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魔王に鍛えて貰い始めてから月日が過ぎていく。
魔王の指導が良いのか、バランスが悪かった俺の筋肉が綺麗に整っていくのが面白い。
少しは魔王の友達として誇らしく思って貰える様になったかな。
慣れない実戦の指導だけど、告白するならせめて隣に立っても恥ずかしくない自分でいたい。そう思っていられるから頑張れる。
「どお?大分割れてきたと思うんだけど」
基準が魔王なだけに今がどのレベルかわからない。だから魔王に触って確かめて貰おうと服を捲って腹を突き出した。
好きな人に見せるのは恥ずかしいと思うかもしれないが、魔王には既にあられもない姿を沢山見られてる。今更だ。
なのに何で魔王がたじろぐんだよ。……あ。もしかして。
「視線を逸らす程まだまだ見れないのか」
理由に思い当ってガックシ項垂れ溜息を吐いた。
「違う。我はユタを抱きたいと思っておるんだぞ。その様に無防備に誘うな」
「へ!?さ、誘うって、筋肉の付き具合見て貰うだけだろ」
思ったのと違う理由にドキリと心臓が高鳴る。
最近めっきり触れなくなったからもう抱く対象じゃなくなったかと思ってた。そうか、まだ抱きたいって思ってくれてたんだ。嬉しい。
魔王は眉根を寄せて一瞬険しい顔をしたけど、その直ぐ一瞬で悟りを開いた菩薩の顔をして、瞬きをしてる間に精悍で漢前な顔になってた。
「そうだな」
俺は訝しんで見上げていたけど、魔王は平気な顔で俺の腹に触れてくる。
今の一瞬の変化。何か思い悩んでる風に見えたんだけどな。気の所為か?
魔王は手の平全体で俺の筋肉を確かめている。厭らしくない触り方だ。お陰で性的興奮は訪れない。けど魔王の大きな手にドキドキはしてる。
これ。鼓動だけでバレそうだな。
魔王は俺の筋肉を確かめると、「っふ」と笑みを漏らした。
「ユタの頑張りが伝わってくる」
「当たり前だろ。俺は中途半端な事はしない主義だ」
平常心。平常心。そう思っていたのに……。
魔王は何故か俺の頬に手を掛けて顔を近付けて来た。
久し振りに来るか!?とドキドキして身構える。もしされたら応えてしまいそうだ。
「何事にも一生懸命なのはユタの魅力だな」
する、しないの葛藤をしていたのに、寸前でピタリと止めてしまった。そして顔を離して踵を返した。
「そろそろ昼餉の準備をせねばテンが喧しいな」
普段はテンの事を気になんてしないくせに。
魔王はどんな顔して離れたのか。俺は無性に腹が立ってきた。自分自身に対して。
「魔王」
「どうした?」
呼び声に振り返る魔王は、落ち着いた大人の男の顔をしていた。
俺は、何時からこんなに我儘になったんだろうな。
「何時まで俺に気を遣うんだ」
一歩近付き魔王の腕を取る。
笑って聞いたけど、その笑みが歪んでる自覚がある。
「ユタ?」
魔王が困ってる。
「魔王は、セックスが好きなんだろ」
否定の言葉は無い。
俺を見る目は真っ直ぐだけど、今の俺には瞳の奥の揺らぎが見える。
こんなにも気を使わせていた俺に腹が立つ。
どんな状態でも魔王はキスだけは我慢しなかった。
今のは絶対にキスする体勢だった。それなのに途中で止めたんだ。魔王の意志じゃない。
俺の心を気遣ってくれたんだろ?俺は全然平気なのに。
「俺。魔王が好きだ」
「我もだ。だから友として好いてくれるユタを無碍には出来ない」
突然の告白。なのに魔王の表情は変わらない。
魔王はずっと惚れろと言っていた癖に。これでわからないんだな。それともそれすら気遣いの内?
「違う」
「違う?」
「俺は」
好きな人に気遣わせてばかりなんて。
「魔王を恋愛対象として好きだと言っている」
男が廃る。
◇魔王サイド◇
夢を見ているのだろうか。
「魔王を恋愛対象として好きだと言っている」
ユタが我に愛を伝えている。
その目はとても真剣で、真っ直ぐ射貫く様に見上げてくる。ユタの青い瞳が夏の光に弾けて煌めく。とても綺麗だ。
そのソバカスの散る頬は俄かに色付き、口は真一文に引き結ばれている。
その事が我に実感を伴わせてくれる。
ユタが、我を、好いている。
じわりと沁み込んだ言葉を脳で、感情で理解するのに少しばかりの時を要した。
しかし理解が追い付けば鼓動は一際高鳴り、この我が体温を上昇させた。
熱魔法で熱せられようが、マグマで寒中水泳をしようが熱さなど感じた事などないのに。
今は熱い。
鼓動が一つ脈打つ度に体温が一度上昇しているのではないかと錯覚する位には熱を感じる。
荒い呼吸を漏らしそうになり、慌てて手で口を覆う。
「魔王?」
いかん。ユタに心配を掛けさせてしまったようだ。このまま言わせるだけではユタの思いを無駄にしてしまうではないか。
「ユタ」
「うん」
真摯に、大事に答えたい。
我は何時になく真面目な顔でユタに真正面から対峙する。
この我が緊張する日が来ようとはな……。西の魔王辺りに知れれば腹を抱えて笑われそうだ。
「我はもう我慢しなくて良いのか」
ユタの反応を欠片も逃さぬ様に呼吸を整える。
ユタは緊張した面持ちで直ぐに片手で制してきた。
「あ。それは我慢で。気遣いは無用だけどそういう行為は愛し合ってないと」
「わかっている。だから我慢しないで良いのかと言ったのだ」
愛する事を大切にする。それを教えてくれた大切な人。
だからどうか拒絶をしないで欲しい。我を受け入れて欲しい。
「我はとっくにユタを愛していたのだから」
二人で愛を育んでいきたい。
魔王の指導が良いのか、バランスが悪かった俺の筋肉が綺麗に整っていくのが面白い。
少しは魔王の友達として誇らしく思って貰える様になったかな。
慣れない実戦の指導だけど、告白するならせめて隣に立っても恥ずかしくない自分でいたい。そう思っていられるから頑張れる。
「どお?大分割れてきたと思うんだけど」
基準が魔王なだけに今がどのレベルかわからない。だから魔王に触って確かめて貰おうと服を捲って腹を突き出した。
好きな人に見せるのは恥ずかしいと思うかもしれないが、魔王には既にあられもない姿を沢山見られてる。今更だ。
なのに何で魔王がたじろぐんだよ。……あ。もしかして。
「視線を逸らす程まだまだ見れないのか」
理由に思い当ってガックシ項垂れ溜息を吐いた。
「違う。我はユタを抱きたいと思っておるんだぞ。その様に無防備に誘うな」
「へ!?さ、誘うって、筋肉の付き具合見て貰うだけだろ」
思ったのと違う理由にドキリと心臓が高鳴る。
最近めっきり触れなくなったからもう抱く対象じゃなくなったかと思ってた。そうか、まだ抱きたいって思ってくれてたんだ。嬉しい。
魔王は眉根を寄せて一瞬険しい顔をしたけど、その直ぐ一瞬で悟りを開いた菩薩の顔をして、瞬きをしてる間に精悍で漢前な顔になってた。
「そうだな」
俺は訝しんで見上げていたけど、魔王は平気な顔で俺の腹に触れてくる。
今の一瞬の変化。何か思い悩んでる風に見えたんだけどな。気の所為か?
魔王は手の平全体で俺の筋肉を確かめている。厭らしくない触り方だ。お陰で性的興奮は訪れない。けど魔王の大きな手にドキドキはしてる。
これ。鼓動だけでバレそうだな。
魔王は俺の筋肉を確かめると、「っふ」と笑みを漏らした。
「ユタの頑張りが伝わってくる」
「当たり前だろ。俺は中途半端な事はしない主義だ」
平常心。平常心。そう思っていたのに……。
魔王は何故か俺の頬に手を掛けて顔を近付けて来た。
久し振りに来るか!?とドキドキして身構える。もしされたら応えてしまいそうだ。
「何事にも一生懸命なのはユタの魅力だな」
する、しないの葛藤をしていたのに、寸前でピタリと止めてしまった。そして顔を離して踵を返した。
「そろそろ昼餉の準備をせねばテンが喧しいな」
普段はテンの事を気になんてしないくせに。
魔王はどんな顔して離れたのか。俺は無性に腹が立ってきた。自分自身に対して。
「魔王」
「どうした?」
呼び声に振り返る魔王は、落ち着いた大人の男の顔をしていた。
俺は、何時からこんなに我儘になったんだろうな。
「何時まで俺に気を遣うんだ」
一歩近付き魔王の腕を取る。
笑って聞いたけど、その笑みが歪んでる自覚がある。
「ユタ?」
魔王が困ってる。
「魔王は、セックスが好きなんだろ」
否定の言葉は無い。
俺を見る目は真っ直ぐだけど、今の俺には瞳の奥の揺らぎが見える。
こんなにも気を使わせていた俺に腹が立つ。
どんな状態でも魔王はキスだけは我慢しなかった。
今のは絶対にキスする体勢だった。それなのに途中で止めたんだ。魔王の意志じゃない。
俺の心を気遣ってくれたんだろ?俺は全然平気なのに。
「俺。魔王が好きだ」
「我もだ。だから友として好いてくれるユタを無碍には出来ない」
突然の告白。なのに魔王の表情は変わらない。
魔王はずっと惚れろと言っていた癖に。これでわからないんだな。それともそれすら気遣いの内?
「違う」
「違う?」
「俺は」
好きな人に気遣わせてばかりなんて。
「魔王を恋愛対象として好きだと言っている」
男が廃る。
◇魔王サイド◇
夢を見ているのだろうか。
「魔王を恋愛対象として好きだと言っている」
ユタが我に愛を伝えている。
その目はとても真剣で、真っ直ぐ射貫く様に見上げてくる。ユタの青い瞳が夏の光に弾けて煌めく。とても綺麗だ。
そのソバカスの散る頬は俄かに色付き、口は真一文に引き結ばれている。
その事が我に実感を伴わせてくれる。
ユタが、我を、好いている。
じわりと沁み込んだ言葉を脳で、感情で理解するのに少しばかりの時を要した。
しかし理解が追い付けば鼓動は一際高鳴り、この我が体温を上昇させた。
熱魔法で熱せられようが、マグマで寒中水泳をしようが熱さなど感じた事などないのに。
今は熱い。
鼓動が一つ脈打つ度に体温が一度上昇しているのではないかと錯覚する位には熱を感じる。
荒い呼吸を漏らしそうになり、慌てて手で口を覆う。
「魔王?」
いかん。ユタに心配を掛けさせてしまったようだ。このまま言わせるだけではユタの思いを無駄にしてしまうではないか。
「ユタ」
「うん」
真摯に、大事に答えたい。
我は何時になく真面目な顔でユタに真正面から対峙する。
この我が緊張する日が来ようとはな……。西の魔王辺りに知れれば腹を抱えて笑われそうだ。
「我はもう我慢しなくて良いのか」
ユタの反応を欠片も逃さぬ様に呼吸を整える。
ユタは緊張した面持ちで直ぐに片手で制してきた。
「あ。それは我慢で。気遣いは無用だけどそういう行為は愛し合ってないと」
「わかっている。だから我慢しないで良いのかと言ったのだ」
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二人で愛を育んでいきたい。
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