45 / 73
前章
45
しおりを挟む
初めてのデートの日からどれだけ時が経ったろうか。
日々平穏に、安穏として、野菜ちゃんと果物ちゃん達のお世話とデートで過ぎて行く。
「今日もいっぱい採れたな。秋の味覚も採れ始めたし、今日は鍋にしようか」
「ほう、鍋か。一つの釜をつつき合う独特の食事だったな」
「鍋は初めて?北国出身なら寧ろ国食っぽいのに」
「我は王だからな。下の者と食卓を共にした事がない」
ああ。そういう事か。
王族って毒見の済んだ冷めた料理しか食べれないって噂本当だったんだな。
同情にホロリと来た俺は、魔王の手を熱く握った。
「これから冬が終わるまでいっぱい鍋とか焼肉とかしような!」
「うむ。楽しみにしている」
良かった。とても楽しみそうに笑ってくれた。
「でも鍋も焼肉も大人数のが楽しいんだけど……。そういえば……最近テン見て無いな……」
余りに平和過ぎて忘れてた。
そういえばあの二人どうしてるんだ??一応毎日三食ご飯は玄関まで届けてるし、毎回綺麗に無くなってるから食べてはいるだろう。
なのにヴェイズが来てから一回もテンを見ていない。
「テンなら色んな所がしぶといから大丈夫だと思うけど。さて、どうしようかな」
ヤンデレつついてトバッチリ受けんのはご免です。全力で拒否して平穏を続けたい。
とは言えう~む。
「何がだ」
「ん?」
テンの家のデカい扉を凝視して悩んでいたら何故か魔王にグイっとやられた。後ろから前に手を当てて引かれるやつ。本当は腹に回るんだろうけど、何分身長差があるもんだからその手は胸に。同性なのにこの差って、世の中理不尽だ。
「何を悩んでいる」
おっと、魔王のイケメン振りに意識が逸れてた。
「いや、鍋なら大人数で囲ったら楽しいんだよなーと思って」
村じゃ大きな獲物を捕らえたら、男衆が大鍋に集まってドンチャンしたものだ。
懐かしさに目を細めていたら、魔王は片眉を上げて「ふむ」とテンの家を見た。そして徐に片手をテンの家の寝室であろう場所に向けた。
「ま、魔王……?」
嫌な予感がして恐る恐る頭上を見上げる。ニコッと良い笑顔を返してくれたから俺もヘラッとぎこちない笑みを返す。
「こうすればあ奴も出て来よう」
ドッカ―――――ン!!
言葉と共に起きる爆音。
滝汗流す俺。
どこまでも威風堂々涼やかな笑顔のイケメン。
「北の……」
そして爆音の先から聞こえるおどろおどろしい転生神の声。ガクブルガクブルコワイ……。
何なの。転生勇者と言い、転生神と言い、やっぱり魔王までも感覚が一般人と違う。
「いい加減出て来い」
「珍しいね?君が口出すの」
「ユタが鍋をすると言っている。人数がいるらしいからお前の番を連れて降りて来い」
「はぁ?何でそんな」
『鍋―――――!!』
剣呑な雰囲気の中、声になっていないのにハッキリと聞こえたテンの声。
擦れ過ぎてて普通はわからないだろうその声も、テンのご飯好きを知っている身としては確かな声として汲み取れてしまう。
余りに切実な叫びに、言葉を遮られたヴェイズも剣呑さを納めて背後を振り返った。そしてそそくさと中に消えると暫く何やら話し合いを始めたらしい。時折聞こえるテンの心の叫びを聞くに、ここの所ずっと真面に食事の時間を取っていなかったらしい。そして我慢の限界が来て「暖かい作り立てご飯」を所望する声を連呼してる。
静かになって少しして、やっとこ玄関扉が開いたのは実に何十日、下手したら何ヶ月振りの事だろうか。
久し振りに会うテンは、ヴェイズに姫抱きされてクッテリと力なくしな垂れかかっていた。
日々平穏に、安穏として、野菜ちゃんと果物ちゃん達のお世話とデートで過ぎて行く。
「今日もいっぱい採れたな。秋の味覚も採れ始めたし、今日は鍋にしようか」
「ほう、鍋か。一つの釜をつつき合う独特の食事だったな」
「鍋は初めて?北国出身なら寧ろ国食っぽいのに」
「我は王だからな。下の者と食卓を共にした事がない」
ああ。そういう事か。
王族って毒見の済んだ冷めた料理しか食べれないって噂本当だったんだな。
同情にホロリと来た俺は、魔王の手を熱く握った。
「これから冬が終わるまでいっぱい鍋とか焼肉とかしような!」
「うむ。楽しみにしている」
良かった。とても楽しみそうに笑ってくれた。
「でも鍋も焼肉も大人数のが楽しいんだけど……。そういえば……最近テン見て無いな……」
余りに平和過ぎて忘れてた。
そういえばあの二人どうしてるんだ??一応毎日三食ご飯は玄関まで届けてるし、毎回綺麗に無くなってるから食べてはいるだろう。
なのにヴェイズが来てから一回もテンを見ていない。
「テンなら色んな所がしぶといから大丈夫だと思うけど。さて、どうしようかな」
ヤンデレつついてトバッチリ受けんのはご免です。全力で拒否して平穏を続けたい。
とは言えう~む。
「何がだ」
「ん?」
テンの家のデカい扉を凝視して悩んでいたら何故か魔王にグイっとやられた。後ろから前に手を当てて引かれるやつ。本当は腹に回るんだろうけど、何分身長差があるもんだからその手は胸に。同性なのにこの差って、世の中理不尽だ。
「何を悩んでいる」
おっと、魔王のイケメン振りに意識が逸れてた。
「いや、鍋なら大人数で囲ったら楽しいんだよなーと思って」
村じゃ大きな獲物を捕らえたら、男衆が大鍋に集まってドンチャンしたものだ。
懐かしさに目を細めていたら、魔王は片眉を上げて「ふむ」とテンの家を見た。そして徐に片手をテンの家の寝室であろう場所に向けた。
「ま、魔王……?」
嫌な予感がして恐る恐る頭上を見上げる。ニコッと良い笑顔を返してくれたから俺もヘラッとぎこちない笑みを返す。
「こうすればあ奴も出て来よう」
ドッカ―――――ン!!
言葉と共に起きる爆音。
滝汗流す俺。
どこまでも威風堂々涼やかな笑顔のイケメン。
「北の……」
そして爆音の先から聞こえるおどろおどろしい転生神の声。ガクブルガクブルコワイ……。
何なの。転生勇者と言い、転生神と言い、やっぱり魔王までも感覚が一般人と違う。
「いい加減出て来い」
「珍しいね?君が口出すの」
「ユタが鍋をすると言っている。人数がいるらしいからお前の番を連れて降りて来い」
「はぁ?何でそんな」
『鍋―――――!!』
剣呑な雰囲気の中、声になっていないのにハッキリと聞こえたテンの声。
擦れ過ぎてて普通はわからないだろうその声も、テンのご飯好きを知っている身としては確かな声として汲み取れてしまう。
余りに切実な叫びに、言葉を遮られたヴェイズも剣呑さを納めて背後を振り返った。そしてそそくさと中に消えると暫く何やら話し合いを始めたらしい。時折聞こえるテンの心の叫びを聞くに、ここの所ずっと真面に食事の時間を取っていなかったらしい。そして我慢の限界が来て「暖かい作り立てご飯」を所望する声を連呼してる。
静かになって少しして、やっとこ玄関扉が開いたのは実に何十日、下手したら何ヶ月振りの事だろうか。
久し振りに会うテンは、ヴェイズに姫抱きされてクッテリと力なくしな垂れかかっていた。
1
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
竜人息子の溺愛!
神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。
勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。
だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。
そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。
超美形竜人息子×自称おじさん
うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】
まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる