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後章
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北の魔王の領土。北国に来てから大分経つ。
「王妃、勉強のお時間ですぞ」
今朝の野菜ちゃん達のお世話を終わらせた俺の元に、見た目は初老のナイスミドルなお爺ちゃん執事がやってきた。
「はい。今日は四大魔王についてでしたね」
王妃とか未だに背中にぞわっとするものが走るが我慢だ俺。せめて王配だろとか思うが我慢だ。何故なら俺には公務なんて難しくて手が出せない。ならせめて呼ばれ方は受け入れようじゃないか。
でも流石に政治的交流の場に夫婦が揃わないのは問題ある。それ位村人Aな俺でもわかる。だから特に交流の深い人や土地の事をこうして教わってるって訳だ。
「それぞれの特産の野菜ちゃん達まで教われたら良いな」
「そうですな。特有のものと一緒に覚えた方が覚えやすいでしょう」
「へへ、俺頭悪いからなぁ、セバスチャンにも先生にも迷惑かけてます」
ニッコリと皺を深く刻む執事のセバスチャン。アクセルの気遣いでか人に近い姿の竜人で人好きのする柔らかい雰囲気の魔族だ。俺的にこの温かみはむしろ神族の方の竜人じゃないかと思う位良い人だ。
いやでも待てよ?神族も魔族もどっちも厄介なんだよな。教会の教え的に神は良い者な捉われ方をしがちだけど、どっちも厄介だよな。
俺はふと無人島に置き去りにしてしまった某神と勇者を思い出し、やっぱりセバスチャンは魔族が良いと思った。アクセルの種族だしな。
「ですから四大魔王はそれぞれの領土の特性を持っているのです」
こんなに広さが必要なのかよって位馬鹿広い部屋で先生一人に生徒一人。壁にそって護衛(俺に必要あるのか?)とメイド(着替えとか風呂とか手伝おうとするのマジで勘弁願いたい)がズラリと控えている。
「雪の解けない極寒の北国の王、アクセルは冷気と氷雪に光と闇。
逆に雪が全く降らない灼熱の南国の王は熱気と火炎に水と光。あと何か小動物と仲が良い。大抵肩に小猿を乗せている。ってどんな魔王だ……。
東西魔王は中間地点が違えば呼び名が逆転しそうだけど」
でも必ず東の魔王は東の魔王だし、西の魔王は西の魔王なんだよな。絵姿もたしか全然違った。
俺は教科書を捲って絵姿が載っているページを開いた。見開きの右に東の大魔王、左に西の大魔王が載っている。
「ええ、その通りです。ですが彼らは生まれた瞬間に東西が確立されている。
長年それが謎でしたが、陛下の齎した情報でそれも変わりそうです」
「幻の秘島、世界樹のある島が真ん中にあるから?」
「excellent!全くもってその通り!これは歴史が動く大事件ですよ!」
先生が鼻息荒く興奮してしまった。こうなると早口で語り出すから俺にはチンプンカンプンだ。でも楽しそうな先生を止めるのも忍びないしなぁ。
俺が困った顔で空笑いしてると、先生の背後にすっと人影が立った。
「おやめなさい。王妃陛下がお困りあそばれているでしょう」
スパーン!と手加減してる!?ちゃんとしてるの!?って言いたい小気味良い音を出したのはセバスチャンだ。ピシッとした姿勢のまま効かせたスナップは目にも止まらなかった。怖っ。
「いたた……。いやぁすみません、つい」
「いったい何回目の“つい”だと思っているのです」
いかん。笑ったら駄目だ。駄目だとわかってはいても肩の震えは収まらない。
この2人の漫才はいつも疲れた俺の脳を癒してくれる。北の大魔王の領土内なのにとっても平和だ。
どがしゃあああああん!!
とか思ってる端からああああっ!またなの!?また来たの!?これで何回目だよっ、本日何回目の勇者来訪だよおおおおおっ!!
ゲンナリした顔でそっと窓を見た俺は、直後に頭を抱えた。
村にいた時もそりゃ巻き込まれ率が高かった。けどな。流石に毎日じゃなかったわっ!
そりゃアクセルも入浴中の気を抜きたい時についうっかり秘島に転送されもするよ。
「勇者の辞書に諦めるとか交渉するって言葉は無いのか……」
派手な爆砕音を奏でた割にあっけなく空の彼方に飛ばされた勇者一行を背景に、俺は疲れた溜め息を吐くのだった。
「王妃、勉強のお時間ですぞ」
今朝の野菜ちゃん達のお世話を終わらせた俺の元に、見た目は初老のナイスミドルなお爺ちゃん執事がやってきた。
「はい。今日は四大魔王についてでしたね」
王妃とか未だに背中にぞわっとするものが走るが我慢だ俺。せめて王配だろとか思うが我慢だ。何故なら俺には公務なんて難しくて手が出せない。ならせめて呼ばれ方は受け入れようじゃないか。
でも流石に政治的交流の場に夫婦が揃わないのは問題ある。それ位村人Aな俺でもわかる。だから特に交流の深い人や土地の事をこうして教わってるって訳だ。
「それぞれの特産の野菜ちゃん達まで教われたら良いな」
「そうですな。特有のものと一緒に覚えた方が覚えやすいでしょう」
「へへ、俺頭悪いからなぁ、セバスチャンにも先生にも迷惑かけてます」
ニッコリと皺を深く刻む執事のセバスチャン。アクセルの気遣いでか人に近い姿の竜人で人好きのする柔らかい雰囲気の魔族だ。俺的にこの温かみはむしろ神族の方の竜人じゃないかと思う位良い人だ。
いやでも待てよ?神族も魔族もどっちも厄介なんだよな。教会の教え的に神は良い者な捉われ方をしがちだけど、どっちも厄介だよな。
俺はふと無人島に置き去りにしてしまった某神と勇者を思い出し、やっぱりセバスチャンは魔族が良いと思った。アクセルの種族だしな。
「ですから四大魔王はそれぞれの領土の特性を持っているのです」
こんなに広さが必要なのかよって位馬鹿広い部屋で先生一人に生徒一人。壁にそって護衛(俺に必要あるのか?)とメイド(着替えとか風呂とか手伝おうとするのマジで勘弁願いたい)がズラリと控えている。
「雪の解けない極寒の北国の王、アクセルは冷気と氷雪に光と闇。
逆に雪が全く降らない灼熱の南国の王は熱気と火炎に水と光。あと何か小動物と仲が良い。大抵肩に小猿を乗せている。ってどんな魔王だ……。
東西魔王は中間地点が違えば呼び名が逆転しそうだけど」
でも必ず東の魔王は東の魔王だし、西の魔王は西の魔王なんだよな。絵姿もたしか全然違った。
俺は教科書を捲って絵姿が載っているページを開いた。見開きの右に東の大魔王、左に西の大魔王が載っている。
「ええ、その通りです。ですが彼らは生まれた瞬間に東西が確立されている。
長年それが謎でしたが、陛下の齎した情報でそれも変わりそうです」
「幻の秘島、世界樹のある島が真ん中にあるから?」
「excellent!全くもってその通り!これは歴史が動く大事件ですよ!」
先生が鼻息荒く興奮してしまった。こうなると早口で語り出すから俺にはチンプンカンプンだ。でも楽しそうな先生を止めるのも忍びないしなぁ。
俺が困った顔で空笑いしてると、先生の背後にすっと人影が立った。
「おやめなさい。王妃陛下がお困りあそばれているでしょう」
スパーン!と手加減してる!?ちゃんとしてるの!?って言いたい小気味良い音を出したのはセバスチャンだ。ピシッとした姿勢のまま効かせたスナップは目にも止まらなかった。怖っ。
「いたた……。いやぁすみません、つい」
「いったい何回目の“つい”だと思っているのです」
いかん。笑ったら駄目だ。駄目だとわかってはいても肩の震えは収まらない。
この2人の漫才はいつも疲れた俺の脳を癒してくれる。北の大魔王の領土内なのにとっても平和だ。
どがしゃあああああん!!
とか思ってる端からああああっ!またなの!?また来たの!?これで何回目だよっ、本日何回目の勇者来訪だよおおおおおっ!!
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村にいた時もそりゃ巻き込まれ率が高かった。けどな。流石に毎日じゃなかったわっ!
そりゃアクセルも入浴中の気を抜きたい時についうっかり秘島に転送されもするよ。
「勇者の辞書に諦めるとか交渉するって言葉は無いのか……」
派手な爆砕音を奏でた割にあっけなく空の彼方に飛ばされた勇者一行を背景に、俺は疲れた溜め息を吐くのだった。
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