男に生まれたからには攻めていく!

無月

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本編

16歳-1

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 日々何の紆余曲折も無く平穏に過ぎて行く。
 今年も俺の誕生日がやって来た。
 デイヴにアプローチされてる身として、そして侯爵家長男として、毎年他貴族も招く大掛かりなものになっている。お陰で準備でてんてこ舞いになる。黒い噂のある貴族や仲の悪い貴族は呼んでないのがせめてもの救いだ。

 「今年もアレクの衣装は用意してるからね」
 「おう。何時もありがとな」

 当日の俺の衣装はデイヴが用意してくれてる。何でも周囲に牽制したいんだそうだ。そんなんしなくても誰も俺にチョッカイ掛けてくれないんだけどな。クスン(泣)。
 くっそー。俺の計画では今頃童貞卒業してるはずだったのにっ。でも流石に遊びでデイヴに手は出せん。仕方ない。
 ……って。俺、普通に相手をデイヴに考えてた?いやいやいや。他にいっぱい可愛子ちゃんいるじゃん。同クラのシェリアちゃんとかチェスター君とかetc。
 ……。
 ダメだ。何故だ。デイヴ以外考えられない。

 「アレク?」
 「デイ……っ!」

 危なかった!
 考えてる内容が内容だっただけに、斜め四十五度から上目遣いに覗き込まれた瞬間。

 キスしようとシテタ。

 待て。落ち着け俺。
 今めっちゃ自然な流れで頬に手を寄せようとしたけど、すんでの所で別の動きにシフトする事に成功した。
 デイヴは、良し。不審に思ってないな。ふー。危ナカッタ。

 「何?」

 内心冷や汗を拭きつつ平静を装う。

 「ん、いや。ボーっとしている様だったから」

 デイヴは俺の顔に触れて言った。
 それだけで今の俺はドキリと心臓が跳ねる。

 「ちょっと考え事してただけだよ」
 「本当に大丈夫?最近私を見てボーっとする事が多いけれど」

 うわっ、そんなに多かったか?気付かれる程?不審に思われる程?
 俺、何やってんだろ。

 「んんんっ。まあ、ほら。もう俺達も来年で卒業じゃん?
 って事はさ。俺もそれまでに答え出さなきゃだよなーって考える訳ですよ。これでも」

 心配事は隠すと返って心配を掛けるだけだ。そう思って差し支えの無い範囲で打ち明ける。
 それをデイヴは真面目な顔で聞いてくれる。そして柔らかく、自然な微笑みを浮かべる。この顔は気の許した人間にしか見せない。特に俺に微笑み掛けてくれる時は甘さも加わる事に、今更気付いた。
 うわっ、俺って鈍!?ってかうわわわわっ、何だこれ胸がキュー!ってするし!?心が弾むっていうかうわこれもうヤバっ!
 心の中でさえ語呂力が低下する俺。前世でも感じた事のない初めての感覚に、どう対応したら良いのかわからない。
 取り敢えず顔を隠そうと思い広げた手でバチンと叩いた。

 「大丈夫?アレク。今凄く小気味良い音がしたけど」
 「大丈夫だ!(多分)」

 手の甲越しにデイヴの手の温もりを感じる。
 不整脈が酷くなる中、心配を掛けない為に後半は心の中だけで付け足した。
 今絶対顔赤い。

 「それよりっ、明日の誕生日会の為に準備整えないとだっ」

 この状況を払拭したくて話題を変える。

 「うん。そうだね。でもアレクは少し休んだ方が良い。明日の為にも体調は万全にしないと」

 今はデイヴの顔が真面に見れないけど、俺を慮ってくれてるのは伝わる。
 俺も少し頭を冷やしたくて有り難く受け取り、早々に自室に籠った。



 翌日。
 一晩グッスリ寝てスッキリ。させたかった。無理だった。
 ……。
 だってさ!?寝れねーよ!心臓があんなにバックンバックンいってりゃ!
 結局あの後明け方まで落ち着かない心臓と格闘して徹夜をしてしまった。何てこったい。誕生日当日だってのに。
 ま、冒険者やってりゃ徹夜で張り込みとか普通にあるからそれで体は壊さんがな。
 一人黄昏ているとコンコンと軽いノック音がする。

 「どうぞ」

 頭を振って切り替え言えば、何時もの如くウルがカートを手に入って来る。カートには着替えと洗面用具一式が置かれている。
 普段はケイリーがカートを運んで来るが、今日に限ってはゲスト側参加なのでここには居ない。

 「アレクサンダー様。
 ……。
 寝ていませんね?」

 入ってくるなり沈黙を挟んだのち、目を細めて言ってくる。
 くっそ、ウルには隠せねーか。流石は俺付きのメイドと誉めておこう。

 「問題無い」
 「ええ、問題無いでしょうとも。
 寝ていませんね?」
 「だから問題無い」
 「はい、問題は無いでしょう。
 寝ていませんね」
 「……」
 「寝・て・い・ま・せ・ん・ね」
 「……ハイ」

 ウルの有無を言わせない満面の笑顔が怖い。
 俺は自然と正座を取り、背筋を伸ばして肯定した。

 「全く。悩める年頃なのは認めますがね、今日はアレクサンダー様の大切な誕生日です。お時間はまだ余裕がありますのでお休みになってください」

 呆れ顔のウルに「めっ」の姿勢で諭される。

 「う゛。休めるなら休んでる」
 「ふふ。そうですね。ですから寝かせて差し上げます」

 ウルに促されて渋々ベットに横になる。
 そのすぐ横にウルが付いて何やらあやす様に俺の頭を撫でり撫でりしてくる。
 ウルさんや。オイラはもう小さい子供じゃ無いんだが。
 小さい頃に良く夜更かしを叱られ寝かしつけられたのを思い出す。
 でもなー。流石にもうそんな歳じゃ無いし、これで寝るなんてスコー。



 俺の意識はそこで途絶えた。



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