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後編

117 ガーナード国王の所望

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 セルンシト国第二王子ケイトルとデルトはハンガ国の事がほぼ片付き次第こちらに戻って来たのだという。

「粗方ですが、ハンガ国内については片付いたのではないでしょうかね?これから立て直しが行われますのでまだまだ慌ただしく世間は動くでしょうが。」

 デルトの説明ではハンガ国皇太子オレオンは断罪は免れまいが、皇太子妃サーランの処遇はまだ決定されていない。皇太子オレオンと共にガーナード国王城に入城している事から反乱軍側と見られていてもおかしくはないそうだ。

「……そうなのですか………」

 自らの望みと違う事に巻き込まれ、国を追われる事になった側妃達…貴族位を剥奪されては平民と同じ事。高位の貴族出身で王族にまでなった彼女達にはこれ以上の罪は問われないとしてもそれでも今後楽な道では無いだろうと思われた。そして、皇太子妃サーラン…フィスティアとは直にあった事は無いが、ハウアラ第二側妃から実家に送られて来ていた手紙には姉の様に親しげに話しかけて下さるお方だと書かれていたと噂に聞いた事がある。そんな風に側妃に接して下さるお優しそうな方が反乱なんて…信じられない思いだ。

「…そして、聖女殿にガーナード国王からの伝言です。」

「私に……?」

「はい。是非とも貴方にお会いしたいと、ガーナード国王は最優先事項で貴方の行方を探しています。」

 で王ルワンを助けた者がフィスティアとはバレてはいなかった…だが、今ならば自分が王ルワンの王妃である事は一目瞭然だ。

「……このまま、私が亡くなった事にしては………」

 つい、ポロッとそんな事を呟いてしまう。自分が居なくなったとてガーナード国は何も変わる事は無いだろうし…フィスティアは王ルワンの前に立ち、またその顔が失望と憎悪に変わって行く様を見るのが怖かった……あの優しかった王ルワンが自分を射殺いころしそうな瞳で……それを思えば、悲しみと苦しさしか湧いてこない…
 

 に居た時には、必死でルワン様が帰ってくる事を望んでいたのに……あの方の優しい笑顔がもう一度見たい…と……


「レディ…?」

 すっかりうつむいていたフィスティアに、セルンシト国第二王子ケイトルがその手を取りつつ声を掛ける。

「ガーナード国王は本気で貴方に礼を述べたいと仰り探していましたよ?もし、ここで貴方が身罷ったとしても、その亡骸はガーナードへと所望され国葬にでもされる勢いでしょう。そして貴方を此処へとお運びし静養する様に取り付けたのは私達ですから、ただ身罷った事を報告しただけで亡骸を渡さなかったら私達はその責を問われる事になります。そして、貴方にとっては残念な事ですが、選定人カタス殿は貴方をご存じでした。」

 だから身代わりを立てる事もままならず、遺体を差し替えようとも新たな火種が生まれる恐れが出てくる…ただ、フィスティアが消えれば良いということでは無いらしい…




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