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91、初遺跡 2
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「アランド!!」
丁度アランドがウリーの頭を撫でているときにヒュンダルンからお呼びがかかった。
「おや、気付かれたようだ。」
やれやれ行くか、とアランドはウリートの髪をもう一撫でしてから側を離れて行く。
「行ってらっしゃい、兄様!」
そんなアランドにウリートは手を振って見送った。
ヒュンダルンの元で直ぐに話し合いに入るアランドを見て、ウリートは二人とも忙しいのだと改めて思い知らされた。
緑豊かな中にある城下の遺跡…広大な範囲で掘り起こされている遺跡の中は土埃の乾いた匂いがする。
少し、見て歩いてもいいだろうか…?
ヒュンダルンもアランドも多数の者達に囲まれてしまって、いつ途切れるともわからない様な状況だ。テントで待っている様に言われているから、外に出ないでテントの中から見学するくらいならば問題ないだろう。
テントには幾つか自由に出入りできる出入り口があって、そこから覗けば少しだけ外で作業している者達の姿が見えたり、発掘後の遺跡の姿を垣間見る事ができる。
不思議だ…
土に埋まった中に、発達した文明があったんだから…古語の文献もここで発掘された物の一つらしいし。どんな状態で、どんな風に発掘されたのか、今までだったらこんな所を見る事も望めなかったのに……
貴族用のテントの中には簡易ではあるがお茶や軽食が取れるようにとある程度の設備が備わり、至れりつくせりの仕様になっていて長時間の滞在でも居心地は悪くない。各国の貴族達も優雅に寛ぎながら現地で働いている者達から話を聞くんだそうだ。
「歩きたいな…」
遺跡は決して散歩に適しているとは言えない。整地されているとは言え、全てが遺跡優先で作られているから、時に足場は悪くもなる。発掘途中の場所もあり崩れてしまう危険もあって、本来ならば現地にいる調査員と共に行動すべきとされている。だから歩き回りたくてウズウズしていても、係官が来るまではここに待機一択となるだろう。
「そう言えば…ライーズ副書記官長様はどうしただろう?」
レオドル卿の補佐役としてきっとここにいると思ったのだが…
「おや、お貴族様はライーズ様と知り合いで?」
テント付近で辺りを伺いながらポツリと呟いた独り言を、如何やら巡回に来ていた自警団の一人に聞かれた様だ。地元の有志の民だろう。ガタイは良いが着ている物は実に質素な軽装だ。腕に黄色の布の腕章も付けている。
「こんにちは。貴方は?」
律儀に挨拶をする義理はないのだが、ウリートはそう声をかけた。
「あ、ここの警備をやってる者です。」
「そうですか。」
警備を任されているのならばこの遺跡に誰が来ているのか把握する必要性もあるのかな?
「私はウリート・アクロース。アクロース侯爵家の者です。今日はこちらに見学に来させてもらいました。」
「あぁ、こりゃ参ったな……こんなに丁寧に挨拶されても、こちとら庶民なんで、作法は難しいんですよ……」
明らかに困ってしまった警備の男。
「申し訳ありません。私もここは初めてなのです。」
そして、多分、作法を知らない庶民と言われる者と口を効いたのも初めてだと思う。
「でしょうね…ここにくる様な貴族様は、いかにも頭でっかちで研究にしか興味が無いか、ギラギラした目つきをしてて、金目の物は無いかと探している様な方ばっかりですからね。」
「金……目……」
歴史的価値のある貴重な出土品を求めている方々、かな?
「貴方様はそれのどれとも違う風に見えますね?外見もお可愛らしいし。こんな殺風景な遺跡に天使が舞い降りて来たのかと思っちゃいましたよ!」
「……天使…?」
そんな事今まで言われたこともないけれど、こんな大袈裟な褒め言葉が庶民の主流なんだろうか?
「どうした?スパン!」
「おぅ!ここだ!お疲れさん!」
「お、こりゃ……!」
「おいおい、スパン…なんちゅう美人に捕まってるんだよ…」
スパンと呼ばれた庶民の自警団員の仲間達だろう。見回りのついでなのだろうか、数名ワラワラと寄って来た。
「皆さんはここで働かれているので?」
「そぅっすよ!えっと、貴方様は?」
「アクロース侯爵家のウリートと言います。」
「アクロース、侯爵家?」
「うげ!アクロース騎士団長の!?」
「え?騎士団長の?」
「はい、兄になります。」
兄アランドを知る同僚に会えるなんて喜ばしいことだとウリートはニッコリと微笑む。
「うぇぇぇ……」
「まじか……あの方の…こんなに綺麗な方なのに……」
「……?あの、兄が何か?」
何故か自警団員のあまりよろしくない様なこの反応は一体何でだろうか?考えられない事だけれども…………もしや兄様、部下の方々に虐められてはいませんよね?
丁度アランドがウリーの頭を撫でているときにヒュンダルンからお呼びがかかった。
「おや、気付かれたようだ。」
やれやれ行くか、とアランドはウリートの髪をもう一撫でしてから側を離れて行く。
「行ってらっしゃい、兄様!」
そんなアランドにウリートは手を振って見送った。
ヒュンダルンの元で直ぐに話し合いに入るアランドを見て、ウリートは二人とも忙しいのだと改めて思い知らされた。
緑豊かな中にある城下の遺跡…広大な範囲で掘り起こされている遺跡の中は土埃の乾いた匂いがする。
少し、見て歩いてもいいだろうか…?
ヒュンダルンもアランドも多数の者達に囲まれてしまって、いつ途切れるともわからない様な状況だ。テントで待っている様に言われているから、外に出ないでテントの中から見学するくらいならば問題ないだろう。
テントには幾つか自由に出入りできる出入り口があって、そこから覗けば少しだけ外で作業している者達の姿が見えたり、発掘後の遺跡の姿を垣間見る事ができる。
不思議だ…
土に埋まった中に、発達した文明があったんだから…古語の文献もここで発掘された物の一つらしいし。どんな状態で、どんな風に発掘されたのか、今までだったらこんな所を見る事も望めなかったのに……
貴族用のテントの中には簡易ではあるがお茶や軽食が取れるようにとある程度の設備が備わり、至れりつくせりの仕様になっていて長時間の滞在でも居心地は悪くない。各国の貴族達も優雅に寛ぎながら現地で働いている者達から話を聞くんだそうだ。
「歩きたいな…」
遺跡は決して散歩に適しているとは言えない。整地されているとは言え、全てが遺跡優先で作られているから、時に足場は悪くもなる。発掘途中の場所もあり崩れてしまう危険もあって、本来ならば現地にいる調査員と共に行動すべきとされている。だから歩き回りたくてウズウズしていても、係官が来るまではここに待機一択となるだろう。
「そう言えば…ライーズ副書記官長様はどうしただろう?」
レオドル卿の補佐役としてきっとここにいると思ったのだが…
「おや、お貴族様はライーズ様と知り合いで?」
テント付近で辺りを伺いながらポツリと呟いた独り言を、如何やら巡回に来ていた自警団の一人に聞かれた様だ。地元の有志の民だろう。ガタイは良いが着ている物は実に質素な軽装だ。腕に黄色の布の腕章も付けている。
「こんにちは。貴方は?」
律儀に挨拶をする義理はないのだが、ウリートはそう声をかけた。
「あ、ここの警備をやってる者です。」
「そうですか。」
警備を任されているのならばこの遺跡に誰が来ているのか把握する必要性もあるのかな?
「私はウリート・アクロース。アクロース侯爵家の者です。今日はこちらに見学に来させてもらいました。」
「あぁ、こりゃ参ったな……こんなに丁寧に挨拶されても、こちとら庶民なんで、作法は難しいんですよ……」
明らかに困ってしまった警備の男。
「申し訳ありません。私もここは初めてなのです。」
そして、多分、作法を知らない庶民と言われる者と口を効いたのも初めてだと思う。
「でしょうね…ここにくる様な貴族様は、いかにも頭でっかちで研究にしか興味が無いか、ギラギラした目つきをしてて、金目の物は無いかと探している様な方ばっかりですからね。」
「金……目……」
歴史的価値のある貴重な出土品を求めている方々、かな?
「貴方様はそれのどれとも違う風に見えますね?外見もお可愛らしいし。こんな殺風景な遺跡に天使が舞い降りて来たのかと思っちゃいましたよ!」
「……天使…?」
そんな事今まで言われたこともないけれど、こんな大袈裟な褒め言葉が庶民の主流なんだろうか?
「どうした?スパン!」
「おぅ!ここだ!お疲れさん!」
「お、こりゃ……!」
「おいおい、スパン…なんちゅう美人に捕まってるんだよ…」
スパンと呼ばれた庶民の自警団員の仲間達だろう。見回りのついでなのだろうか、数名ワラワラと寄って来た。
「皆さんはここで働かれているので?」
「そぅっすよ!えっと、貴方様は?」
「アクロース侯爵家のウリートと言います。」
「アクロース、侯爵家?」
「うげ!アクロース騎士団長の!?」
「え?騎士団長の?」
「はい、兄になります。」
兄アランドを知る同僚に会えるなんて喜ばしいことだとウリートはニッコリと微笑む。
「うぇぇぇ……」
「まじか……あの方の…こんなに綺麗な方なのに……」
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