36 / 44
本編
15歳-9
しおりを挟む
俺が席を立つのと同時に緊張を見せたレクに、一瞬俺が何かしたかと思った。
けどレクは全く俺を見ず、というかどことも取れない場所を見るとは無しに見ている。そして両手で両耳を塞いだ。
その光景はさながら、よく聞こえない電話を片耳を塞いでなんとか聞き取り易くする様で、直ぐに魔術通信が原因だとわかった。
「やっぱ何かあったのか」
俺が臨戦体制を取るのと、デイヴとヴァンとジミーが立ち上がるのは同時だった。
トーマス殿だけは突然空気が変わった事に、訳もわからずポカンとしている。
「生徒会室周囲には不穏な気配は無いね」
「ああ、って事は狙いは会長かミシェル嬢」
俺の横に歩み寄るデイヴが周囲に気を配り言った。
それに同意を示し、ケイリーの場所を確認する。ケイリーの気配は熟知しているから直ぐに場所がわかった。
「ヤバげな気配に囲まれてるな」
「マジかよ。ストーカー共、死んだな」
俺がケイリーを心配する横で、ヴァンがストーカー達の心配をする。っておいコラ。
流石にダメだとヴァンを睨むけど、ニヤリと笑われる。
「ケイリーが素人に遅れを取ると思うのか?」
「そういう問題じゃない。ケイリーは女の子だぞ」
「そうだね、ヴァンはもう少し女性の扱い方を学び直した方が良いよ」
デイヴにも窘められても、ヴァンは気が無さそうに「へーい」と空返事を返すだけだった。
このヤロ。改善する気ねーな。まあ、ヴァンはジミーを一番大事にしてるし、それ以外は同列に扱う。そこに老若男女は関係無いらしい。デイヴは主(あるじ)だから別らしいけどな。
そんなヴァンの事も理解してるし、考え方は人其々だ。言うだけは言ったし、嘆息だけしてそれ以上の追求はしない。
「通信終わった様ですよ」
ジミーが伝えて、レクに視線が集中する。
レクは立ち上がると転移魔術を構築した。
「トーマス殿、申し訳無いですが私達は席を外します」
「あ、はい。業務は終わってるので大丈夫、です」
振り返り未だに何が起きたかわからないトーマス殿がしどろもどろに答え、その返事を聞くや否や魔術は発動された。俺達への意思確認は無しだ。必要無いから。
「ケイリー」
転移直後に見えたケイリーに、デイヴと共に近寄る。
レク達は俺達を囲む様に周囲を牽制する。
ケイリーは怪我一つしていない。わかってはいても安堵の息が漏れる。ケイリーの背後には蹲り震えるミシェル嬢。会長の姿は無い。
「ゴメン、下手打った。会長が拐われたわ」
「ミシェル嬢は無事か」
薙刀片手にもう片手でミシェル嬢を守るケイリーはさながら騎士の様にカッコいい。
ミシェル嬢もケイリーに守られているからか、震えてはいてもそこまで恐慌状態には陥っていない様だ。
「は、はいっ。私はケイリー様が守って下さいましたので……。
けれどルキアーノ会長が……!」
悲痛の叫びを上げるミシェル嬢に胸が痛む。
俺はチラリと周囲を囲み、けどいきなり現れた俺達に狼狽を見せる奴らをザッと見分する。大した連中じゃないな。
おっと、
「逃すかよ」
持ち直し、逃げ出す不届き者に殺気を飛ばす。それだけで弱い奴は呼吸困難に陥りその場に膝を突く。けど流石はケイリーを出し抜いた連中だ。自分の足にナイフを突き立てて奮い立たせると、目眩しの魔法を放ち逃走する。
「ぎゃああああ!!」
だが甘い。
大人しく俺の殺気で捕まれば苦しむ事も無かったのにな。
不届き者達は、レクの張った結界(電撃に炎撃、冷撃有り)にホイホイ宜しく捕まり絡まり焦げ付き地に伏せ気を失わせるのだった。合掌。
「ここは任せる。
レク、何処だ」
「あっち、立ち入り禁止区域にある倉庫に向かってる」
探知を映像として捉えられるレクに正確な場所を聞く。間髪入れずに帰って来た答えに瞬間的に足を動かす。
転移魔術では行けない。残念ながら立ち入り禁止区域は一般区域以上に強固な転移防壁に阻まれていて弾かれるからだ。一般区域でさえ簡単に転移出来るのはレクとマチルダ位だと聞いてる。
「って、何でデイヴも来るんだよ。危ないから帰れ」
「立ち入り禁止区域への侵入は管理人か王族の許可がいるだろう」
「許可はくれるだろ。禁止区域は禁止にされるだけの何かがある。危険だ、帰れ」
「だからこそ尚の事王族として放って置く訳にはいかない」
「くっそ!ヴァンは何してる!」
頑なに俺の後ろにピッタリとくっ付いて来るデイヴ。一人で行かせたヴァンに八つ当たりをするが、当人はここにいない。
「ヴァンには残ってミシェル嬢の守護と犯人捕縛を命じている」
命令じゃ仕方ねー!
ヴァンは良き友人であると共にデイヴの部下でもある。命令なら従う義務が生じるんだよな。それが理不尽な命令なら別だけど、今回はそうでも無い。
けど。
「だからって主人を一人行かせるのはどうかと思うがな!」
「ふふっ。一人じゃないでしょう?
だって私にはアレクがいる。貴方以上に私を良く守ってくれる人はいない。ヴァンもそれがわかってるから送り出してくれたのだよ」
勿論ただ守られる積りも無いけどね。と続けるデイヴに、俺は怒って良いんだか誇って良いんだか、嬉しみと憤りを綯交ぜにした顔で、意味の無さない呻き声を上げるしか出来なかった。
けどレクは全く俺を見ず、というかどことも取れない場所を見るとは無しに見ている。そして両手で両耳を塞いだ。
その光景はさながら、よく聞こえない電話を片耳を塞いでなんとか聞き取り易くする様で、直ぐに魔術通信が原因だとわかった。
「やっぱ何かあったのか」
俺が臨戦体制を取るのと、デイヴとヴァンとジミーが立ち上がるのは同時だった。
トーマス殿だけは突然空気が変わった事に、訳もわからずポカンとしている。
「生徒会室周囲には不穏な気配は無いね」
「ああ、って事は狙いは会長かミシェル嬢」
俺の横に歩み寄るデイヴが周囲に気を配り言った。
それに同意を示し、ケイリーの場所を確認する。ケイリーの気配は熟知しているから直ぐに場所がわかった。
「ヤバげな気配に囲まれてるな」
「マジかよ。ストーカー共、死んだな」
俺がケイリーを心配する横で、ヴァンがストーカー達の心配をする。っておいコラ。
流石にダメだとヴァンを睨むけど、ニヤリと笑われる。
「ケイリーが素人に遅れを取ると思うのか?」
「そういう問題じゃない。ケイリーは女の子だぞ」
「そうだね、ヴァンはもう少し女性の扱い方を学び直した方が良いよ」
デイヴにも窘められても、ヴァンは気が無さそうに「へーい」と空返事を返すだけだった。
このヤロ。改善する気ねーな。まあ、ヴァンはジミーを一番大事にしてるし、それ以外は同列に扱う。そこに老若男女は関係無いらしい。デイヴは主(あるじ)だから別らしいけどな。
そんなヴァンの事も理解してるし、考え方は人其々だ。言うだけは言ったし、嘆息だけしてそれ以上の追求はしない。
「通信終わった様ですよ」
ジミーが伝えて、レクに視線が集中する。
レクは立ち上がると転移魔術を構築した。
「トーマス殿、申し訳無いですが私達は席を外します」
「あ、はい。業務は終わってるので大丈夫、です」
振り返り未だに何が起きたかわからないトーマス殿がしどろもどろに答え、その返事を聞くや否や魔術は発動された。俺達への意思確認は無しだ。必要無いから。
「ケイリー」
転移直後に見えたケイリーに、デイヴと共に近寄る。
レク達は俺達を囲む様に周囲を牽制する。
ケイリーは怪我一つしていない。わかってはいても安堵の息が漏れる。ケイリーの背後には蹲り震えるミシェル嬢。会長の姿は無い。
「ゴメン、下手打った。会長が拐われたわ」
「ミシェル嬢は無事か」
薙刀片手にもう片手でミシェル嬢を守るケイリーはさながら騎士の様にカッコいい。
ミシェル嬢もケイリーに守られているからか、震えてはいてもそこまで恐慌状態には陥っていない様だ。
「は、はいっ。私はケイリー様が守って下さいましたので……。
けれどルキアーノ会長が……!」
悲痛の叫びを上げるミシェル嬢に胸が痛む。
俺はチラリと周囲を囲み、けどいきなり現れた俺達に狼狽を見せる奴らをザッと見分する。大した連中じゃないな。
おっと、
「逃すかよ」
持ち直し、逃げ出す不届き者に殺気を飛ばす。それだけで弱い奴は呼吸困難に陥りその場に膝を突く。けど流石はケイリーを出し抜いた連中だ。自分の足にナイフを突き立てて奮い立たせると、目眩しの魔法を放ち逃走する。
「ぎゃああああ!!」
だが甘い。
大人しく俺の殺気で捕まれば苦しむ事も無かったのにな。
不届き者達は、レクの張った結界(電撃に炎撃、冷撃有り)にホイホイ宜しく捕まり絡まり焦げ付き地に伏せ気を失わせるのだった。合掌。
「ここは任せる。
レク、何処だ」
「あっち、立ち入り禁止区域にある倉庫に向かってる」
探知を映像として捉えられるレクに正確な場所を聞く。間髪入れずに帰って来た答えに瞬間的に足を動かす。
転移魔術では行けない。残念ながら立ち入り禁止区域は一般区域以上に強固な転移防壁に阻まれていて弾かれるからだ。一般区域でさえ簡単に転移出来るのはレクとマチルダ位だと聞いてる。
「って、何でデイヴも来るんだよ。危ないから帰れ」
「立ち入り禁止区域への侵入は管理人か王族の許可がいるだろう」
「許可はくれるだろ。禁止区域は禁止にされるだけの何かがある。危険だ、帰れ」
「だからこそ尚の事王族として放って置く訳にはいかない」
「くっそ!ヴァンは何してる!」
頑なに俺の後ろにピッタリとくっ付いて来るデイヴ。一人で行かせたヴァンに八つ当たりをするが、当人はここにいない。
「ヴァンには残ってミシェル嬢の守護と犯人捕縛を命じている」
命令じゃ仕方ねー!
ヴァンは良き友人であると共にデイヴの部下でもある。命令なら従う義務が生じるんだよな。それが理不尽な命令なら別だけど、今回はそうでも無い。
けど。
「だからって主人を一人行かせるのはどうかと思うがな!」
「ふふっ。一人じゃないでしょう?
だって私にはアレクがいる。貴方以上に私を良く守ってくれる人はいない。ヴァンもそれがわかってるから送り出してくれたのだよ」
勿論ただ守られる積りも無いけどね。と続けるデイヴに、俺は怒って良いんだか誇って良いんだか、嬉しみと憤りを綯交ぜにした顔で、意味の無さない呻き声を上げるしか出来なかった。
0
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました
陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。
しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。
それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。
ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。
小説家になろうにも掲載中です。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる