クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

文字の大きさ
48 / 130

第48話 急成長した俺、街でスカウトされてフォトジェニック覚醒

しおりを挟む
四月二十日。放課後の商店街は、制服の群れと観光客でごった返していた。ビルのガラスに映る自分は、見慣れないくらい背が高く、肩が広い。春休みの終盤から、ほんの少しずつ――いや、“確かに”変わってきている。

「君、そこの君! ちょっといい?」

振り向くと、スーツ姿の男性が名刺を差し出していた。笑顔は柔らかいのに、目だけは鋭く本気で、まるで値踏みするように俺を見ている。

「白峰高校の子だよね? 月刊ルミエール編集部の者です。テストでいいから、スタジオで何枚か撮らせてもらえないかな。背高いし、雰囲気がある」

名刺は本物だ。雑誌名にも覚えがある。
「俺なんかでいいんですか?」
「なに言ってるの!それだけかっこよかったら、今までもスカウトされた経験あるでしょ?」
「いや……俺は……」

少し迷ったが、今の自分がどれだけのものか知りたくて、好奇心が勝った。

「……行ってみます」

気づけば、そう答えていた。



案内されたスタジオは、想像の何倍も“本格的”だった。天井を埋め尽くすライト、忙しそうに動くスタッフ、シャッターの乾いた連射音。空気そのものに緊張が混じっていた。

「じゃ、ここに立って。肩は力抜いて、視線は少し上」

カメラマンがファインダー越しに指示を出す。いざレンズが向くと、体が石みたいに固まった。笑顔が作れない。腕、どこに置けばいい?

(やばい、動けない)

その瞬間、視界に淡くウィンドウが浮いた。

【特別クエスト発生】
・タイトル:「フォトジェニック・チャレンジ」
・内容:撮影で自然体の魅力を引き出せ
・報酬:魅力+2/SP+1

【スキル解禁】フォトジェニック(SP-10)
・効果:写真映え+/姿勢補正+/身長+3cm

(……このままじゃ撮影が中断しかねない……これだ!)

【スキル習得:フォトジェニック(SP-10)】

空気が変わった。「美しく立つ」ための最適解が、スッと頭に入ってくる。アゴは引きすぎず、目線はわずかに上。背筋が伸び、視界がほんの少し高くなる。

「……いい! 動かないで、そのまま」

最初の一枚。シャッター音の余韻が、さっきまでとはまるで違う重さでスタジオに落ちた。

「今の最高!ちょっと肩、右へ。そう。首は長く、でも力は抜いて」

パン、パン、パン――光が弾け、カメラマンの声が熱を帯びていく。

「笑いすぎないで、目で笑う。そう、それ!」

フォトジェニックの補正が、最良のラインに導くたび、レンズの奥で誰かが息を呑む気配がした。

「一旦チェックするね」

モニターに並んだ連写のサムネイルを見た編集者が、思わず声を漏らす。
「……化けたな。街で見た時より、全然いい」

そのとき、横で見ていた女の子が、ぱちぱちと手を叩いた。

「今のやば。目線、超よかった」

振り向けば、ライトの輪郭をまとったギャル系の少女。くっきりした二重、すっきりした顎のライン、少し大きめのピアス。茶色の巻き髪が光を拾って揺れ、艶のある肌が笑みで一瞬にして場の温度を上げる。

「編集さんから聞いたけど、撮影初めてなんでしょ?すごいじゃん」

「ありがとう……俺は佐久間陽斗……君は?」

「星野瑠奈。高校一年。――白峰の」

その自己紹介だけで、すぐに理解できた。俺と同じ白峰高校で、一年生。
(……ってことは、俺の後輩か)

「俺も同じとこ。二年だけど」

「白峰の二年?……え、佐久間って、噂の?」
「噂?」

「私あんま学校行ってないけどさ、それでも聞いたよ。“二年にめっちゃイケメンがいる”って。佐久間先輩のことだよね」

挑むような、楽しむような笑顔。

意識した瞬間、ウィンドウが開く。

【ステータス:星野 瑠奈】
・年齢:15
・学年:白峰高校一年
・身長:162.3cm
・体重:47.5kg
・体脂肪率:17%
・筋力:12.0
・耐久:12.5
・知力:9.0
・魅力:46.0
・資産:¥75,000
・スキル:ポージングLv4/表情演技Lv3/SNS拡散力Lv2

(魅力46!?……すごいな)

俺が黙ると、瑠奈が小首を傾げる。
瞬間、カメラマンが反応した。

「星野ちゃん、一枚いこっか!」

モニターに出た瑠奈は、さっきまでよりさらに“一段上の可愛さ”だった。スタッフが「あ、今の表情いい」と囁き、編集が小さくガッツポーズを作る。

「先輩、私どうだった?」

「……可愛かった……かな……」

「あはは!正直。……ね、連絡先、交換しておこ?」

「え、いきなり?」
「いきなりだよ。私、学校なかなか来れないからさ。雑誌のスケジュール優先になっちゃう。だから――先輩からもたまに呼んで。モデル仲間でしょ?」

「モデル仲間……ね。じゃ、交換」
お互いにスマホを出し、連絡先を交換する。

「佐久間くん、もう一カットいける?」

編集の声。俺は頷いた。
「――お願いします」

フォトジェニックの補正で、次の一歩は迷わない。相手の指示を先回りするように動くたび、現場のテンポが加速する。

「OK、今日はここまで。ありがとう。テストのはずが、十分“使える”素材、撮れちゃったな」

「もし良かったらまた撮らせてくれないかな?学校優先で進めるから安心して」

名刺がもう一枚増え、軽く頭を下げる。汗ばむ手のひらに、まだ鼓動が残っていた。

【特別クエスト達成】
・報酬:魅力+2/SP+1



スタジオを出ると、明るい声が聞こえてくる。

「先輩!」

階段で待っていた瑠奈が、駆け寄ってくる。軽い香水の匂いがふわりと揺れた。

「今日のほんと良かった。……ね、先輩って、写真より“動いてる”ほうがかっこいいタイプだよね」

「嬉しいけど、よくわからない……そもそもあんなふうに撮られるの初めてだし」

「ほんとに初めて?初めての“空気”じゃなかった。絶対“人を惹きつける”才能あるよ。私、そういうの嗅ぎ分けるの得意なんだ。しかもただのイケメンじゃなくて、なんか雰囲気ある」

得意げに胸を張る仕草が、年相応で可笑しい。思わず笑ってしまった。

「じゃ、またね。見かけたら声かけるね」
「俺も。――今日、ありがとう」
「こちらこそ!……先輩、マジでかっこよかった」

手を振って去っていく小さな背中を見送りながら、胸の内側で、まだ光がちりちりと残っているのを感じた。



【現在のステータス(四月二十日・撮影後)】
・名前:佐久間 陽斗
・年齢:16
・身長:180.8cm(フォトジェニック補正+3.0)
・体重:63.0kg
・体脂肪率:9.0%
・筋力:25.7
・耐久:26.5
・知力:27.2
・魅力:35.2
・資産(現金):¥289,000
・投資中:¥60,000(評価額:¥65,500/利益:+¥5,500)
・総資産:¥354,500
・SP:2
・スキル:16(展開可能)
・称号:注目の存在/ヒーロー/聖夜を共に/女子人気独占
・特別イベント:
 水城遥(進行中/好感度:87/好意)
 一ノ瀬凛(進行中/好感度:71/好意)
 星野瑠奈(開始/好感度:60/信頼)

(まさか俺がモデルなんてな――)

夜風が少し冷えた。けれど、胸の中の熱は、まるでライトの残光みたいに消えなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

ドリフトシンドローム~魔法少女は世界をはみ出す~【第二部】

音無やんぐ
ファンタジー
漂泊症候群―ドリフトシンドローム―どこにも居場所がない。そう感じる少女達は世界という枠組みから少しずつ外れ、いずれにじみ出るようにさ迷いを始める。  彼女たちは星石と呼ばれるこの世ならざる貴石に見いだされ、あるいは魅入られ、魔法少女へと変身する。  星石は少女達の希い(ねがい)に応えてくれる。ある者は絶大な力を手にし、ある者は特異な魔法を駆使する。 けれど少女達がいつでも本当に求めているものは『居場所』。  時に笑い、時にぶつかり合いながら、星石がくれたのは道を真っ直ぐに歩むための力。  少女達は旅路の果てに、けして『居場所』を見つけない。これは少女達が、『居場所』を自ら創り出すための物語。 ◇ ◇ ◇  桜の季節を少し過ぎたある日のこと。  高校一年生の少女、名字川白音はアルバイトの帰り途、夜闇の公園で悲鳴を聞いた。それは粘着質の奇妙な生物『スライム』に襲われる女性のものだった。  この世のものならざる生物からなんとか女性を助け出した白音だったが、今度は自身がスライムに絡め取られ、身動きができなくなってしまう。  そこへ駆けつけた白音の幼なじみ、ヤヌル佳奈が白音を助けるため、魔法少女へと変身する。  初めて見る親友の変身だったが、しかし白音はそれを半ば予期していた。佳奈こそが白音の憧れていた魔法少女なのではないかと、ずっとジト目で疑っていたのだ。  そして親友にいざなわれ(うまくしてやられ)、自身も魔法少女へと変身する。親友が待ち望んでいた無敵の魔法少女、名字川白音の誕生だった。 ◇ ◇ ◇ 『第二部、異世界編スタートです』 ※毎週一話ずつ、木曜日19時頃に公開させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ※※挿絵注:一部、挿絵があります。挿絵は生成AIによって作成しております。苦手な方は挿絵非表示の設定にしてご覧いただけますようお願い致します。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

終末世界の解析者~現代ダンジョンに滅ぼされた世界で最強クラフトスキルを駆使して送る、快適楽園スローライフ!~

はむかつ
ファンタジー
目が覚めたら世界が滅んでいた!? 世界中に突如現れた現代ダンジョンにより、世界人口の大半が死滅した。 植物が侵食し都市機能がマヒした世界で、生き延びたわずかな人同士で物資を奪い合うディストピア。 研究施設で目覚めた朝霧ユウトは、そんな終末世界で生き延びるために最適なスキル『解析・修理・復元』が使えるようになっていた。 物資調達に来ていた美人姉妹との出会い。 極悪な集落との決別、新しい拠点づくり。 現代知識を駆使した快適なスローライフ。 次々に増える居住者(ハーレム要素あり) 極悪な元集落へのざまぁ展開。 そしてダンジョンの謎、この世界の行く末は……。 個性豊かなキャラクターとともにサバイバルを生き抜いていく、時にシリアス、時にほのぼのなストーリー、ここに開幕。

処理中です...