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後編

123 聖女の解放 2

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「その様な事が、許されるものなのか……?」

 王の側には王妃が、ガーナード国には聖女が居て当然。幼い頃から周囲に言われ育ってきた王ルワンにとってはこれはもう当然の決定事項だった筈だ…

「許されるも何も、既に貴方様が一度それをお壊しになりました。」

 セルンシト国第二王子ケイトルの真摯な言葉は続く。

「王妃を手元に置こうと思われましたら、貴方はいつでも出来たのです。が、それをなさいませんでした。何故です?」

「……なぜ……?」

 王ルワンはセルンシト国第二王子ケイトルの言葉を繰り返す。



 なぜ……?王妃が必要ならば、なぜ王ルワンはフィスティアを引き上げなかったのか…?



「何故か、を聞いているのは私です、ガーナード国王陛下…!」

 セルンシト国第二王子ケイトルの言葉に、王妃フィスティアは王ルワンをしっかりと見据えた。王ルワンは平静を保った表情に困惑の色を浮かべている…


 
 同じでしたのね……陛下……私と、同じ……
 


「私にはが……必要だった……」

 やや、呆然と王ルワンは語り出す。

「…それも、聖女であるでございましょう?」

 王ルワンの言葉の後を王妃フィスティアが続けた。

「全能な聖女である王妃の姿に、貴方様も縋ってしまっていたのですね………?」



 私と同じ……お互いに理想を押し付け、縋り付き合っていた………愛は……無かった………



 ふぅぅぅ…と深いため息が王ルワンから漏れる。

「例えそうだとしても…王族には王家を守る義務がある。婚姻が成立しているのだから、王妃の解放などあり得ない……!」

 そうだろう。全ての貴族が愛を持って婚姻を結ぶ訳ではないのだから。王ルワンの言う通りだろう。
  
「いいえ、それは違います。ガーナード国王。」

「何故?」

「貴方は履き違えておられる。王家を護る為であるならば、どの様な時でも何があっても聖女である方の手を離してはいけなかった…王妃殿下を切り離した時に、既にご自分でご自分の胸に刃を突き立てたも同じ事をなさっていたのですよ?」

「……馬鹿な……」

「愚かなのは貴方様です。地下処理場で聖女殿が見つかった時点で、国中を大いに揺るがせていた事に気が付かれていないのですから。」

「………!?」

「聖女殿が解放されなかったらどうなるとお思いになります?類もない力の持ち主のこの方の身代わりが立てられましょうか?また、王妃殿下が件の聖女であったと知れた時何が起こるか考えつかぬ貴方様ではありますまい?」

 一歩一歩迫る様にセルンシト国第二王子ケイトルは王ルワンを追い詰めていく。迫られている言葉の答えはガーナード王家の破滅の道に等しい……………














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