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魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる
2、どうやら本当に聖石の様です 2
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「これは!恐れ多い事で御座います。」
高位貴族であるであるイリマウス侯爵が紳士の礼を取って目の前の方に挨拶する。追いついた俺ももちろん侯爵様に倣って礼を取る。
「お待ちしておりましたよ。イリマウス侯爵閣下…さぁ!こちらにお越しください。陛下も既に中においでです。」
和かに挨拶を交わしてくれている方は侯爵様と顔見知りの神官、なのだろう。襟の詰まった真っ白の長衣に肩からは金の刺繍がビッシリと入った長い肩布を掛けている。両手を広げて歓迎してくれる程に待ち望んでくれていた様で、その歓迎ムードに陛下と言う単語が出たけれども震える事なく落ち着いていられた。受け入れてくれてる、んだよね?
俺は農民だから……侯爵様と親しい間柄ならば侯爵様に子供なんていない事は知っているだろうし、今回の事情も把握済みだろうから……
このまま付いていけばいいのか?
挨拶だけはマナーとしてしたけれども、何も声を掛けられていない自分はこのまま付いて行っても良いものかどうか………しばし考えてしまって動けなくなってしまった。
「これは、ご挨拶が遅くなりました。私は、この大神殿の大神官を務めさせてもらっております、シハル、と申します。」
シハルと名乗りながらゆったりとした動作で俺に対して貴人に対する礼をしてくれる。その所作に、周囲からはほぅ…と感嘆のため息が漏れ聞こえてきた。
「ご丁寧にありがとう存じます。私は…」
侯爵様を誘導していた方が、まさかの大神官様だったなんて……そういえば、馬車の中で貸して頂いた絵姿本の中に、ありました…焦茶の髪に澄んだ茶色の瞳の物凄い美形な人の絵が……
「存じておりますよ。ルアン様でいらっしゃいますね?」
ニッコリと微笑まれてしまった。この大神官シハル様は先程から物凄く優雅な所作なんだ。顔の造形もそうなのだが、その声のトーンも何というか聞いていて気持ち良く響いて来る低音で、心地よくてもっと聞いていたくなる様な声をしている。人を魅了するためにいる、そんな魅力たっぷりな方だ。その証拠にシハル様が話し出すと、周囲がシン、と静まり返るのだもの…まるで周囲の人々がこの方のお声を一つも漏らすまいと聞き取ろうとしているかの様に。
「は、はい。」
先に行く侯爵様が少しこちらを振り向いて目配せで来なさいと言ってくる。
「なるほど、お待ちしていましたよ?本当にそっくりだ。」
「え?」
「いいえ。さ、こちらですよ?」
大神官自らが出迎えて、誘導してくれるなんて…偉ぶる所のない、謙虚な方だ…
俺よりもずっと背が高いシハル様はスラリとした体格にスッと伸びた背筋…とても姿勢が良くて、俺も見習わなくてはならないだろう。あまりジロジロ見てはいけないと思いつつも、集まってきていた人々の様にやはり興味を惹かれる。パチリと目が合えば、嘘みたいに優しい笑顔で微笑んでくる。
これは……勘違いする人が続出する……まるで自分の事が好きなんではないかと思わせるような、うっとりとしている様な微笑みだ。
ドキドキする胸を悟られまいと押さえつつ、俺は前を向く。今はもっと気にしなくてはいけない事案がこの部屋の中に待っているから…
扉を入った奥には更に奥に繋がる廊下が続く。肝心な部屋はこの奥にあるそうで、重要な事案の検討や、隠密にしたい時の話し合い、次期大神官の決定時の話し合いにもここが使われるのだそうだ。横を向くとシハル大神官と何故だか目が合いそうだったから、前を向いたまま大神官の話に耳を傾けていた。ほんの少しお喋りするくらいの時間この廊下を進むと、緻密な彫り物がされた木のドアが見えて来る。侯爵様は先に入って行かれて、シハル大神官が俺の為にドアを開けれくれた。
「ありがとうございます…」
目を見る事ができずに、礼だけして勧められるままドアの中へ入っていく。
さあ、ここからが本番だぞ!なんと言ってもサルムヘルム国王陛下の前に出なくてはいけないのだから…!
通された部屋は思いのほか広々としていた。部屋の中央にどっしりとした木製の円卓があり、それを囲う様に座り心地の良さそうな椅子が並べてある。扉を入って正面中央に当たる椅子には…
この方なのだろう…サルムヘルム国王陛下…絵姿では金髪に碧眼で中年層に差し掛かる渋い感じのお姿……そのものの姿の方が目の前に……!既に入室していただろうイリマウス侯爵様は頭を下げて忠誠を示す礼をとっていて、俺も急いでそれをまねる。
「ご苦労だった。シハル。」
声に威厳があって、冷や汗が出る…
「お待たせいたしました陛下。所望の人物をお連れしました。紹介しましょう、ルアン様、顔をお上げください。」
国王陛下の前だというのに、シハル大神官の声調は変わらない。緊張しないのだろうか?
「……はい……」
声が、震えそうになる……そっと横目で侯爵様を盗みみれば、既に姿勢を直して直立していた。
あぁ、ここでパパと言ったら侯爵様、助けてくれないかな…?
半分泣きそうな心持のまま、俺はゆっくりと頭を上げた。
高位貴族であるであるイリマウス侯爵が紳士の礼を取って目の前の方に挨拶する。追いついた俺ももちろん侯爵様に倣って礼を取る。
「お待ちしておりましたよ。イリマウス侯爵閣下…さぁ!こちらにお越しください。陛下も既に中においでです。」
和かに挨拶を交わしてくれている方は侯爵様と顔見知りの神官、なのだろう。襟の詰まった真っ白の長衣に肩からは金の刺繍がビッシリと入った長い肩布を掛けている。両手を広げて歓迎してくれる程に待ち望んでくれていた様で、その歓迎ムードに陛下と言う単語が出たけれども震える事なく落ち着いていられた。受け入れてくれてる、んだよね?
俺は農民だから……侯爵様と親しい間柄ならば侯爵様に子供なんていない事は知っているだろうし、今回の事情も把握済みだろうから……
このまま付いていけばいいのか?
挨拶だけはマナーとしてしたけれども、何も声を掛けられていない自分はこのまま付いて行っても良いものかどうか………しばし考えてしまって動けなくなってしまった。
「これは、ご挨拶が遅くなりました。私は、この大神殿の大神官を務めさせてもらっております、シハル、と申します。」
シハルと名乗りながらゆったりとした動作で俺に対して貴人に対する礼をしてくれる。その所作に、周囲からはほぅ…と感嘆のため息が漏れ聞こえてきた。
「ご丁寧にありがとう存じます。私は…」
侯爵様を誘導していた方が、まさかの大神官様だったなんて……そういえば、馬車の中で貸して頂いた絵姿本の中に、ありました…焦茶の髪に澄んだ茶色の瞳の物凄い美形な人の絵が……
「存じておりますよ。ルアン様でいらっしゃいますね?」
ニッコリと微笑まれてしまった。この大神官シハル様は先程から物凄く優雅な所作なんだ。顔の造形もそうなのだが、その声のトーンも何というか聞いていて気持ち良く響いて来る低音で、心地よくてもっと聞いていたくなる様な声をしている。人を魅了するためにいる、そんな魅力たっぷりな方だ。その証拠にシハル様が話し出すと、周囲がシン、と静まり返るのだもの…まるで周囲の人々がこの方のお声を一つも漏らすまいと聞き取ろうとしているかの様に。
「は、はい。」
先に行く侯爵様が少しこちらを振り向いて目配せで来なさいと言ってくる。
「なるほど、お待ちしていましたよ?本当にそっくりだ。」
「え?」
「いいえ。さ、こちらですよ?」
大神官自らが出迎えて、誘導してくれるなんて…偉ぶる所のない、謙虚な方だ…
俺よりもずっと背が高いシハル様はスラリとした体格にスッと伸びた背筋…とても姿勢が良くて、俺も見習わなくてはならないだろう。あまりジロジロ見てはいけないと思いつつも、集まってきていた人々の様にやはり興味を惹かれる。パチリと目が合えば、嘘みたいに優しい笑顔で微笑んでくる。
これは……勘違いする人が続出する……まるで自分の事が好きなんではないかと思わせるような、うっとりとしている様な微笑みだ。
ドキドキする胸を悟られまいと押さえつつ、俺は前を向く。今はもっと気にしなくてはいけない事案がこの部屋の中に待っているから…
扉を入った奥には更に奥に繋がる廊下が続く。肝心な部屋はこの奥にあるそうで、重要な事案の検討や、隠密にしたい時の話し合い、次期大神官の決定時の話し合いにもここが使われるのだそうだ。横を向くとシハル大神官と何故だか目が合いそうだったから、前を向いたまま大神官の話に耳を傾けていた。ほんの少しお喋りするくらいの時間この廊下を進むと、緻密な彫り物がされた木のドアが見えて来る。侯爵様は先に入って行かれて、シハル大神官が俺の為にドアを開けれくれた。
「ありがとうございます…」
目を見る事ができずに、礼だけして勧められるままドアの中へ入っていく。
さあ、ここからが本番だぞ!なんと言ってもサルムヘルム国王陛下の前に出なくてはいけないのだから…!
通された部屋は思いのほか広々としていた。部屋の中央にどっしりとした木製の円卓があり、それを囲う様に座り心地の良さそうな椅子が並べてある。扉を入って正面中央に当たる椅子には…
この方なのだろう…サルムヘルム国王陛下…絵姿では金髪に碧眼で中年層に差し掛かる渋い感じのお姿……そのものの姿の方が目の前に……!既に入室していただろうイリマウス侯爵様は頭を下げて忠誠を示す礼をとっていて、俺も急いでそれをまねる。
「ご苦労だった。シハル。」
声に威厳があって、冷や汗が出る…
「お待たせいたしました陛下。所望の人物をお連れしました。紹介しましょう、ルアン様、顔をお上げください。」
国王陛下の前だというのに、シハル大神官の声調は変わらない。緊張しないのだろうか?
「……はい……」
声が、震えそうになる……そっと横目で侯爵様を盗みみれば、既に姿勢を直して直立していた。
あぁ、ここでパパと言ったら侯爵様、助けてくれないかな…?
半分泣きそうな心持のまま、俺はゆっくりと頭を上げた。
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