[完]聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

文字の大きさ
22 / 80
魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

11、貴方は誰? 4

しおりを挟む
「では、ルアン…?いけない子だな…?そんな我儘を言うなんて…」

 ゾク……………

 昨日と同じ様な甘く低い声……そんな声で言われても、女神様のお名前を汚して良いはずがないでしょう!?それに、これは我儘じゃなくって人間なら神への畏怖は持たなくちゃいけないと思うし……!
 そもそも、俺の我儘は全て聞いてくれるんじゃなかった?

 あまりにも甘過ぎる声が怖くて、カーペ君に言い付けてあるあれこれを引っ張り出して反論する気も起きない……

 ギシリ……こんもりと掛け物に籠った俺の両側に、きっと大神官様は両手を突いた。俺の大腿両側には、膝だろう……
 ドサリ……丸まった足元のその先に、何か重い物が置かれた様でベッドに振動が伝わってくる。それが、ゾリゾリとベッドの上を右往左往している様な、音がする………

「なぜ、夕餉を食べなかった?もしかして、メニューが気に入らなかったのか?ならば、カーペを罰しようか?」

 は?カーペ君、関係ないですよね?

 何を言い出すかと思えば、全く関係無いどころか親身になってあれこれ尽くしてくれているカーペ君に在らぬ罰がいくの?そもそも罰せられる様な事してないよ!

 本当にそんなこと言われたら余りにもカーペ君が不憫と思い、ガバッと布団を跳ね除け………

「貴方……誰…?」

 思いの外、間抜けな質問をしたものだ…けれど、これが素直に出て来た俺の感想だ。

 目の前には、漆黒の瞳…それも吸い込まれそうな濃さの…美しく整った大神官シハル様と同じ造形の顔にも瞳と同じ漆黒の絹の様な髪がかかる…形が良い耳の上からはうねる二本の角が、天に向かって聳え立ち、俺を逃すまいと笑みを浮かべて覆いかぶさってくる!

「釣れないな?釣れなさすぎやしないか?ルアン?」

 俺が気にしているからか、シハル様は女神の名前を出さないでくれた。

「だって…!昨日………」

 そう、昨日会ったばかりだ。それも、こんな異形な姿を通常の精神状態の時に見てない!

 やはり………魔族……

 俺は恐怖のままに下へずり下がって逃げようとする。けれど……足に…は…確かに人の足では無いがあたる……

「ルアン……いや、ルシェーラが言ったのだぞ?其方をくれると?お前はどうやら憶えていないようだがな?」

 ずり下がる俺を、ヒョイっと抱え上げて、こっちが硬直している間に、何故だか、魔族の膝の上に乗せられる形で座らされている…魔族の足の横からは、蛇?蛇なのか…?蛇にしては少し太い様な、鱗が付いている尾のようなものが見えていて……

 昨日の俺……良く正気でいられたな?

 自分で自分を客観視して驚いてしまう。きっと今はそんな自虐的な思考に陥っている場合では無いんだろうけれども…あまりにも考えたくなくて、思考が彷徨う…

「ふん…傲慢なあいつのやりそうな事だ。この姿形は瓜二つ……しかし、中に記憶は残さないとは……」

 憎まれ口を叩きながらも、シハル様は酷く楽しそうだ。大神官様のお顔なのに、色や言葉遣いまで全く違うと同一人物には見えないけれど…

「あぁ…その惚けたような顔…あの時のあなたからは想像もつかなくて…良いな…」

 魔族の綺麗な顔に朱がさして、グッと色気が増した様な気がする。うっとりと俺の顔を見つめていたかと思うと、クイッと顎を掴み上げられ、そのまま唇が重なる…

「ふぅ…む!!」

 ボゥッとシハル様の顔に見惚れていた自分が悪いのか、いきなり人にこんな事をしてくる魔族が悪いのか……そもそも魔族の流儀も常識も知らないんだから、全面的に俺は悪くは無い!

「ちょ、ちょっ、ちょっと!!待ってくださいって!昨日から一体なんなんですか!?」

 昨日は散々人の身体を訳も分からぬうちに弄ってくれて…今日もなんて聞いてないし、いくら魔族が怖くても、流されるままに好きな様にはされたくない!

「ルアンが覚えていないのは無理もないが、お前はルシェーラなのだ。」

 瞬間的に思わず勢いに任せて、俺は魔族の顔を思いっきり押し退けた。言うに事欠いて、この魔族は俺を女神ルシェーラ様だと言い切った…あれだぞ?女神と言えば天上に住む神の一人で、豊穣やら、愛やら、美やら、光やらこの世の素晴らしいものを一気に詰め込んだ様な、正に神そのもののような存在だぞ?俺と言ったらただの農民で、権力も能力も美もない、ただの人間のそれもだぞ!?どこをどう辿ったら女神に行き着くんだ……!

 と言うような事を、頭に思い浮かぶままに全部目の前の魔族に言い切ってしまった……言った後に、思いっきり後悔したんだよ…魔族相手に何やってんのって?俺ばかりじゃなく、カーペ君やらほかの神官達に、この大神殿に来訪して来ている人達に危害が加わるかも知れなかったのに…泣きそうになりながら、精一杯の虚勢を張って、ギッと睨みつけていたら、この魔族……肩を震わせて、笑ってやがる!!!
















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

歪の中のTrust

光海 流星
BL
人にはあまり言えない性癖を持つ健。 職場の友達に知られてしまいショックから記憶をなくす。 そして友達を好きになるが自分の性癖と葛藤する。 SM表現が含まれますので苦手な方は注意してください。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

処理中です...