24 / 73
前章
24
しおりを挟む
「ユタ!!」
「魔王!魔王―――――!!やだ!嫌だっ!魔王!魔王っ!」
口に土が入っても懸命に叫んでいた。この時の記憶は殆ど無い。
ただ、後で聞いた話だと、号泣して魔王を求めてあらん限りに叫んでいたらしい。
それは魔王に救われ、魔王にしがみ付き、宥められて眠りに落ちるまで恐慌状態が収まらなかった。
◇魔王サイド◇
ユタが肥料を取りに家の裏手へ向かった。
我はその間に追肥する準備を任されていた。それが間違いだったのだ。
テンがいる今。ユタから目を離すべきでは無かった。無駄に力が有り余っている故に慢心していたのだ。どうあってもユタ一人くらい守れると。
我はこの時の傲岸無知な己を生涯呪い、深く嫌悪する。
「っや、や、やだああああ!!魔王―――――!!!!」
ユタの叫びに我は気付くより先に体が動いていた。
ユタの気配は何処にいてもわかる。その気配が尋常でない怯えの色を纏い、我を求めて彷徨っていた。
求められたことへの愉悦は感じなかった。
それよりユタを守る方が大事だと、それしか考えられなかった。
「ユタ!!」
向かった筈の倉庫には気配は無く、代わりに森の奥にテンの気配と共にあった。
茂みを掻き分ける、などというまどろっこしい事はしない。我が進む先に阻めるものなどありはしない。
初めにユタの叫びを聞いてから瞬き程の時を有して辿り着いたその場所。そこでテンに襲われているユタを目にした瞬間。
ズドンッッッ!!!!!
我は渾身の力でテンを弾き飛ばしていた。
テンがどうなったかなど見る気も無い。我の視線は初めからユタのみにある。
幸い一線を守るのには間に合ったらしい。
魅力的な尻を突き出してはいるが、その秘孔は入り口こそ汚い液が付着しているもののその中まで犯された形跡は無かった。
支えを失ったユタの身が沈み、守る様に丸まろうとしている。未だ叫び続ける所を見るに状況把握も出来ない程の精神的負荷が掛かっていると予測出来る。
「ユタ。大丈夫だ。もう大丈夫だ。我だぞ。呼んだであろう」
刺激しないよう細心の注意を払ってユタの衣服を整えゆっくり上半身を起こしてやる。
「うっあ゛あ゛っ!やぁ!魔王!魔王―!」
我だと気付けないのか、身を捩って暴れるユタ。土と涙でぐちゃぐちゃの顔を我の胸に柔く抱き込み、暴れるままにさせてやる。
「大丈夫。我だぞ。魔王だ。北の魔王が傍に居るぞ」
暴れるのを阻害しない様に頭を撫で続ける。
暫く宥め続けていれば、ユタは揺れ動く瞳でゆるゆると我を見上げた。
「あ゛あ゛あっ、うっう~っ!!」
やっと我を認識できたのか、くしゃりと顔を歪ませたユタ。両手でしっかりと我の腰を掴むと、我の胸に顔を埋めて声を殺して号泣した。
落ち着くまで柔く撫ぜていれば、疲れたのかだんだんと声が弱々しくなって来た。そうしてコトリと気を失う様に眠りについたのだ。
脱力したユタを両手で大事に抱え立ち上がった我は、背後でしたカサリと葉を踏む音に、しかし振り返りはしなかった。
「テンよ。申し開きは後で聞く。覚悟しておけ」
代わりに燻る怒りを静かに言葉に乗せる。
テンは殺気の無い純粋な怒りの感情に狼狽えを見せた。
我もここまで純然な怒気を持ったのは初めてだ。ユタを恐怖させた罪は万死に値する。楽に死ねると思うなよ。
テンの返事を聞くことなくユタを寝室へ寝かせるべく家に向かう。蒼褪めた顔が痛々しく見るに堪えなかった。
せめて夢の中だけでも平穏たれと、そっと涙が残る眦にキスを落とした。
「魔王!魔王―――――!!やだ!嫌だっ!魔王!魔王っ!」
口に土が入っても懸命に叫んでいた。この時の記憶は殆ど無い。
ただ、後で聞いた話だと、号泣して魔王を求めてあらん限りに叫んでいたらしい。
それは魔王に救われ、魔王にしがみ付き、宥められて眠りに落ちるまで恐慌状態が収まらなかった。
◇魔王サイド◇
ユタが肥料を取りに家の裏手へ向かった。
我はその間に追肥する準備を任されていた。それが間違いだったのだ。
テンがいる今。ユタから目を離すべきでは無かった。無駄に力が有り余っている故に慢心していたのだ。どうあってもユタ一人くらい守れると。
我はこの時の傲岸無知な己を生涯呪い、深く嫌悪する。
「っや、や、やだああああ!!魔王―――――!!!!」
ユタの叫びに我は気付くより先に体が動いていた。
ユタの気配は何処にいてもわかる。その気配が尋常でない怯えの色を纏い、我を求めて彷徨っていた。
求められたことへの愉悦は感じなかった。
それよりユタを守る方が大事だと、それしか考えられなかった。
「ユタ!!」
向かった筈の倉庫には気配は無く、代わりに森の奥にテンの気配と共にあった。
茂みを掻き分ける、などというまどろっこしい事はしない。我が進む先に阻めるものなどありはしない。
初めにユタの叫びを聞いてから瞬き程の時を有して辿り着いたその場所。そこでテンに襲われているユタを目にした瞬間。
ズドンッッッ!!!!!
我は渾身の力でテンを弾き飛ばしていた。
テンがどうなったかなど見る気も無い。我の視線は初めからユタのみにある。
幸い一線を守るのには間に合ったらしい。
魅力的な尻を突き出してはいるが、その秘孔は入り口こそ汚い液が付着しているもののその中まで犯された形跡は無かった。
支えを失ったユタの身が沈み、守る様に丸まろうとしている。未だ叫び続ける所を見るに状況把握も出来ない程の精神的負荷が掛かっていると予測出来る。
「ユタ。大丈夫だ。もう大丈夫だ。我だぞ。呼んだであろう」
刺激しないよう細心の注意を払ってユタの衣服を整えゆっくり上半身を起こしてやる。
「うっあ゛あ゛っ!やぁ!魔王!魔王―!」
我だと気付けないのか、身を捩って暴れるユタ。土と涙でぐちゃぐちゃの顔を我の胸に柔く抱き込み、暴れるままにさせてやる。
「大丈夫。我だぞ。魔王だ。北の魔王が傍に居るぞ」
暴れるのを阻害しない様に頭を撫で続ける。
暫く宥め続けていれば、ユタは揺れ動く瞳でゆるゆると我を見上げた。
「あ゛あ゛あっ、うっう~っ!!」
やっと我を認識できたのか、くしゃりと顔を歪ませたユタ。両手でしっかりと我の腰を掴むと、我の胸に顔を埋めて声を殺して号泣した。
落ち着くまで柔く撫ぜていれば、疲れたのかだんだんと声が弱々しくなって来た。そうしてコトリと気を失う様に眠りについたのだ。
脱力したユタを両手で大事に抱え立ち上がった我は、背後でしたカサリと葉を踏む音に、しかし振り返りはしなかった。
「テンよ。申し開きは後で聞く。覚悟しておけ」
代わりに燻る怒りを静かに言葉に乗せる。
テンは殺気の無い純粋な怒りの感情に狼狽えを見せた。
我もここまで純然な怒気を持ったのは初めてだ。ユタを恐怖させた罪は万死に値する。楽に死ねると思うなよ。
テンの返事を聞くことなくユタを寝室へ寝かせるべく家に向かう。蒼褪めた顔が痛々しく見るに堪えなかった。
せめて夢の中だけでも平穏たれと、そっと涙が残る眦にキスを落とした。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
魔王の求める白い冬
猫宮乾
BL
僕は交通事故に遭い、別の世界に魔王として転生した。最強の力を貰って。だから何度勇者が訪れても、僕は死なない。その内に、魔王はやはり勇者に倒されるべきだと思うようになる。初めはそうではなかった、僕は現代知識で内政をし、魔族の国を治めていた。けれど皆、今は亡い。早く僕は倒されたい。そう考えていたある日、今回もまた勇者パーティがやってきたのだが、聖剣を抜いたその青年は、同胞に騙されていた。※異世界ファンタジーBLです。全85話、完結まで書いてあるものを、確認しながら投稿します。勇者×魔王です。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる