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魔王が昨日の約束通り朝食を作ってくれた。
本当に義理堅いな。魔王なのに。農村時代の隣のお姉さんなんてしょっちゅう約束反故してたぞ。人間より人間出来てる。
俺にエロい事を仕掛けてさえこなければなっ!
俺は朝っぱらから盛った魔王との攻防を思い出し、情けなく肩を落とした。
そしてテーブルの上の朝食?らしきお皿に乗った物体を見て更に肩を落とした。
うん。知ってた。
魔王に期待した俺が馬鹿だったんだよな。
「……魔王、これ何?」
席に着いて「いただきます」を一応した俺は、まず目の前に堂々と置かれた黒と白色半透明と黄色が三重奏を奏でる物体をフォークで刺した。
「?ユタも作っておるだろう。目玉焼きだ」
めだまやき。
下は黒々。上は白色半透明の上にプルンと揺れる黄色い生の黄身。半熟?一応半熟?なのか?ほぼ生玉子に焦げが付いたこの物体。半熟?なの?逆にどうやって作ったか知りたい。
俺は胸を張る魔王をチランと見て、自信満々にムフンとドヤ顔を決める魔王に何も言えなくなる。
頑張って作ってくれたんだろうけどなぁ。
意を決して一口で食べた。……残したら食べれなそうだったから……。
……。うわぁ、生卵が焦げ焦げしい味するよぅ。何の味付けもしてないし。
「……これは?」
何とか丸呑みの勢いで胃に収めた俺は、次にボールに乗った野菜ちゃん。の、成れの果てを見た。
「どこからどう見てもサラダであろう」
さらだ。
握り潰されたかの様な散り散りの細々のキャベツちゃん。皮付き葉っぱ付きで二口大に切られた人参ちゃん。しかも不揃い。茶色い皮ごと輪切りされた玉葱ちゃん。そしてチラッとキッチンに目をやれば残骸となったまな板……。
俺はゴクリと唾を飲み込み人参ちゃんを口に運ぶ。
かりん。
流石俺の人参ちゃん。こんな成りになっても良い歯応えに良い甘みだ。
ドレッシングの類は何も掛かっていないけど。
「……朝から肉の丸焼き、なの?」
「っふ。男なら肉であろう」
うん。肉は好きよ。
でも流石に朝から丸焼きはちょっと……。
もう一度チラリと魔王を見れば物凄く誇らしげに胸を張ってらっさる。
「…………。うん……ありがとぉ、美味しい?です……」
心で流した涙に蓋をしてお礼を言えば、魔王は子供の様にニカッと笑った。可愛い。
初めて作った子供の手料理って……、感動が勝つから何でも美味しいよネ。
「どれ、では我も」
そう言って目玉焼き?を口にした魔王は……暫く石像と化していた。
朝食の一件から魔王は貝になってしまった。
「魔王?」
「……」
余程ショックだったんだろう。何でも出来て当たり前な環境にいたっぽいしな。
憮然と黒い圧を周りに纏わり付かせる魔王は正直怖い。でもその理由を知ってるだけに可愛いとも思ってしまう。
だってあの北の魔王が料理に失敗して拗ねてるんだぞ?そら可愛くもなるわ。
「大丈夫だよ。気持ちが美味しかったから、ね」
「……」
「初めは誰だってそんなもんだって。これから一緒に覚えていこ?」
コクリ。
あ、やっと反応返してくれた。
悔しかったのか、俺の言葉に前向きに闘志を燃やしてくれたようだ。
「ユタ……」
「ん?なに、」
ふらりと近付き俺の目を見てくる魔王に、小さい子を宥めてる気分になってた俺は完全に油断していた。
ちゅ。
……。ん?
軽いリップ音の意味を理解するのに数秒掛かった。
「んなっ!?」
「ユタ」
「ん!」
驚き大口開ける俺に、今度は深くその唇を併せてくる魔王。
強張り固まる俺の腰をそのデカい腕で抱き寄せて、もう片方の手で首筋を覆われ上を向かされる。身長差故に首が痛い。
クソがっ!高身長者はみんな爆ぜてしまえ!
「んっはぁっ」
分厚い舌に絡められ、体勢故に呼吸もままならず良い様に翻弄されてしまい焦る。
ホントもう何なんだよこの魔王は!
本当に義理堅いな。魔王なのに。農村時代の隣のお姉さんなんてしょっちゅう約束反故してたぞ。人間より人間出来てる。
俺にエロい事を仕掛けてさえこなければなっ!
俺は朝っぱらから盛った魔王との攻防を思い出し、情けなく肩を落とした。
そしてテーブルの上の朝食?らしきお皿に乗った物体を見て更に肩を落とした。
うん。知ってた。
魔王に期待した俺が馬鹿だったんだよな。
「……魔王、これ何?」
席に着いて「いただきます」を一応した俺は、まず目の前に堂々と置かれた黒と白色半透明と黄色が三重奏を奏でる物体をフォークで刺した。
「?ユタも作っておるだろう。目玉焼きだ」
めだまやき。
下は黒々。上は白色半透明の上にプルンと揺れる黄色い生の黄身。半熟?一応半熟?なのか?ほぼ生玉子に焦げが付いたこの物体。半熟?なの?逆にどうやって作ったか知りたい。
俺は胸を張る魔王をチランと見て、自信満々にムフンとドヤ顔を決める魔王に何も言えなくなる。
頑張って作ってくれたんだろうけどなぁ。
意を決して一口で食べた。……残したら食べれなそうだったから……。
……。うわぁ、生卵が焦げ焦げしい味するよぅ。何の味付けもしてないし。
「……これは?」
何とか丸呑みの勢いで胃に収めた俺は、次にボールに乗った野菜ちゃん。の、成れの果てを見た。
「どこからどう見てもサラダであろう」
さらだ。
握り潰されたかの様な散り散りの細々のキャベツちゃん。皮付き葉っぱ付きで二口大に切られた人参ちゃん。しかも不揃い。茶色い皮ごと輪切りされた玉葱ちゃん。そしてチラッとキッチンに目をやれば残骸となったまな板……。
俺はゴクリと唾を飲み込み人参ちゃんを口に運ぶ。
かりん。
流石俺の人参ちゃん。こんな成りになっても良い歯応えに良い甘みだ。
ドレッシングの類は何も掛かっていないけど。
「……朝から肉の丸焼き、なの?」
「っふ。男なら肉であろう」
うん。肉は好きよ。
でも流石に朝から丸焼きはちょっと……。
もう一度チラリと魔王を見れば物凄く誇らしげに胸を張ってらっさる。
「…………。うん……ありがとぉ、美味しい?です……」
心で流した涙に蓋をしてお礼を言えば、魔王は子供の様にニカッと笑った。可愛い。
初めて作った子供の手料理って……、感動が勝つから何でも美味しいよネ。
「どれ、では我も」
そう言って目玉焼き?を口にした魔王は……暫く石像と化していた。
朝食の一件から魔王は貝になってしまった。
「魔王?」
「……」
余程ショックだったんだろう。何でも出来て当たり前な環境にいたっぽいしな。
憮然と黒い圧を周りに纏わり付かせる魔王は正直怖い。でもその理由を知ってるだけに可愛いとも思ってしまう。
だってあの北の魔王が料理に失敗して拗ねてるんだぞ?そら可愛くもなるわ。
「大丈夫だよ。気持ちが美味しかったから、ね」
「……」
「初めは誰だってそんなもんだって。これから一緒に覚えていこ?」
コクリ。
あ、やっと反応返してくれた。
悔しかったのか、俺の言葉に前向きに闘志を燃やしてくれたようだ。
「ユタ……」
「ん?なに、」
ふらりと近付き俺の目を見てくる魔王に、小さい子を宥めてる気分になってた俺は完全に油断していた。
ちゅ。
……。ん?
軽いリップ音の意味を理解するのに数秒掛かった。
「んなっ!?」
「ユタ」
「ん!」
驚き大口開ける俺に、今度は深くその唇を併せてくる魔王。
強張り固まる俺の腰をそのデカい腕で抱き寄せて、もう片方の手で首筋を覆われ上を向かされる。身長差故に首が痛い。
クソがっ!高身長者はみんな爆ぜてしまえ!
「んっはぁっ」
分厚い舌に絡められ、体勢故に呼吸もままならず良い様に翻弄されてしまい焦る。
ホントもう何なんだよこの魔王は!
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