異世界転生者はもうおなかいっぱいです!

無月

文字の大きさ
56 / 73
後章

閑話。その頃秘島では

しおりを挟む
 ◇ヴェイズサイド◇

 あの人間が北のとデートに出かけた日。島に閃光が走った。閃光とは言っても温かみのあるそれは、世界樹の根と同じ波動を持っていた。

 「くはっ、まさかあの世界樹の本体がこの島に有ったとはね。道理で東西が綿密に決められてる訳だよ」

 僕は腕の中で眠るテンの、眉間を寄せて呻るその顔を愛おしく舐め上げて言った。
 あの人間から今日は農作業の後は一日いないと聞いていたからね。思う存分心を込めてテンを愛してあげた。それに疲れて気を失ったテンが僕の腕の中にいる。くふふっ、何て素敵な世界だろうね。
 まあ、この島に世界樹が有ろうが無かろうが、テンが僕の手中に居ればなんでも良いさ。

 「ああ、二人の気配が消えたね。くふ、そうか。そういう仕組みか」

 恐らくこの島は世界樹の意思が働いている。
 わかれば全て納得もする。この島が閉ざされていたその理由。自分の意思で来れない不自由さ。

 「くっくっく。僕の見立ては正しかったね。ここは本当に僕とテンの二人だけの楽園だ」

 あの唯一の邪魔者が居なくなった今、ね。



 ◇テンサイド◇

 ユタがいない。
 どこにもいない。

 「んはっ!?今日のご飯は!?」

 俺は重大な事実に気付いて驚愕した。ママンのご飯!!

 「おいでテン。料理位僕も出来るからね」

 ユタの気配が無くて狼狽えたけど代わりにヴィーが用意してくれたらしい。
 ふふん♪まあ作ってくれたなら食べてやろう。コイツは俺が好きらしいから嬉しすぎて漏らしちゃうんじゃないかな?



 「違う」

 ワクワクして席に着いたのに、求めていたものじゃなかった。

 「くはっ、どういう事だい?」

 自信満々に並べられた料理は、確かに凄い。凄すぎる位に豪華だった。勇者業してた時なら巨乳ちゃん達を侍らせて食べてたけど。
 でも、でも違うんだ。俺が求めていたのは。

 「ママンの料理がない……!」

 あの味を知ってしまったら、いや。思い出してしまったらもう元には戻れない。

 「俺の、俺の家カレー!俺の手作りハンバーグ!俺のオム焼きそばー!!」

 今までユタが作ってくれた料理が走馬灯のように流れていく。
 真ん前に座るヴィーのこめかみがピクピクしたけど知ったことかっ。俺は早急に〇ンタのチキンか〇ックの照り焼きバーガーか〇スの以下略を所望する!!

 この日からどうやったら居なくなったユタを取り戻せるか模索する俺と、ユタの料理以上に俺の胃袋を掴む料理を模索するヴィーの戦いが始まった。

 あ。ユタが戻って来た時に料理作ってくれないと困るからなっ。仕方なく畑の世話はしてやってる(ドヤァ)。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

竜人息子の溺愛!

神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。 勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。 だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。 そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。 超美形竜人息子×自称おじさん

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

処理中です...