[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

文字の大きさ
54 / 72

54 王子とリレラン

しおりを挟む
「ね?いい人間だっただろ?」

 レギル王子の寝台の上でゴロンと寝転んでバブバフと掛け布団の感触をリレランは楽しんでいる。
 レギル王子の私室に入るとリレランはすぐ様寝台に飛び乗ってはまるで遊具の一つかの様にゴロゴロと転がるのがこの頃のお気に入りの様で……寝台はいつもレギル王子がそこで寝ていた場所で残り香だってあるだろうに、リレランは全く気にもしてもいない。

「……ラン……」

 レギル王子は何やら困った顔をしてリレランに近づく。最早、先程の騎士タリムの事はレギル王子の頭にはない。

「寝台が気に入ったのならば、リレランの専用の部屋を作らせるが?」

 いや、もともと部屋はあったのだが、ここに来てからと言うものリレランは風の塔に上がって夜は休んでいたし、昼間とて用意した部屋に居つかない。だから、一度も使われないままにリレランの部屋は開かずの間と化していた。それであるのに、あの風事件の後からはやたらとレギル王子の側にリレランは寄ってくる。レギル王子にとっては嬉しいことではあるのだが、流石に夜半に寝台の中にまでリレランが潜り込んできた時には身体が固まった…リレランはそんなレギル王子の様子など我関せずと言う体でレギル王子の腕の中にスッポリと潜り込んではスヤスヤと寝息を立てる…

「いらないよ。レギルの所がいいんだ。」

 屈託のない笑顔付きで言われれば、これにはレギル王子が根を上げた。リレランが寝入ってから一刻も経たずに自分は寝台の中から這い出る羽目になる。欲しいと思う者が腕の中にいて、平静を保って眠れるわけがない。ここ数日こんな事が続いていれば寝不足と戦っているレギル王子もいい加減弱音を吐き出した。




「へぇ………そんなのが、悩みになるのか?」

 近衞騎士隊詰所、深夜の勤務時間帯に部屋で就寝して守られているはずのレギル王子が何故か今騎士ヨシット・ルーランの目の前にいる。いつもの様にリレランが寝入ってからそっと部屋を抜け出してきた様だ。

 如何やら王子殿下は不眠気味では?と言う他騎士達からの報告に上がっていた理由が判明したのだか、ヨシットにとってはただ呆れるばかりの内容で………

「……そんなのと言うが、お前ね……」
 
 レギル王子の手には迷い森でヨシットが渡したお守りのネックレスが握られていて、それをそっとヨシットに渡してきた。

「これには助かった。十分にお守りとして役にたったとスザンカ嬢に返しておいてくれないか?」

「なんだ、残念がるなあいつ。これが縁で王子とどうにかなるかも知れなかったのに。」

 クスクスと本気とも取れぬ事をヨシットは言ってくる。迷い森から帰っ後コアットとヨシットが持ち帰った薬草が功を奏してスザンカ嬢を始め多くの者達の命をつなぎとめたのだ。今では体力の回復を図る為に領地で療養をしているらしい。

「………残念だが、私では……」

 リレランと共に生きると決めたその時から、王位継承は諦めているし、なんなら王族位からも籍を抜いて貰えないだろうかとさえ考えてはいるのだ。それには両陛下が絶対に了承してくれないのだが…自分達が生きている間はせめて王族位で居てくれと母、王妃に泣き付かれてしまってもいる。

「そこまで覚悟を決めていたなら手を出してもいいんでは?」

 深夜の詰所に他の騎士は居ない。王族居室前の夜勤番と詰所待機のヨシットだけだ。だが、それでもこんな所で王子のこんな相談は如何だと思うのだ。苦笑しか浮かばないヨシットが、もう諦めて手を出してしまえとレギル王子に持ちかけている。

「………安心するんだそうだ…」

「ん?何がだ?」  

 やや疲れた表情が濃く出ているレギル王子はポツリと言う。

「私の腕の中は、卵の中にいる様で安心するのだと………」

「ぶっ………く、くくくくくく………………ははははは……!それじゃあ、手を出したくても出せんな!」

 他人事だと思うからヨシットも腹を抱えて笑う事も出来るだろうが、レギル王子にとってはそろそろ死活問題に発展しそうだった。

「まだまだ、ランは卵から出たての子供なんだ…そんな者を手籠にしたら末代までの恥……!」

 苦しそうに呟くレギル王子に、ポツリとヨシットは言ってみる。

「でも、相手は龍だろう?人間の年齢に当てはめなくても…と、言うか当てはまらないんじゃないか?彼らはいつが成人だ?それさえも俺は知らんのだが……」

「…なるほど……龍の生態など私も知らない……」

「な?ならば、本人に聞いてみろ?こうしたいんだって…良いかって?」

 まるで、ヨシットには今のレギル王子が何も知らない子供に見えて仕方ない…曲がりなりにも王位を継ぐ為に教育されて来たんだ。閨教育だってもう済んでるだろうに……何故動けないのか?側から見ているとつい笑ってしまいそうになる。レギル王子本人は至って真剣なんだろうけれど……

「分かった…ランに聞いてみよう…」

 素直に人の忠告を聞くレギル王子は芯から優しい、良い男だとヨシットは思っている。
そんな親友には幸せになってもらいたいものだ…

「頑張れよ!友よ!!」

 爽やかに笑ったヨシットに見送られてレギル王子はやっと自室に帰っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...