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60 レギル王子の書状 2
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国境付近の村々をレギル王子一行は順調に回り終えて行く。幸いな事に報告に上がっている内容とほぼ相違なく、まだ領土に召喚された領主はいない。父王に送った書状からの返答もまだ無いために時期尚早かとも思われたのだが、スムーズに事を進められるようにとレギル王子は精霊との契約者を育てるべく草案を組み立てている。
「まずは、知識もそうだが人格者でなくてはいけない。」
自身が人格者かどうかと問われれば、恥ずかしげもなく少年の様なリレランに触れてしまっているので、この時点で疑問ではあるのだが…先ずは、己の欲望のままに精霊を使おうとする者には誓って契約などさせられる訳がない。知識も教養もない様な民ではいけない。そこから土台造りをしていかなければならないのでは?そうなると、かなり長い目で見なくてはいけない。
「人格者…ねぇ…?ねえ、レギル…」
時折、思い詰めた様に草案書と睨めっこをしつつ、目の前にいるリレランにさえも注意がいかなくなるレギル王子…彼の中では大きな決断と行動を起こそうとしている様なのだが…今日も椅子に座りながら、机の上の書類と睨めっこをしているレギル王子の背中からリレランは覆いかぶさる様に抱き締めて来た。
「どうした…?」
難しい顔で考え事をしていてもリレランがレギル王子に触れれば優しい笑顔で答えてくれるレギル王子。
「外に出てごらんよ?」
「外…?」
「そう…レギルは今まだ卵の中にいるみたい…外に出て周りを見てみて?」
リレランにはマリーアンヌがあの時何を言おうとしていたのかわかる気がしている。具体的にどうとは言えないが、自分の中ばかりで現実や本質が見えていなかったかつての自分…マリーアンヌは外へと連れ出してくれた。その当時のリレランは望んでいなかったものかも知れないが、結果としては卵から出て正解だ。
レギルに会えた………何も言わず、返さない思い出と、一人ぼっちの卵の中じゃなくて、触れれば暖かく、語りかければ返してくれる……当たり前のこの日々が、あの時の様に愛おしくて愛おしくて……リレランはもう手放す事が出来ないと早々に感じてしまっているのだ。
「自分が守ろうとしている人間の顔…見てきて……!」
クイッとレギル王子の腕を掴んでヒョイッと立たせると、護衛が止めるのも聞かずにスタスタと外に出るリレラン。
「本当は僕がいるのに、護衛なんていらないでしょ?ずっと龍の姿でいようか?」
護衛と言うならリレラン一人で十分なんだ。今でもリレランよりも身体が大きいレギル王子をヒョイと立ち上がらせる力もある。
「なんなら、抱き上げて行って貰えば?」
「出来るよ?」
一国の王子が、それも大の男が子供の様なリレランに文字通り良い様に転がされている。それを見ていた護衛の近衞騎士ヨシットがもう辛抱ならんと言う風に笑いを堪えられずに腹を抱えた。
「抱えなくて良い、ラン……それに、龍の姿になんてなったら大混乱が起きるからやめてくれ………」
混乱ばかりではなく唯一のリレランを手に入れようと国同士の戦争に発展してしまってもおかしくはない。そんな事態になったらレギル王子にとっては頭が痛い所では済まされない。そして、レギル王子としてはリレランの龍となったその姿を他の誰にも見せたく無いのもまた事実で…
「まあ、レギルは歩けるからね。で、行く?」
有言実行型のリレランである。これで民の元へと出向かなければ本当に抱き抱えられて連れ出されそうだ。
「分かった。行こう…ヨシット私は少し出てくるが…?」
「了解だ。ラン様、同行してもよろしいですか?」
リレランがいれば云々はヨシットも理解はしている。城にいた頃、リレランとの素手の手合わせを何度もしている。それも一対一ではなくてリレラン一人に騎士数人という、多勢に無勢だ。
それでも一度として騎士達は勝てたことがない………
「構わないだろ?レギル、逆に大勢の人に見てもらった方が早く理解されると思うよ。」
リレランは一体何を見ろと?ここ周辺の村々は余す所なく回ってきている。勿論闇夜に紛れて暗いうちに回ったわけではない。昼日中に人々の顔を見つつ見て回ったのだ。それをリレランも知っているのに…
「リレラン…私に何を見ろと?」
領主館から徒歩圏内にも人々の、農民の暮らしがある。朝も明けぬうちから彼らは起き出し、鍬や鋤を、水桶を抱えて家から出てくる。リレランは彼らの生活の一つ一つを見てみたら良いと言う。日長1日ここにいてボゥッと見ていても良い、それでも何か気がつくはずだ、と…しかし、この視察日程にもそんなにゆとりを取ってはいられない。速やかな次期皇太子妃決定の為にも各領地に問題が無いことを把握しておきたいのだ。よって、行動時間を変更する事にした。今までは朝食後に馬車に乗り込み、昼前から夕暮れ時に渡って村々を視察し領主館で問題の検討と確認作業をしていたのだが、出発を日の出前とする事にした。周りの者達には申し訳ないが、日程を変更せずに農村地での人々の生活そのものを見るにはこれが手っ取り早いとレギル王子は判断したからだ。
「まずは、知識もそうだが人格者でなくてはいけない。」
自身が人格者かどうかと問われれば、恥ずかしげもなく少年の様なリレランに触れてしまっているので、この時点で疑問ではあるのだが…先ずは、己の欲望のままに精霊を使おうとする者には誓って契約などさせられる訳がない。知識も教養もない様な民ではいけない。そこから土台造りをしていかなければならないのでは?そうなると、かなり長い目で見なくてはいけない。
「人格者…ねぇ…?ねえ、レギル…」
時折、思い詰めた様に草案書と睨めっこをしつつ、目の前にいるリレランにさえも注意がいかなくなるレギル王子…彼の中では大きな決断と行動を起こそうとしている様なのだが…今日も椅子に座りながら、机の上の書類と睨めっこをしているレギル王子の背中からリレランは覆いかぶさる様に抱き締めて来た。
「どうした…?」
難しい顔で考え事をしていてもリレランがレギル王子に触れれば優しい笑顔で答えてくれるレギル王子。
「外に出てごらんよ?」
「外…?」
「そう…レギルは今まだ卵の中にいるみたい…外に出て周りを見てみて?」
リレランにはマリーアンヌがあの時何を言おうとしていたのかわかる気がしている。具体的にどうとは言えないが、自分の中ばかりで現実や本質が見えていなかったかつての自分…マリーアンヌは外へと連れ出してくれた。その当時のリレランは望んでいなかったものかも知れないが、結果としては卵から出て正解だ。
レギルに会えた………何も言わず、返さない思い出と、一人ぼっちの卵の中じゃなくて、触れれば暖かく、語りかければ返してくれる……当たり前のこの日々が、あの時の様に愛おしくて愛おしくて……リレランはもう手放す事が出来ないと早々に感じてしまっているのだ。
「自分が守ろうとしている人間の顔…見てきて……!」
クイッとレギル王子の腕を掴んでヒョイッと立たせると、護衛が止めるのも聞かずにスタスタと外に出るリレラン。
「本当は僕がいるのに、護衛なんていらないでしょ?ずっと龍の姿でいようか?」
護衛と言うならリレラン一人で十分なんだ。今でもリレランよりも身体が大きいレギル王子をヒョイと立ち上がらせる力もある。
「なんなら、抱き上げて行って貰えば?」
「出来るよ?」
一国の王子が、それも大の男が子供の様なリレランに文字通り良い様に転がされている。それを見ていた護衛の近衞騎士ヨシットがもう辛抱ならんと言う風に笑いを堪えられずに腹を抱えた。
「抱えなくて良い、ラン……それに、龍の姿になんてなったら大混乱が起きるからやめてくれ………」
混乱ばかりではなく唯一のリレランを手に入れようと国同士の戦争に発展してしまってもおかしくはない。そんな事態になったらレギル王子にとっては頭が痛い所では済まされない。そして、レギル王子としてはリレランの龍となったその姿を他の誰にも見せたく無いのもまた事実で…
「まあ、レギルは歩けるからね。で、行く?」
有言実行型のリレランである。これで民の元へと出向かなければ本当に抱き抱えられて連れ出されそうだ。
「分かった。行こう…ヨシット私は少し出てくるが…?」
「了解だ。ラン様、同行してもよろしいですか?」
リレランがいれば云々はヨシットも理解はしている。城にいた頃、リレランとの素手の手合わせを何度もしている。それも一対一ではなくてリレラン一人に騎士数人という、多勢に無勢だ。
それでも一度として騎士達は勝てたことがない………
「構わないだろ?レギル、逆に大勢の人に見てもらった方が早く理解されると思うよ。」
リレランは一体何を見ろと?ここ周辺の村々は余す所なく回ってきている。勿論闇夜に紛れて暗いうちに回ったわけではない。昼日中に人々の顔を見つつ見て回ったのだ。それをリレランも知っているのに…
「リレラン…私に何を見ろと?」
領主館から徒歩圏内にも人々の、農民の暮らしがある。朝も明けぬうちから彼らは起き出し、鍬や鋤を、水桶を抱えて家から出てくる。リレランは彼らの生活の一つ一つを見てみたら良いと言う。日長1日ここにいてボゥッと見ていても良い、それでも何か気がつくはずだ、と…しかし、この視察日程にもそんなにゆとりを取ってはいられない。速やかな次期皇太子妃決定の為にも各領地に問題が無いことを把握しておきたいのだ。よって、行動時間を変更する事にした。今までは朝食後に馬車に乗り込み、昼前から夕暮れ時に渡って村々を視察し領主館で問題の検討と確認作業をしていたのだが、出発を日の出前とする事にした。周りの者達には申し訳ないが、日程を変更せずに農村地での人々の生活そのものを見るにはこれが手っ取り早いとレギル王子は判断したからだ。
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