[完]聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

文字の大きさ
13 / 80
魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

2、どうやら本当に聖石の様です 2

しおりを挟む
「これは!恐れ多い事で御座います。」

 高位貴族であるであるイリマウス侯爵が紳士の礼を取って目の前の方に挨拶する。追いついた俺ももちろん侯爵様に倣って礼を取る。

「お待ちしておりましたよ。イリマウス侯爵閣下…さぁ!こちらにお越しください。陛下も既に中においでです。」

 和かに挨拶を交わしてくれている方は侯爵様と顔見知りの神官、なのだろう。襟の詰まった真っ白の長衣に肩からは金の刺繍がビッシリと入った長い肩布を掛けている。両手を広げて歓迎してくれる程に待ち望んでくれていた様で、その歓迎ムードに陛下と言う単語が出たけれども震える事なく落ち着いていられた。受け入れてくれてる、んだよね?

 俺は農民だから……侯爵様と親しい間柄ならば侯爵様に子供なんていない事は知っているだろうし、今回の事情も把握済みだろうから……
 
 このまま付いていけばいいのか?

 挨拶だけはマナーとしてしたけれども、何も声を掛けられていない自分はこのまま付いて行っても良いものかどうか………しばし考えてしまって動けなくなってしまった。

「これは、ご挨拶が遅くなりました。私は、この大神殿の大神官を務めさせてもらっております、シハル、と申します。」

 シハルと名乗りながらゆったりとした動作で俺に対して貴人に対する礼をしてくれる。その所作に、周囲からはほぅ…と感嘆のため息が漏れ聞こえてきた。

「ご丁寧にありがとう存じます。私は…」

 侯爵様を誘導していた方が、まさかの大神官様だったなんて……そういえば、馬車の中で貸して頂いた絵姿本の中に、ありました…焦茶の髪に澄んだ茶色の瞳の物凄い美形な人の絵が……

「存じておりますよ。ルアン様でいらっしゃいますね?」

 ニッコリと微笑まれてしまった。この大神官シハル様は先程から物凄く優雅な所作なんだ。顔の造形もそうなのだが、その声のトーンも何というか聞いていて気持ち良く響いて来る低音で、心地よくてもっと聞いていたくなる様な声をしている。人を魅了するためにいる、そんな魅力たっぷりな方だ。その証拠にシハル様が話し出すと、周囲がシン、と静まり返るのだもの…まるで周囲の人々がこの方のお声を一つも漏らすまいと聞き取ろうとしているかの様に。

「は、はい。」

 先に行く侯爵様が少しこちらを振り向いて目配せで来なさいと言ってくる。

「なるほど、お待ちしていましたよ?。」

「え?」

「いいえ。さ、こちらですよ?」

 大神官自らが出迎えて、誘導してくれるなんて…偉ぶる所のない、謙虚な方だ… 

 俺よりもずっと背が高いシハル様はスラリとした体格にスッと伸びた背筋…とても姿勢が良くて、俺も見習わなくてはならないだろう。あまりジロジロ見てはいけないと思いつつも、集まってきていた人々の様にやはり興味を惹かれる。パチリと目が合えば、嘘みたいに優しい笑顔で微笑んでくる。

 これは……勘違いする人が続出する……まるで自分の事が好きなんではないかと思わせるような、うっとりとしている様な微笑みだ。

 ドキドキする胸を悟られまいと押さえつつ、俺は前を向く。今はもっと気にしなくてはいけない事案がこの部屋の中に待っているから…

 扉を入った奥には更に奥に繋がる廊下が続く。肝心な部屋はこの奥にあるそうで、重要な事案の検討や、隠密にしたい時の話し合い、次期大神官の決定時の話し合いにもここが使われるのだそうだ。横を向くとシハル大神官と何故だか目が合いそうだったから、前を向いたまま大神官の話に耳を傾けていた。ほんの少しお喋りするくらいの時間この廊下を進むと、緻密な彫り物がされた木のドアが見えて来る。侯爵様は先に入って行かれて、シハル大神官が俺の為にドアを開けれくれた。

「ありがとうございます…」

 目を見る事ができずに、礼だけして勧められるままドアの中へ入っていく。

 さあ、ここからが本番だぞ!なんと言ってもサルムヘルム国王陛下の前に出なくてはいけないのだから…!

 通された部屋は思いのほか広々としていた。部屋の中央にどっしりとした木製の円卓があり、それを囲う様に座り心地の良さそうな椅子が並べてある。扉を入って正面中央に当たる椅子には…
 この方なのだろう…サルムヘルム国王陛下…絵姿では金髪に碧眼で中年層に差し掛かる渋い感じのお姿……そのものの姿の方が目の前に……!既に入室していただろうイリマウス侯爵様は頭を下げて忠誠を示す礼をとっていて、俺も急いでそれをまねる。

「ご苦労だった。シハル。」

 声に威厳があって、冷や汗が出る…

「お待たせいたしました陛下。所望の人物をお連れしました。紹介しましょう、ルアン様、顔をお上げください。」
 
 国王陛下の前だというのに、シハル大神官の声調は変わらない。緊張しないのだろうか?

「……はい……」

 声が、震えそうになる……そっと横目で侯爵様を盗みみれば、既に姿勢を直して直立していた。

 あぁ、ここでパパと言ったら侯爵様、助けてくれないかな…?

 半分泣きそうな心持のまま、俺はゆっくりと頭を上げた。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

歪の中のTrust

光海 流星
BL
人にはあまり言えない性癖を持つ健。 職場の友達に知られてしまいショックから記憶をなくす。 そして友達を好きになるが自分の性癖と葛藤する。 SM表現が含まれますので苦手な方は注意してください。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

処理中です...