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23.潜入捜査4
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帳簿ならば既に見た…シュウの部屋で言われた通りこの店では通常一人分の売値の10倍程の金が一晩で動くことがある。毎日と言うほどではないが、それでも数日おきに動いている事は掴んでいた。が、店主だとて中々尻尾は出さないものだ。その金が何の金なのか店主以外にはわからない様に出来ていた。ヤリスは良く店主の元に呼ばれていく。まだ見習いで兄分のシュウに付き仕事のあれこれを教えてもらう時期であり、時々は店主から雑用も押し付けられる為だ。
「あぁ、ヤリス来たね?」
「はい、お呼びですか?」
「シュウは?」
「お客様のお相手をしてます。」
シュウは今、変態親父と宣わった客と応対中である。
「ああ…」
さして興味なさそうに店主は頷く。
「あの、何か?」
「あぁ、お前の売り方を考えていてね……」
う~~む、と下を向きながら何やら書類と睨めっこをしている店主。
「実は、お前を買いたいと既に申し出ている御仁がいるんだ。」
ヤリスはまだ見習い状態。その様な者はまだ宣伝し売りには出せない決まりとなっている。怪訝な顔をしたヤリスに店主はニヤッと笑って見せた。
「なに、シュウの身の回りの世話もしてるんだ。店にいる限り客の目に止まるのは仕方ないことさ。こんな事は珍しくもない…さて、」
上から下までヤリスを舐める様に見回した店主は大きく何度も頷く。
「うん、やはりそっちが良いな…ヤリス、今日からお前にみてもらいたい物がある。ま、勉強の一貫だな。お前、字は読めたか?」
「いいえ、学校に通ったことがないので…」
ヤリスは店主には貧民街の出てあるとしている。だから字は読めないと。
「そうだろうなぁ。だから書物を渡しても無理な話だ。どうせ要らなくなるからな…ま、見て貰った方が早いだろう。」
「何をでしょうか?」
「不安かね?」
全く表情の動かないヤリス。不安なのか疑問なのか、何も読み取ることができない。
「あぁ、勿体ない…その造作で無表情なんてな…笑顔をおぼえろヤリス。ここでトップに立てるぞ?」
「はぁ…そうですか?」
「はは!欲のない事だ!ま、仕事を覚えればそうも言ってられなくなるだろう。よし!善は急げと言うしな!さ、こっちにきなさい。」
店主はヤリスを招いて立ち上がる。ヤリスには従わない理由が無い。そのまま促されて店主の椅子の後ろにあるドアから中に入って行った。
「シジュールと接触しました。」
セロント領町酒場にはフードを被った旅人の一団が地場の酒と食事を楽しんでいた。店内は大きい方だがかなり繁盛しているようで既にどのテーブルを客で埋まっている。どこからきたのかもわからない様なフード集団に対しても特段警戒している様子もみられない。酒場といえば各地から来た旅人や地元の人々、時には騎士やならず者達までありとあらゆる階層の者達が集まる場所であったからかもしれない。賑やかな喧騒の中1人の男が小柄な者にそう告げたのだった。
「守備は?」
「よさそうです。ヤリスもΩと接触した様で……」
「無事なのか?」
ヤリスもΩも……
「ヤリスは定期連絡がきましたし、確認したΩも命には問題なさそうだと聞いております。」
「そうか…店の名前は…」
「ラークの館です…」
「そのままシジュールに入ってもらえ。足りなければ団員から出せば良い。」
「はっ…!」
Ωがいるかもしれない。その情報が王都にまで聞こえてきてはや数ヶ月である。ヤリスを潜入させてそんなに日が経っていないと思うのだが……隠されたΩと接触させるとは、もう売り物として使うつもりがあるのかもしれない。
「ヤリスが店に出される前に中を暴くぞ?」
「了解しました!」
全て小声でのやりとりである。小さく頷いたフードの男はシジュールが一人で食事をしているテーブルへと戻っていく。
ゼス国対魔法第2騎士団リリー率いる一団体が王都より北方にあるセロント領に到着したのは数日前になる。もちろん極秘の調査になる為に領主にもまだ目通りしていない。
王都より騎馬によって一週間程の道のりをただアーキンは同僚達と黙って移動してきた。まだ駆け出しの一新騎士として先輩騎士の指示の元雑用に走り宿場の設営をし見張りに立つ。移動している数日間で常にフードを被った人物はたった1人しか見ていない。常にフードを被った人物それがリリーだ。リリーは総司令官である。おいそれと新騎士が近付いて良い身分では無い。だからじっとただ見ているしかなかった。近くにいるだけではその香りは届かない。それは良く分かっているつもりであっても気を抜くと意識は必ずリリーの方に向かってしまう。リリーのフェロモンの香りはアーキンにとって忘れる事ができる物ではなかったから。
何も、感じないのか?
リリーがどんな外見か、どんな性格かなんて知る由もないが、αであるアーキン自身がこれだけはっきりと分かるのにΩであるリリーは気がついていない?同じ隊で生活を共にするのだから目くらい合っても良さそうなはずだが、それさえも無い………
いや、感じているはずだ。だからわざと意識しない様に接しているはず。この隊に組まれている新騎士は3名だ。リリーは新騎士にのみあえて接触しない様に動いている様にしか見えなかったから。
「あぁ、ヤリス来たね?」
「はい、お呼びですか?」
「シュウは?」
「お客様のお相手をしてます。」
シュウは今、変態親父と宣わった客と応対中である。
「ああ…」
さして興味なさそうに店主は頷く。
「あの、何か?」
「あぁ、お前の売り方を考えていてね……」
う~~む、と下を向きながら何やら書類と睨めっこをしている店主。
「実は、お前を買いたいと既に申し出ている御仁がいるんだ。」
ヤリスはまだ見習い状態。その様な者はまだ宣伝し売りには出せない決まりとなっている。怪訝な顔をしたヤリスに店主はニヤッと笑って見せた。
「なに、シュウの身の回りの世話もしてるんだ。店にいる限り客の目に止まるのは仕方ないことさ。こんな事は珍しくもない…さて、」
上から下までヤリスを舐める様に見回した店主は大きく何度も頷く。
「うん、やはりそっちが良いな…ヤリス、今日からお前にみてもらいたい物がある。ま、勉強の一貫だな。お前、字は読めたか?」
「いいえ、学校に通ったことがないので…」
ヤリスは店主には貧民街の出てあるとしている。だから字は読めないと。
「そうだろうなぁ。だから書物を渡しても無理な話だ。どうせ要らなくなるからな…ま、見て貰った方が早いだろう。」
「何をでしょうか?」
「不安かね?」
全く表情の動かないヤリス。不安なのか疑問なのか、何も読み取ることができない。
「あぁ、勿体ない…その造作で無表情なんてな…笑顔をおぼえろヤリス。ここでトップに立てるぞ?」
「はぁ…そうですか?」
「はは!欲のない事だ!ま、仕事を覚えればそうも言ってられなくなるだろう。よし!善は急げと言うしな!さ、こっちにきなさい。」
店主はヤリスを招いて立ち上がる。ヤリスには従わない理由が無い。そのまま促されて店主の椅子の後ろにあるドアから中に入って行った。
「シジュールと接触しました。」
セロント領町酒場にはフードを被った旅人の一団が地場の酒と食事を楽しんでいた。店内は大きい方だがかなり繁盛しているようで既にどのテーブルを客で埋まっている。どこからきたのかもわからない様なフード集団に対しても特段警戒している様子もみられない。酒場といえば各地から来た旅人や地元の人々、時には騎士やならず者達までありとあらゆる階層の者達が集まる場所であったからかもしれない。賑やかな喧騒の中1人の男が小柄な者にそう告げたのだった。
「守備は?」
「よさそうです。ヤリスもΩと接触した様で……」
「無事なのか?」
ヤリスもΩも……
「ヤリスは定期連絡がきましたし、確認したΩも命には問題なさそうだと聞いております。」
「そうか…店の名前は…」
「ラークの館です…」
「そのままシジュールに入ってもらえ。足りなければ団員から出せば良い。」
「はっ…!」
Ωがいるかもしれない。その情報が王都にまで聞こえてきてはや数ヶ月である。ヤリスを潜入させてそんなに日が経っていないと思うのだが……隠されたΩと接触させるとは、もう売り物として使うつもりがあるのかもしれない。
「ヤリスが店に出される前に中を暴くぞ?」
「了解しました!」
全て小声でのやりとりである。小さく頷いたフードの男はシジュールが一人で食事をしているテーブルへと戻っていく。
ゼス国対魔法第2騎士団リリー率いる一団体が王都より北方にあるセロント領に到着したのは数日前になる。もちろん極秘の調査になる為に領主にもまだ目通りしていない。
王都より騎馬によって一週間程の道のりをただアーキンは同僚達と黙って移動してきた。まだ駆け出しの一新騎士として先輩騎士の指示の元雑用に走り宿場の設営をし見張りに立つ。移動している数日間で常にフードを被った人物はたった1人しか見ていない。常にフードを被った人物それがリリーだ。リリーは総司令官である。おいそれと新騎士が近付いて良い身分では無い。だからじっとただ見ているしかなかった。近くにいるだけではその香りは届かない。それは良く分かっているつもりであっても気を抜くと意識は必ずリリーの方に向かってしまう。リリーのフェロモンの香りはアーキンにとって忘れる事ができる物ではなかったから。
何も、感じないのか?
リリーがどんな外見か、どんな性格かなんて知る由もないが、αであるアーキン自身がこれだけはっきりと分かるのにΩであるリリーは気がついていない?同じ隊で生活を共にするのだから目くらい合っても良さそうなはずだが、それさえも無い………
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