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第15話 負けヒロインは鉄の馬車へ
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実は、こんな時間に一人で外出したことなんてなかった私は、若干落ち着かない気持ちでいた。
幼いころからとんでもない美人だった私は親からも「美人すぎて誘拐されるから一切隙を見せるな余裕のない振りをしろ」「可愛すぎて周りが狂うから愛嬌を振りまくより高貴でいることを選べ」「歩くだけで衆目を集めるだろうから不快だったら睨み返せ」と一般家庭でありながら高嶺の花の英才教育を受けていた。
新宿だなんて、爆美女女子高生が行くべきではない地域トップ3には確実に入るだろう。深夜初心者が行くべきではない場所である。一体コイツはそんな危険な場所にどんなつもりで行くんだろうか。
「大丈夫。私、何かあった時用にGPS付きの防犯ブザー持たされてるの」
私の不安を察してか、林檎が見たことのない銀色の四角形の物体を見せてきた。小学生の時使っていた黄色のチープな防犯ブザーとは明らかに性能が違いそうだ。
「ネムりん不安~?」
キモいぐらいの観察眼を持つ林檎には当たり前にお見通しだったようだ。落ち着かない様子の私から、ソワソワとした不安感を感じ取ったのだろう。
「怖いんでしょ。ママのいるお家帰る~?それとも手ぇつないであげよっかぁ?」
これだけの洞察力を持ってなお、気遣いに使わないのは逆にすごい。どれだけ性根が腐っているかがよくわかる。
林檎はニヤニヤと煽りながら私の手に触れる。腹が立って「ふんっ」と振り払った。
「アンタを一人で町に放つ方が不安よ」
「え、やさし~」
「別に心配で言ってんじゃないんだから!アンタみたいな悪の種を夜の街に放ったらそのまま開花して大悪党になりそうだから忠告してんのよ!」
「ふふ、世間ではそれを心配って言うんだよ」
何、ニヤニヤ満足そうにしてんのよ。この嫌味の通じなさは泡歌並みだわ。
「……不安と言えば、ICカードにお金入ってたかしら。新宿までって何円?」
「あーそれも大丈夫大丈夫。改札からは出ないから」
「は?改札から出ないの?」
この町から出ている電車でたどりつく新宿駅の改札は、改札内には遊べるような場所はなかったはずだ。
薄々勘づいていたが、やはり林檎はただ純粋に夜遊びがしたかったわけではなく、何か別の目的があるようだった。
「何が目的?私に隠す必要ないでしょ」
「バレてたかぁー」
「バレてるも何も、アンタが何の理由もなく私を夜遊びに誘うわけないでしょ」
「そう?私、ネムりんと遊びたいなーって思ってたよ」
「はっ、白々しい……」
電車にはまだ、会社帰りらしき人がたくさんいて、5、6人は立っているような状態だった。堂々と座る私達は、次々と変わる電光掲示板を注視しながらボソボソと喋る。
一つでも乗り間違えたことによって下手したら終電を逃すような時間だったから。
「理由がわからないのに付き合ってくれたんだね、ネムりんってなんやかんやお人好し。おーくんみたい」
「誰かから桜路要素を見出すことで桜路の成分補給しようとしてるわけ?キモ」
「誰にでも言うわけじゃないもん。おーくんは唯一無二」
「へぇ、宿敵にかける言葉とは思えないわね」
「これでも最上級の褒め言葉なんだけどなぁ」
「煽りにしか聞こえないっての」
その時、『新宿~新宿~』と電車内のアナウンスが耳に入った。
「あぁクソっ、目的、聞く前に着いちゃったじゃない」
「ふふ、大丈夫。これからわかるから」
林檎はホームを降りると、すぐ向かいの折り返しの電車に乗り込んだ。
「こっちおいで」
林檎は振り返ってそう言うと、キョロキョロと車内を見渡しながら次の車両、次の車両と進んでいく。「いいからさっさと目的を言いなさいよ」と文句を言おうとしたところで林檎は立ち止まった。
「見ぃつけた」
林檎が、本当にかくれんぼでもしていたかのように、楽し気につぶやいた。
幼いころからとんでもない美人だった私は親からも「美人すぎて誘拐されるから一切隙を見せるな余裕のない振りをしろ」「可愛すぎて周りが狂うから愛嬌を振りまくより高貴でいることを選べ」「歩くだけで衆目を集めるだろうから不快だったら睨み返せ」と一般家庭でありながら高嶺の花の英才教育を受けていた。
新宿だなんて、爆美女女子高生が行くべきではない地域トップ3には確実に入るだろう。深夜初心者が行くべきではない場所である。一体コイツはそんな危険な場所にどんなつもりで行くんだろうか。
「大丈夫。私、何かあった時用にGPS付きの防犯ブザー持たされてるの」
私の不安を察してか、林檎が見たことのない銀色の四角形の物体を見せてきた。小学生の時使っていた黄色のチープな防犯ブザーとは明らかに性能が違いそうだ。
「ネムりん不安~?」
キモいぐらいの観察眼を持つ林檎には当たり前にお見通しだったようだ。落ち着かない様子の私から、ソワソワとした不安感を感じ取ったのだろう。
「怖いんでしょ。ママのいるお家帰る~?それとも手ぇつないであげよっかぁ?」
これだけの洞察力を持ってなお、気遣いに使わないのは逆にすごい。どれだけ性根が腐っているかがよくわかる。
林檎はニヤニヤと煽りながら私の手に触れる。腹が立って「ふんっ」と振り払った。
「アンタを一人で町に放つ方が不安よ」
「え、やさし~」
「別に心配で言ってんじゃないんだから!アンタみたいな悪の種を夜の街に放ったらそのまま開花して大悪党になりそうだから忠告してんのよ!」
「ふふ、世間ではそれを心配って言うんだよ」
何、ニヤニヤ満足そうにしてんのよ。この嫌味の通じなさは泡歌並みだわ。
「……不安と言えば、ICカードにお金入ってたかしら。新宿までって何円?」
「あーそれも大丈夫大丈夫。改札からは出ないから」
「は?改札から出ないの?」
この町から出ている電車でたどりつく新宿駅の改札は、改札内には遊べるような場所はなかったはずだ。
薄々勘づいていたが、やはり林檎はただ純粋に夜遊びがしたかったわけではなく、何か別の目的があるようだった。
「何が目的?私に隠す必要ないでしょ」
「バレてたかぁー」
「バレてるも何も、アンタが何の理由もなく私を夜遊びに誘うわけないでしょ」
「そう?私、ネムりんと遊びたいなーって思ってたよ」
「はっ、白々しい……」
電車にはまだ、会社帰りらしき人がたくさんいて、5、6人は立っているような状態だった。堂々と座る私達は、次々と変わる電光掲示板を注視しながらボソボソと喋る。
一つでも乗り間違えたことによって下手したら終電を逃すような時間だったから。
「理由がわからないのに付き合ってくれたんだね、ネムりんってなんやかんやお人好し。おーくんみたい」
「誰かから桜路要素を見出すことで桜路の成分補給しようとしてるわけ?キモ」
「誰にでも言うわけじゃないもん。おーくんは唯一無二」
「へぇ、宿敵にかける言葉とは思えないわね」
「これでも最上級の褒め言葉なんだけどなぁ」
「煽りにしか聞こえないっての」
その時、『新宿~新宿~』と電車内のアナウンスが耳に入った。
「あぁクソっ、目的、聞く前に着いちゃったじゃない」
「ふふ、大丈夫。これからわかるから」
林檎はホームを降りると、すぐ向かいの折り返しの電車に乗り込んだ。
「こっちおいで」
林檎は振り返ってそう言うと、キョロキョロと車内を見渡しながら次の車両、次の車両と進んでいく。「いいからさっさと目的を言いなさいよ」と文句を言おうとしたところで林檎は立ち止まった。
「見ぃつけた」
林檎が、本当にかくれんぼでもしていたかのように、楽し気につぶやいた。
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