異世界転生者はもうおなかいっぱいです!

無月

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後章

10

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 この世界は神も魔王も数多く存在する。
 もっとも多いのは転生者だ。
 そして勿論この世界にいるのは彼らだけじゃない。俺みたいな平凡村人もいれば、エルフ族、ドワーフ族なんかの特徴的な個性を持つ種族もいる。
 中には存在だけは物語なんかで語り継がれて知ってるだけの存在もいる。
 滅多に姿を見る事が出来ないその存在は、

 精霊族。

 全属性に於いて共通して、完全精神体で肉体を持たない彼等は常人には普通見えない。
 見えるのは同類か、契約をした者。時たま霊感がある人なんかは普通に見えるらしいけど、勿論平凡村人代表な俺にそんな能力は無い。無い筈だった。



 今日も元気な実りが可愛い。とモロッコインゲンちゃんを喜々として収穫していた俺。格好も相まってその辺の農家の兄ちゃんにしか見えない筈の俺。

 『はわわわ。見えてるっ、見えてるよこの人』

 の前に、はわはわしている半透明な何か。

 え?幻覚?

 「最近は疲れ知らずだったんだけどな」

 両目を親指と中指で揉み解す。首も振って息を吐き出して……。

 『はわわっ、また見たよ。絶対見えてるよっ』

 うわー。まだ見えてるー。
 モロッコちゃんの蔓の間に嵌っている半透明な何か。
 今度は確かめる為に目を凝らして見る。

 手の平サイズだけど形は人間……じゃないな。エルフに近い尖った耳に、白目が無い目。え?全部瞳孔なの?それとも白目に色付いてるだけなの?強弱が有れど全体が緑色半透明だからなの?透けて見える割に内蔵や骨は見当たらない。なのに鼻も口も有る。服も来てるけど何で作ってるんだ?そのワンピース。何より背中に見える四枚翅。え?虫?虫なの?その場合君は害虫?益虫?
 答えに寄っては臨戦態勢も致し方なしだ。
 左手に乗るモロッコちゃんが山盛りの竹ざる。それを気付かれない様にそっと地面に降ろす。
 同時進行で右手を地面に伸ばす。求めるのは鎌。鋏じゃ武器には心許無いから。

 『どーしよー。どーしよー』

 あたふたと慌てふためく姿からは邪悪さは微塵も見えない。だが姿形で判断出来ないのが野菜ちゃん達の天敵だ。油断は出来ない。
 よし。左手はフリーになった。右手は鎌を持った。これで最悪の場合は野菜ちゃん達を守ろう。

 「君は」

 ごくりと生唾を飲み込んで出た声は、大丈夫。そんなに動揺してない。
 しっかり出せた声に安心した俺は、余裕を持って対峙した。

 「いったい何者だ」

 ここはアクセルの力が満ちてる。侵入出来るのなんて神か転生者くらい。普通の虫は外の雪が凄くてこの辺じゃ見ない。畑の相棒たるミミズ君やミツバチ君はアクセルが連れてきてくれたからいるけど。
 こんな訳わかんない存在を招いたって聞いたことはないし、国民に半透明な人がいるとは先生も言ってなかった。

 『はわっ!話し掛けられちゃった!
 あわわわわっ。でもどーしよー、あたしの声聞こえるかなー』

 話し掛けたら文字通り飛び上がってビックリされた。
 目の前を八の字にブンブン飛ぶ姿に、蜂君の仲間かな?と思えてきた。それならそんなに害は無さそう。毒針も無さそうだしな。
 右手に走ってた緊張は少し解れた。

 「さっきから聞こえてる」
 『ほわ―――!!?』

 さっきより優しい声で言うと、蜂(仮)君が直立で縦揺れを起こした。翅まで真っ直ぐになって振動してるけど、良く落下しないな。
 蜂(仮)君はぴゅんって飛ぶとモロッコちゃんの葉っぱの陰に隠れてしまった。

 「君はモロッコちゃんの枝葉食べちゃう子?」

 チラリと右目だけ見せる蜂(仮)君。

 『違うわ。あたし植物の精。人間はあたし達を精霊って呼ぶわ』

 おずおずと答えてくれた蜂(仮)君改め植物の精。

 植物の、精霊。

 先生。俺のハウスで、精霊が生まれました。
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