)
・総資産:¥354,500
・SP:13.0
・スキル:14(展開可能)
・称号:注目の存在/ヒーロー/聖夜を共に
・特別イベント:水城遥との関係(進行中/好感度:78)/一ノ瀬凛との関係(進行中/好感度:63)

数字がまた一歩、俺を押し上げていた。
テストの結果のおかげか、一ノ瀬凛の好感度も上がっている。

(……偶然なんかじゃない。これが、今の俺だ)
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