[完]聖石を拾った村人Aに付いてきたのが魔王の溺愛

小葉石

文字の大きさ
25 / 80
魔王との邂逅、魔王が俺を好きすぎる

14、女神との約束 3

しおりを挟む
「ふむ…私としても、いつものルアンが見たいのです。傲ることなく無邪気で元気な貴方がね?その他のの事はいろいろ知っていますし?今日の様な姿のルアンは私だけが知っていればいいものですからね。」

 フルフルと首を振って触らないでアピールをしている俺を苦笑しながらシハル大神官は優しく見つめてくる。

 この人、本当に魔族かって思うほどに優しい目線で…

「触りますよ?」

 そう宣言して身構えた俺。シハル大神官はそんな俺の額をチョン、と触っていいですよ、と声をかけて来た。

「もう?」

「ええ、不快な所は?」

 何をされたか分からない、一瞬の出来事で終わった。

「不快な所…ですね?…ない、みたい?」

 掛け物が触っても疼く様な感覚が上がって来ていたけれど、それがない。

「だい、丈夫みたいです。」

「そう、それは良かったです。さ、食事にしましょう?」

 今度こそシハル大神官は俺を抱きしめる様にして抱え上げた。自分で歩きます!と言いたい所だけれど、不快なあの感覚が無くなっただけで、身体のあちこちはまだギシギシ軋んで痛くて動けない……

「何を、したんです?」

 シハル大神官の膝の上に座る様な形で椅子に座る。

 これは、一緒に食事をする気?

「ルシェーラの干渉を少し弱めたんですよ。は加減なんて考えてなかったみたいですからね?」

 ゾワッ……加減しない神の力って?どんなもん……?

「人間に、そんな事を……?」

 していいものなのか……

「ま、ここは彼女の領域ですし?彼女にその権限はあるでしょうね?けれどルアン。貴方のことに関しての権限はルシェーラにはありませんよ?」

「ど、どうして?」

 俺は、神から見放されてる…?今までは善良とは言わないけれども、普通の農民と思っていたのに…あ、ここに来て貴族になったけれど…
 シハル大神官は話しながらも、パンを千切り、肉を切り分け、サラダをフォークに刺して俺の口にと持ってくる。本当はこんな事、恥ずかしいから嫌なのだ。だってもうすぐ成人する男がだよ?人の膝の上に乗って、食事をするってどう?それよりも、なによりも、この人、人でも無いし…魔族だ…
 けれど、差し出された食事に罪はないし、身体は痛くて思う様に動かせないしで、俺はひたすら口を開ける。

「其方は私がルシェーラから貰った、契約の証だ。」

「契約……」

「そう。が、ここに封じられてやる代わりに、ルシェーラを望んだのです。」

 ニッコリ微笑む大神官の瞳が一瞬仄暗い漆黒に染まる…そしてすぐに薄茶の優しい色を見せる。

「人間界を滅ぼさない代わりに、が欲しい、とルシェーラに縋り付いたんですよ。」

 ニコニコと微笑みを湛えながら、物凄い告白をしてくる。

「め、女神様が欲しい………」

「ええ、衝撃的でしたね。私にとっては初めての一目惚れでした!」

 今までで一番爽やかないい笑顔でシハル大神官はそう宣った。

「一目、惚れ?魔族が、神に…?」

 それこそ不敬と一刀両断にされかねないのでは?シハル大神官の話を聞けば聞くほど、頭が混乱してくる様な気がする。

「ああ…言ってなかったですね?ルアン?」

 また、シハル大神官の瞳が暗くなる。その一瞬の内に、目の前が黒で染まった…正しくはシハル大神官の魔族の黒と神官服の白で目の前は白黒だ………

 もう何度か見ている瞳と髪の漆黒と、頭から生える二本の角、背中には初めて見る闇より深い闇を集めた様な漆黒の二枚の大きな羽…そして、ジャリリと足元から聞こえる音を辿れば黒々と照り輝く鱗に包まれた尾が、自由気ままに床を這っている。顔の造形と短い後ろ髪、これだけが大神官を思わせる面影だ……

「これが我の本来の姿だ。ここでは狭くて羽を出す事は少ないがね?」

 この、姿って……そして、女神に、その一行に封じられた、者って……

「気が付いたか?我は魔族の中の王だ。」

 魔王…!!!

 ビックリしすぎて息を止めてしまった俺の頬を、黒く美しい長い爪の生えた魔王の手がそっと撫でる。不思議なほどに、その感覚が人間に擬態している時と変わらなくて、ホッと安心感すら生まれてくる。

「名を、イグショールと言う。」

 うっとりと俺を見つめながら、楽しそうに名乗りを上げる魔王イグショール…に何を言えば良いのか、見当もつかない。

「ルアン。其方は女神の一部だ。まぁ、気まぐれで様なものかもしれないが、我には其方で十分よ。」



 そう、不思議と我は満足している。あの傲慢で、プライドの塊の様な信じられないほど美しい天の女神と瓜二つの者をこの手に抱けるのだから…
 は何をしていても可愛らしく、素直で、美しい外見に良くあった美しい心を持っている。天からルシェーラを引き摺り下ろす事は叶わなくても、これは幻の様な者かも知れなくても、触れて、共にいられるこの一時に大いに満足している………












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

歪の中のTrust

光海 流星
BL
人にはあまり言えない性癖を持つ健。 職場の友達に知られてしまいショックから記憶をなくす。 そして友達を好きになるが自分の性癖と葛藤する。 SM表現が含まれますので苦手な方は注意してください。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

処理中です...