[完結]その手中に収めるものは

小葉石

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53 魔女の技

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 シエラは先ずサウラを落ち着かせる事から始めた。

 泣き止むまでいつまででも待ったし、サウラ付きの侍女2人を呼び寄せ食事やお茶を飲んでは体力の回復を図る。
 泣きじゃくるサウラに度肝を抜かれたスザンナも、つい貰い泣きしそうになる所をアミラに睨まれ、グッとこらえサウラの身の周りを整える事に奔走した。
 
 シエラは通信魔法石で何処かに連絡を入れている。
 
 サウラが落ち着き緊張も取れた所で、シエラは人払いをした。

「サウラよく聞いて欲しい。今暗部には主にゴアラの動向を探らせている。おまえが知りたいヒントがここにあってね。」

 ゴアラ人は魔力持ちを未だに襲撃しているのだ。

「もし、お前が手伝うと言うのなら、この暗部と共に行動してもらう事になる。分かるか?」

 暗部は世界中に散らされて諜報活動をしている。サウラもそこに入るか、その覚悟はあるのか、と聞いている。

 サウラは両手の拳をグッと握りしめて真っ直ぐにシエラを見る。

「はい。」

 ただ手をこまねいて待つなど出来そうに無いのだ。

 予想通りの答えにシエラは微苦笑と共にフゥと小さく
溜息をつく。

「やる気だけでは熟せぬのよ。サウラ、女の身では限界は早いだろう。」

 暗部は誰しも精鋭中の精鋭だ。魔力、剣技、体術、諜報に対する術を徹底的に身につけている。サウラとて全結界防御で何かあっても死にはしないだろうが、敵と対峙した場合必ずと言っていいほど力負けする。
 弱点を連れて歩くほど、諜報部員にとっては重荷になる。

 サウラは何も言い返せず、グッと唇を噛む。

「サウラ、魔法石を使う覚悟はあるか?」

 シエラが手に持ち見せて来たのは黒く小さな石が連なって出来ているブレスレットの様な物だ。所々大きな粒が組んである。
 シエラの作ったものだろうか?石からはシエラの気配がする。

「これは、お前の姿を変える。その覚悟はあるか?」
 

 

 
 サウラは今、大きなマントを被ってシエラの前にいる。それも、マントの下は全裸だ。

 シエラが言う、姿を変える事に少なからず不安はあった。けれど、全てを知らぬフリで見なかった事には到底出来そうに無いサウラは肯く選択を取った。

 全く使用がないわね、と困った様にシエラは笑う。
自分と同じ道を歩む者に諦めの視線を投げる。

 大きなマントを渡されたかと思ったら、今度は服を脱げと来たから、サウラは目が点になる。

「姿形が変わるんだから、その服破けちゃうわよ?」

 一体サウラは何に変わるのだろう?服が破けるほど変形するの?

「あ、大丈夫よ。元には好きな時に戻れるし、周りの者にも周知するし、不審者にはならない様に手は回してあるから。」

 不審者って、シエラさん一体……

 元の口調で気軽に話す内容ではない様な…

 元に戻れる事への安心感から気持ちは軽くなるが、不審者になるかも知れない違う覚悟をしなければならないらしい。

 方法は至って簡単。シエラが作ったブレスレットをめて、自分の魔力を通すだけだ。術が発動している間は他者がこれを取ることができない様に魔法で固定される。自分の体がバラバラにならない限り外れないだろう。更に魔力を隠匿する術付きで、自身に術がかけてある事が他の者には分からない。 

「さ、嵌めてみて頂戴?不都合がないか色々と試さなきゃいけないから。」

 今?今嵌めるの?違う意味で色々怖い…裸になっているので今更だけど。

 手にはいどうぞ、と渡されたブレスレットを見つめる。先ほども見た普通に小さな黒い石と少し大きな黒い石の粒が連なったブレスレットだ。お洒落で付けている人も居るかもしれない様な物。これも魔法石なんだから不思議だ。

 そっと、左の手首に嵌めてみる。重くもないし、大した違和感も無い。

 一つ深呼吸をして、ゆっくりと魔法石に魔力を通す。脳裏にルーシウスの魔力の炎に巻かれる姿が浮かび、ギュッと目を瞑る。

 チカチカ、と目の前で何か瞬いた気がした。体のどこも痛まないし、違和感も無い。マントを被ったままで座っている姿勢に変化もない様だ。

 如何やら、魔物やら未知の生物やらに姿を変えたわけではない様で少し安心する。
 
 目を開けると少し視界に違和感が有るが、視力にも変化は無い。何となく首回りが涼しい様な?

「終わった?」

 サウラが声を出すが、聞こえて来たのは明らかに低い声。バッと後を振り返る。もしや、男性がこの部屋にいたの?今、サウラは裸である。
 後ろを振り返るも勿論誰も居ない。シエラを見れば、ニコリとしていて、満足気だ。

 まさか、瞬間頭に過ぎった事を確かめるべく、そっと手を下ろして行く。
 
 サウラは細身ではあるものの正真正銘の生まれた時からの女子だ。自分の体を確かめるように胸元に手を下ろして行けば、スカッと腕は滑り落ちる。細身だけど、少しはあった物にも触れず滑って行く。

 もしや、が確信に変わると、次はどうなっているかの確認だ。
 しっかりとある様子に、何故かグッタリと脱力してしまう。
 
 先程の視界の違和感は目線の高さが変わったからだ。全体的にがっしりとした骨格になっている事を感じる。

「シエラさん。」
 やはり声が低い…

「やだ、可愛らしい感じに仕上がったわね。あ、髪は私の好みで短くしたわよ。」

 シエラが心なしか楽しそうに見えるのは目の錯覚だろうか。

 


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