9 / 17
9、信じられないんだけど……1
しおりを挟む
…え~え~え~~…………
奏耶の自室ベッドの上…ゴロゴロゴロゴロ転がって上から見ても逆さから見てみても、艶々と輝く外観、それはそれだった。
「ウサッチーのリップ…」
鷹先輩とぶつかった時に側に落ちていたこれ…これはストロベリーフレーバー。そして、鷹先輩から香ってきた香りもこれと同じストロベリー。
キュポッとキャップを外して中を見ると、リップはどうみても新品。だったら鷹先輩がこれを使っていた、と言うわけでは無さそう。
じゃ彼女の、と思うのだが、鷹先輩は彼女がいなくて有名な先輩なんだし、彼女のだったら使用済みであった方が自然だし…女子なら直ぐにつけた感想を求めるだろうし…だからこれが彼女のと言う線は薄い。それに、これをつけた彼女にキスでもされていれば先輩に香りが移っていても納得できる。でも使ってないし、彼女がいないんだからそうじゃ無い。けれども先輩からはしっかりとこのリップの香りがしてて…
…ずっと、持ってたんじゃない?これを……
そう、考えるととてもしっくりくるんだ。だって女子達のポーチやカバンの中はいつも甘くて華やかな香りでいっぱいだから。それは彼女達がいつも化粧品や香りを放つ小道具を持っているから。ポーチやカバンにはその香りが濃く染み付いている。
これを落とした鷹先輩に染み付いている香り…それは香りが染み付くまで、しっかりと身につけていた証拠にもなる。
「なんで…?」
純粋な疑問だ。だって、あの鷹先輩だよ?女子なんかには見向きもしなさそうな……………
人知れず好きな人がいたとか?その人の好きなキャラがこれ、で渡すタイミングを測ってた?いや、ラッピング無しはないだろう。うん絶対ないだろう。女子に可愛い贈り物をするんなら、ラッピングセンスから評価対象にされるのに。まてよ、姉妹の物っていう線もある。間違えてポッケの中に入っちゃったとか…でも、そしたら気が付かないものかな?ストロベリーの香りもしてるのに、ずっとポケットに入れっぱなしにしておく?周囲にバレたら恥ずかしいから自分のカバンの中とかにしまわないか?
「じゃあ、これ………先輩のだ……」
色々考えて、最終的に本来なら行きつかないような答えを出してしまった。自分の意思で、ポケットに入れて持ち歩いていた、と……
…これ、先輩のだよ、絶対……
キリッとして整った鷹先輩の顔立ちを思い浮かべる…少し眉を寄せた不機嫌そうな表情は、本気で近づいちゃダメかもと思わせる気迫を周囲に撒き散らすものだから、あの顔の先輩に女子や後輩は声なんてかけられない。
勉強もスポーツもできて文武両道とも言うべき多くの生徒の憧れの先輩で……
「………か~~わい………」
あの険しい表情の下、何を考えてこのリップを持っていたのだろうかと、奏耶の心に余計な好奇心がムクムクと湧き上がってきてしまう。
奏耶の掌の上では、ピンクとレッドのツートンカラーのボディから点と線で描ける様なゆるゆるデザインの真っ白いうさぎウサッチーが、飛び出している。そこも触ればツルツル、スベスベの感触が癒されるなんて良く女子が話していたものだ。
これを、自分の為に所持してるとしたら………
「か~~わい……」
不思議な事に、あんなに良い男がこんなファンシーな物を自分から嬉々として持ち歩いている事実に不快感が湧いてこない…なんで、と思うくらい気持ち悪くもない。それよりも、どんな顔をしてウサッチーを見つめているのかと更なる興味が湧いてきた。
だから、ちゃんと鷹先輩に返す事にしたのだ。このウサッチーリップを。
鷹先輩は基本友人数名で行動している。昼休みは身体を動かす遊びをしている事があるけれども、時々一人になることもある。
「トイレよ!」
流石の女子もそこ迄は追いかけられないし、情報も取れないだろうけど。一人になると言ったら不思議でもない一時だろうとは思う。
「ふ~~ん。皆んな良く調べてるね?」
手が届かない憧れの存在として君臨している鷹先輩だからこそ、衆人環視と言う女子の監視網が熱く張られていて。ちょっと聞いただけで一人になるチャンスをゲットできた。ま、これ位の情報なら予想することは難しくはないのかも知れないけれど。
「それより、まりちゃんが男子に興味持つなんて~」
「ね~」
今日も今日とて女子に囲まれている自分の行動とは真逆のことをしているのだから、女子から揶揄われても仕方がない。
「この間まで逃げ回ってたのにね?」
過去が過去なだけに、確かに自分から好んで男子に近付きたいとは思わなかった。鷹先輩は怖いと思っていたし、つい最近では中楚君をキッパリ断って顔も見ずに走って逃げたし…その中楚君とは元々仲が良いわけではないからあれ以来積極的な接触は無い。その時の事を詳しく聞いてこないけれども何かを察していそうな女子の勘と堅くなった壁があるから、来たくても来れないのかも知れないけれども。
「ん~まあね?ちょっとお世話になっちゃったから、お礼、言っとこうかと思って…」
そう、思いっきりぶつかったし。多分、鷹先輩の宝?も持ってきちゃったし。こんな物を返すんだから人気の無い一人の時がいいに決まってるし。
「え、やだ!羨ましい!何?何があったの?」
「まりちゃん!鷹先輩と接触したの?どんな?どんな感じ?」
「やだ~良いなぁ~私も鷹先輩とお近付きになりたい~」
目の前に自分達のアイドルと言い切っている男子がいるのにも関わらず、女子と言う生き物は強かだ。そんな移り気で生き生きとした所も女子らしいと言えば女子らしくて好き。
「お近付きじゃ無いよ。転びそうになった時に足踏んじゃったから…ちゃんと謝ろうと思って。」
「ありゃりゃ、ドジっ子だったか…」
「あ~あ……」
御愁傷様、とでも言いたそうな視線に変わった。
「そ、変に睨まれても面白く無いしね。ケジメはつけようかなって。」
「でも、まりちゃん大丈夫?」
男子が苦手、これを知っている女子は今まで以上に同情的だ。
「うわ、優し~~!そんなに優しくしたら、皆んなえっちゃんに惚れちゃうじゃん。」
「え~惚れてくれるなら、自分だけを大切にしてくれる人がいいなぁ~」
また人を目の前にしてえっちゃんもはっきり言い切る。この空気感が落ち着く。自分だけを独り占めしようとか、自分だけを見てて欲しいとか、浮気は許さないとか…縛りつける雰囲気は苦手だから。
…ここが、居心地いいんだよね………
としみじみ思いながらも、久しぶりに女子以外に動いた好奇心を埋めるべく奏耶はゆっくりと席を立つ。
「じゃ、ちょっと行ってくる。」
奏耶の自室ベッドの上…ゴロゴロゴロゴロ転がって上から見ても逆さから見てみても、艶々と輝く外観、それはそれだった。
「ウサッチーのリップ…」
鷹先輩とぶつかった時に側に落ちていたこれ…これはストロベリーフレーバー。そして、鷹先輩から香ってきた香りもこれと同じストロベリー。
キュポッとキャップを外して中を見ると、リップはどうみても新品。だったら鷹先輩がこれを使っていた、と言うわけでは無さそう。
じゃ彼女の、と思うのだが、鷹先輩は彼女がいなくて有名な先輩なんだし、彼女のだったら使用済みであった方が自然だし…女子なら直ぐにつけた感想を求めるだろうし…だからこれが彼女のと言う線は薄い。それに、これをつけた彼女にキスでもされていれば先輩に香りが移っていても納得できる。でも使ってないし、彼女がいないんだからそうじゃ無い。けれども先輩からはしっかりとこのリップの香りがしてて…
…ずっと、持ってたんじゃない?これを……
そう、考えるととてもしっくりくるんだ。だって女子達のポーチやカバンの中はいつも甘くて華やかな香りでいっぱいだから。それは彼女達がいつも化粧品や香りを放つ小道具を持っているから。ポーチやカバンにはその香りが濃く染み付いている。
これを落とした鷹先輩に染み付いている香り…それは香りが染み付くまで、しっかりと身につけていた証拠にもなる。
「なんで…?」
純粋な疑問だ。だって、あの鷹先輩だよ?女子なんかには見向きもしなさそうな……………
人知れず好きな人がいたとか?その人の好きなキャラがこれ、で渡すタイミングを測ってた?いや、ラッピング無しはないだろう。うん絶対ないだろう。女子に可愛い贈り物をするんなら、ラッピングセンスから評価対象にされるのに。まてよ、姉妹の物っていう線もある。間違えてポッケの中に入っちゃったとか…でも、そしたら気が付かないものかな?ストロベリーの香りもしてるのに、ずっとポケットに入れっぱなしにしておく?周囲にバレたら恥ずかしいから自分のカバンの中とかにしまわないか?
「じゃあ、これ………先輩のだ……」
色々考えて、最終的に本来なら行きつかないような答えを出してしまった。自分の意思で、ポケットに入れて持ち歩いていた、と……
…これ、先輩のだよ、絶対……
キリッとして整った鷹先輩の顔立ちを思い浮かべる…少し眉を寄せた不機嫌そうな表情は、本気で近づいちゃダメかもと思わせる気迫を周囲に撒き散らすものだから、あの顔の先輩に女子や後輩は声なんてかけられない。
勉強もスポーツもできて文武両道とも言うべき多くの生徒の憧れの先輩で……
「………か~~わい………」
あの険しい表情の下、何を考えてこのリップを持っていたのだろうかと、奏耶の心に余計な好奇心がムクムクと湧き上がってきてしまう。
奏耶の掌の上では、ピンクとレッドのツートンカラーのボディから点と線で描ける様なゆるゆるデザインの真っ白いうさぎウサッチーが、飛び出している。そこも触ればツルツル、スベスベの感触が癒されるなんて良く女子が話していたものだ。
これを、自分の為に所持してるとしたら………
「か~~わい……」
不思議な事に、あんなに良い男がこんなファンシーな物を自分から嬉々として持ち歩いている事実に不快感が湧いてこない…なんで、と思うくらい気持ち悪くもない。それよりも、どんな顔をしてウサッチーを見つめているのかと更なる興味が湧いてきた。
だから、ちゃんと鷹先輩に返す事にしたのだ。このウサッチーリップを。
鷹先輩は基本友人数名で行動している。昼休みは身体を動かす遊びをしている事があるけれども、時々一人になることもある。
「トイレよ!」
流石の女子もそこ迄は追いかけられないし、情報も取れないだろうけど。一人になると言ったら不思議でもない一時だろうとは思う。
「ふ~~ん。皆んな良く調べてるね?」
手が届かない憧れの存在として君臨している鷹先輩だからこそ、衆人環視と言う女子の監視網が熱く張られていて。ちょっと聞いただけで一人になるチャンスをゲットできた。ま、これ位の情報なら予想することは難しくはないのかも知れないけれど。
「それより、まりちゃんが男子に興味持つなんて~」
「ね~」
今日も今日とて女子に囲まれている自分の行動とは真逆のことをしているのだから、女子から揶揄われても仕方がない。
「この間まで逃げ回ってたのにね?」
過去が過去なだけに、確かに自分から好んで男子に近付きたいとは思わなかった。鷹先輩は怖いと思っていたし、つい最近では中楚君をキッパリ断って顔も見ずに走って逃げたし…その中楚君とは元々仲が良いわけではないからあれ以来積極的な接触は無い。その時の事を詳しく聞いてこないけれども何かを察していそうな女子の勘と堅くなった壁があるから、来たくても来れないのかも知れないけれども。
「ん~まあね?ちょっとお世話になっちゃったから、お礼、言っとこうかと思って…」
そう、思いっきりぶつかったし。多分、鷹先輩の宝?も持ってきちゃったし。こんな物を返すんだから人気の無い一人の時がいいに決まってるし。
「え、やだ!羨ましい!何?何があったの?」
「まりちゃん!鷹先輩と接触したの?どんな?どんな感じ?」
「やだ~良いなぁ~私も鷹先輩とお近付きになりたい~」
目の前に自分達のアイドルと言い切っている男子がいるのにも関わらず、女子と言う生き物は強かだ。そんな移り気で生き生きとした所も女子らしいと言えば女子らしくて好き。
「お近付きじゃ無いよ。転びそうになった時に足踏んじゃったから…ちゃんと謝ろうと思って。」
「ありゃりゃ、ドジっ子だったか…」
「あ~あ……」
御愁傷様、とでも言いたそうな視線に変わった。
「そ、変に睨まれても面白く無いしね。ケジメはつけようかなって。」
「でも、まりちゃん大丈夫?」
男子が苦手、これを知っている女子は今まで以上に同情的だ。
「うわ、優し~~!そんなに優しくしたら、皆んなえっちゃんに惚れちゃうじゃん。」
「え~惚れてくれるなら、自分だけを大切にしてくれる人がいいなぁ~」
また人を目の前にしてえっちゃんもはっきり言い切る。この空気感が落ち着く。自分だけを独り占めしようとか、自分だけを見てて欲しいとか、浮気は許さないとか…縛りつける雰囲気は苦手だから。
…ここが、居心地いいんだよね………
としみじみ思いながらも、久しぶりに女子以外に動いた好奇心を埋めるべく奏耶はゆっくりと席を立つ。
「じゃ、ちょっと行ってくる。」
1
あなたにおすすめの小説
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
計画的ルームシェアの罠
高木凛
BL
両親の転居をきっかけに、幼馴染の一ノ瀬涼の家に居候することになった湊。
「学生のうちは勉強に専念しろ」なんて正論を吐く涼に反発しながらも、湊は心に決めていた。
しかし湊は知らない。一ノ瀬涼の罠に。
【初回3話は毎日更新! 以降は火・木19時更新予定】
虐げられた令息の第二の人生はスローライフ
りまり
BL
僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。
僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。
だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。
救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。
お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。
従者は知らない間に外堀を埋められていた
SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL
転生先は悪役令息の従者でした
でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません
だから知らんけど精神で人生歩みます
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる